海が聞こえない人たち
240316(土)
引越し準備を終わらせる。が、荷物がなかなか詰まらない。色々お土産もらったし、ラボの荷物も回収したから予想よりも増えちゃったみたい。
近似的な最密充填を経由してなんとか全部入れ込んだ。四次元ポケットがなくても三次元ポケットで事足りるんだ。頭が良いからさ。
後輩ふたりと駅の近くでモーニングを食べる。綺麗な器と尋常じゃない量のサラダ。ミスマッチにビビるけれど寝起きの口がむしゃむしゃと頬張る。「風立ちぬ」のクレソンおじさんも似た気持ちだったのかなと少し思う。
そのまま、駅まで車で送ってもらい、東京に向かう。
新横浜で乗り換えて、在来線に乗ったあたりから、電車の広告が私を圧迫してくる。ペラ一枚の視線が私を圧する。
240317(日)
朝9時に寮へ荷物を搬入してもらう。ヤマトの人と猫を待つ。たまたま大学の時の同期に会い、同じ寮に住み始めることが判明した。彼は優秀なので、私をきっと引っ張ってくれると信じている。
部屋に放り出されたダンボール。その中に圧縮された荷物を解凍していく。必要なものだけ詰め込んだはずなのに、いらないだろってものが多すぎる。なんで運んだんだ。捨ててこいよ。と、過去の自分に苛立ちながら、もう見るのを止める。必要な時期になったら取り出そう。荷物たちにすみっこぐらしをさせることにした。
寝癖を軽く直して電車に乗り吉祥寺へ。目的は100年という古書店。先輩のZINEが置いてあるって言うからさ、買わないわけにはいかないよね。
「100年」さんは案の定、素晴らしい書店だった。
又吉さんの手書き原稿があり、以下の文が載せられていた。
“「百年」の棚にある本の中で流れる全ての時間を合わせたら百年どころではない。”
240318(月)
部屋の中の空気を完全にクリアにするため、空気洗浄機をフルパワーにする。ぶおおおん、とドグラ・マグラのイントロみたいな音が狭い部屋を反響する。
学会に向けてひとしきり作業を進めてから、お昼ご飯に駅前の大王亭へいった。餡掛けラーメンが人気だと言うから、そのつけ麺を頼む。
餡掛けラーメンってなんだ?と思ってルンルンと待つ。運ばれてきたものは八宝菜feat麺だった。私はこれをつけ麺とは認めないぞ。なんてったって、麺の器よりもスープの器の方が大きいんだから。
しばらく前からTwitterが映画館車椅子論争で荒れている。
_ リソースが有限であること
_ 功利主義は社会においては正しくないこともしばしばあること
_ みんなが少しずつ損をしなければならないこと
_ でも、誰も損をしたくないし誰にも損をさせたくないこと
そういう現実のやるせなさがどうしても受け入れられない。これは逃げだけれど私は私の幸せを最優先にしたいのでアプリを消した。離れた場所でPodcastを流す。
今日はなんだか一日が早かった。冬が終わり日が長くなったけれども、歳を重ねたから時間が短くなっているらしい。
240319(火)
学会。適当にポスターと企業ブースを見て周る。あんまり私の専門に近いところがなかったけれど、それはそれとして面白い。ポスターブースでは、久しぶりの邂逅なんかが何度もあって、自分がそれなりにいろんな人と関わってきたことを知らされる。人間関係の総量とか線とかが可視化される感覚があった。
明日は自分の発表があるので早めに切り上げてホテルでひたすら原稿を覚える。原稿を覚える最適なやり方って結局なんだろうな。記憶って目に見えないから効果測定が測りにくいし。個人個人で最適手法は違うだろうし。
「一般的にこうすると覚えられる」という手法ではなく、「AとBとCを試してXXXの軸から比較すれば、あなたにとって最適の記憶法が発見できる」というやり方、あったら誰か教えてください。
240320(水)
学会会場で、昔師事した先生の現ラボ助教さんに会った。挨拶すると、そのラボの学生さんたちから「お名前だけはよく伺ってます〜」と伝えてくれた。思い出話(&昔やっていたテーマの進捗)に華を咲かせる。
「xxxは結局どうなった?」
「xxxのaaaとbbbはほぼ終わりです!でも結局cccについては色々やったけどわかんないです!!」
私が生データの整理をちゃんとしなかったから、大変だっただろうな...と申し訳ない気持ちを抱える。わからないということが実験的に確かめられた、すなわち限界領域を定めることができたというのは嬉しい報告だ。
お歳暮ちゃんと送っとこ。
240321(木)
完全閉店セールをしているお店があった。部分閉店を繰り返してきたんだろうか。
後輩と三鷹のジブリ美術館に行ってきた。
素晴らしい。
たくさんのスケッチとイメージの断片。
それらから拡がってくる空想と予感。
時間がどれだけあっても足りなくて押しつぶされそうになる感覚は、自分が小さい頃に図書館で感じていたものと同じだった。
そのまま肉バルらしきとこに行き、ふんだんに肉を食べる。プレゼントとしてペンを貰った。こないだタバコをくれたばかりなのに。ありがたいなぁ。
240322(金)
ミスIDのオーディション動画を駅のホームで観ていたら普通に電車を1本見送ってしまった。後悔はない。
学位授与のため葉山に行く。
式典というもの、なんだか段々と形骸化してきている。これは、年齢のせいだろうか。
結婚式とかでも強く思うのだけれど、カメラマンの権力が強すぎるのは問題だと思う。
厳かな式典の場で、シャッター音が鳴り響くことに耐えられない。記録に残すためにやってるんとちゃうんやぞ。
240323(土)
「娯楽って、結局幼少期の経験に収束するんだよね」
と友達が言う。渋谷のル・シネマで『海がきこえる』を一緒に見た帰りだった。小鉢に盛られたミックスナッツと氷がいっぱいのコークハイが机に置かれていた。
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