赤い公園全曲考察38「風が知ってる」(風が知ってる/ひつじ屋さん)

「公園デビュー」っていうすごいアルバムを出した赤い公園の次なる一手はどんな感じだろう?と思ってたら、これまでのどの曲っぽくもない、予想外の曲が来てすごく驚きました。っていうかいつも予想外。いつもなんじゃこりゃー!

まず曲のトピックでいうと、初のタイアップ曲。アニメ「とある飛空士への恋歌」のエンディング曲で、CDにもたしかアニメ絵の大きなオビが付いてました。それから、初めてセルフプロデュースじゃない曲で、亀田誠治師匠がプロデュースしています。そしてライブではこの曲で初めて同期を使うようになりました。そういうことも含めてなのか、後に津野さんは「ターニングポイントになった曲」だとラジオで発言しています。

津野さんの中のイメージでは、「冬の寒さの中で、めげそうになっても負けずに立ってる。それは穏やかな日の約束があるから」っていう曲。アニメのタイアップありきなのに、歌詞にも曲にもちゃんと赤い公園らしさが出てると思うし、「例えその人がいなくなっても、「僕」と「風」だけはその人の体温を知ってる」っていう表現にゾクゾクします。

演奏面でいうと、三拍子の曲ってすごく難しいと思うんです。基本のリズムが、小学校の時習った「ウンパッパッ」のくらいしかないから。この曲もサビはそうかもしれないけど、でも全体的に聞いたことない感じのリズムなのがすごい。一拍目を無くしたり、スネアをずらしたりして三拍子感をあまり感じさせない。そしてそんな不思議なリズムの曲を、アニメのエンディング曲にしたり、シングルのリード曲に持ってきたのもすごい。チャレンジング。

あと、この曲あたりから、津野さんのギターが津野さんにしか弾けないギターになっていった気がする。すごく自由なのに計算されてて、轟音でノイジーなのに美しくて、相反するものを混ぜこぜにして最終的にブッ刺してくる感じ。

そして圧倒的なちーちゃんの歌。歌に感しては、何が良くて何が悪いかなんて個人の好みの部分がデカくて一番言いにくいと思うけど、この曲は誰が聴いても神々しさとかアンセム感を感じると思います。女神降臨!みたいな。言いすぎ?

だから、2018年のビバラロック、新ボーカルを迎えて最初のライブの一曲目で、まだシルエットしか見えない新ボーカル(石野理子さん)がこの曲を堂々と歌い始めた時は、「あ…赤い公園に新たな女神が降臨した…ありがとうありがとうありがとうございます」って拝むような気持ちで聴きました。

この曲を聴いた日食なつこさんの最初の感想が「おい津野米咲、なんだこの名曲は」。亀田師匠は自分が死んだら葬式でかけてほしい曲として、椎名林檎の「ギブス」と共にこの曲を挙げています。

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