赤い公園全曲考察52「ドライフラワー」(猛烈リトミック)

「猛烈リトミック」のマリアナ海溝。「きっかけ」同様に赤い公園の活動休止中に書かれた曲で、ある日起きたらまったく身に覚えのないファイルがあって、聴いてみたらこの曲だったとのこと(早朝に起きて作って二度寝したんだと思うけど、打ち込んだことを覚えてないからめっちゃ怖かったらしい)。歌詞もいつものようにネガティブの中のポジティブすらない、赤い公園史上最もダークサイドな曲。もう「完治のイメージ」すら無くて、しかもそれは幼い頃から煩ってるって言うんだから、もしかしたら一番見せたくないものを見せてくれてるのかもしれない。こうして曲の形になってることに感謝します。

でも、歌詞に希望はないんだけど、音には激情と美しさが宿っていて、光のまったく届かないどん底中のどん底で見付けた、希望ですらないけど小さな何かのかけら、みたいな曲なんじゃないかなって思う。

うたこすとひかりちゃんはこの曲を「食らう」って言ってるのに、津野さんはゲラゲラ、プロデュースした蔦谷好位置さんもニコニコしながらレコーディングしたって言うんだから、この人たちは頭のネジが外れてんじゃないかって思う。ラジオでも津野さんはウハウハ笑いながら「地獄みたいな曲」って言ってたし。ちーちゃんも作家脳で歌ってるから食らわなかったらしい、あなたもすごい。

蔦谷さん曰く、「とんでもない名曲」、「ストリングスの弦一徹さんが『(作曲の)センスがうらやましい』と言っていた」。コードもよく分かっていない津野さんが書いてきた弦の譜面で、和音が一音だけ理論的にズレていて、蔦谷さんがその一音だけ書き換えたというのは有名な話。それ、直して正解だったのかなあ。ズレたままの気持ち悪いバージョンと聴き比べてみたいです。蔦谷さんは「クラシックで言ったらモーリス・ラヴェルとか、ジャズで言えばセロニアス・モンク」に匹敵するとまで言っている。このインタビュー(↓)は必読です。

歌詞に「贅沢」「留守番」といった赤い公園の曲名っぽい単語がいくつか出てくるところもポイントだし、この後に何度も比喩で出てくることになる「花」の曲でもある(この「花」についてはずっと覚えておくといいことがあります)。「ドライ=乾く」っていうのは「ふやける」とはまた対照的な別の感情だなとも思うし、「潤う」「加湿器」「漲る」と言った単語があるにも関わらず、どれだけ潤っても蘇らないくらい病んでたなんて、想像を絶する恐ろしさを感じます。

ねごとの澤村小夜子さんが一番好きな曲らしい。


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