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ヤリエル・ロドリゲスは竜の救世主になれるのか

先日、ドラゴンズにとって痛いニュースが入ってきてしまいました。
昨年いずれもチーム3位となる8勝、116回1/3をマークし、今年もローテの一角として期待されていたエンニー・ロメロ投手が左肩の手術を受けるため米国に帰国。前半戦の復帰は絶望的という苦しい状況で開幕を迎えることになりました。

楽しみな若手が出てきつつあるとは言え、ナゴヤドームを本拠地としながらチーム先発防御率リーグ4位、昨季先発として50イニング以上投げたのが規定投球回をクリアした大野雄大、柳裕也、怪我で抜けてしまうロメロの他にベテラン山井大介(65回)のみに終わってしまった中日先発陣にはまだまだ課題も多く、オープン戦でも先発陣の乱調が目立ってしまっています。
やはりチームが上位に進出するためには先発の助っ人外国人の力は必要不可欠。

そこで注目を浴びているのが今季から育成でドラゴンズに加入した新助っ人ヤリエル・ロドリゲス投手です。
オープン戦で150km/hを超える豪速球や切れ味抜群のスライダーを披露し、早くも大きなインパクトを与えている"新ロドリゲス"を支配下にという声が強まってきています。
今回はそのロドリゲスがどんな投手なのか、ロメロの穴を埋められるのか、将来どういった投手になるのかなど、様々な角度から分析していきます。


1.ロドリゲスの経歴

ヤリエル・ロドリゲスはキューバ出身の22歳。
内野手として野球を始め、本格的に投手になったのは17歳ながらそこから僅か4年で最年少でキューバ代表入りを果たしたキューバ屈指のプロスペクトです。

2018年12月に発表された「MLBの興味を呼ぶキューバ人選手」では現在中日でセットアッパーやクローザーとして活躍するR.マルティネスより上位でランクインし、2年前からソフトバンクのスカウトにもマークされる凄まじいポテンシャルを秘めた彼が中日に入団するきっかけとなったのは昨年11月に行われたプレミア12。

中日与田監督が外国人選手獲得の為に訪れていた韓国で、プレミア12の1次ラウンドにキューバ代表として出場していたロドリゲスは、リリーフとして登板したカナダ戦で150km/hを超えるストレートを連発して奪三振を量産。
プレミア12が終わると与田監督はキューバへ向かい、R.マルティネスと二年契約、そして監督の目に留まったロドリゲスと新たに育成契約を結びました。


2.ロドリゲスの投球を分析

ロドリゲスの武器は最速155km/h 常時140km/h台後半~150km/h前半のカット成分の多いストレートにパワーカーブのように大きく曲がり落ちる宝刀スライダー、そしてオフに磨いた140km/h台中盤で鋭く落ちる高速チェンジアップ。
上から投げたり横から投げたりする「千手観音投法」で打者を幻惑し、先発として完投できるスタミナも併せ持ちます。
これらの球種を効果的に使い分けキューバリーグで最多奪三振、プレミア12でも奪三振ショーを展開した高い奪三振能力は大きな魅力です。
それでは球種ごとの動画やデータをチェックして行きましょう。

ストレート
https://twitter.com/Akamiso97/status/1208767012236750848?s=20

昨年8月のキューバでの登板 平均147.6km/h
1回 149.2km/h 2回 147.6km/h 3回 148.4km/h
4回 149.1km/h 5回 147.5km/h 6回 143.3km/h
7回 146.9km/h

OP戦(広島戦) 平均151.8km/h 中継ぎ1イニング

プレミア12でも中継ぎ登板で平均152km/h程度出ており、かなりのスピードを誇るストレート。
見ていただければわかるようボールがナチュラルにカットしています。
特に4球目の96マイル(154km/h)のボールはこの変化量にこのスピード、間違いなく大きな武器になるでしょう。

またボールを受けた捕手曰く右打者の内角への直球は浮き上がるように伸びてくるといい、ジャイロ成分の多いボールということが分かります。
アームアングルを変えて投げるため、上から投げるときは少し沈み、横から投げる高めのボールは浮き上がる、ストレートだけでもいろんな使い方ができる面白い投手です。

課題としては、甘いコースに抜けると絶好球になってしまう球質で制球に課題が残るため被弾が多いという点、先発時の終盤に球速がやや落ちてしまう点が挙げられます。
体力面や技術面はこれから改善していきたいですね。
スライダー
https://twitter.com/Akamiso97/status/1229690936818466816?s=20
https://twitter.com/Akamiso97/status/1234045484332793856?s=20

ブーメランのように大きく横に曲がり、パワーカーブのように鋭く縦に落ちるロドリゲスの伝家の宝刀。
オープン戦の2登板ではこのスライダーが投球の47.6%を占めながら空振り率は20%を超えており、データ面から見ても驚異的なボールと言うことが分かります。
投げ方を変えて曲げ幅を調整し、バックドアとバックフットでスライダーを使い分けることができるのがロドリゲスの凄みの一つで、カウント球としても決め球としてもこのボールを使うことができます。

しかし再現性の低さは課題で、ボールが曲がり切らず痛打されるシーンも目立ちます。
投球の半分近くを占める生命線とは言え投げすぎるとやはり合わせられるので、球種を増やしてより効果的にスライダーを使えるようになれば投手としてもう一段階進化できるでしょう。
チェンジアップ(ツーシーム)
https://twitter.com/gnomotoke/status/1234008865332551680?s=20
ストレートとスライダーのツーピッチ脱却のためにキューバリーグのプレーオフから本格的に使い始めている高速チェンジアップ。
オープン戦での投球割合は10%にも満たないものの、140km/h台前半~中盤で打者から逃げるように沈み、決まれば非常に強力な球種です。
このボールはここまで右打者には一球も投げておらず、課題の左打者に対する投球バリエーションを増やすための球種ということが考えられます。
右投手で持ち球が直球と大きなスライダーだけでは左打者の餌食になってしまう恐れがあるので、このボールが使えればより質の高い投球が可能になるでしょう。
さらに精度を上げて右打者にもこのボールを使い、もう少し投球割合を増やしてみても面白いのではないかと思います。


3.ロドリゲスは今すぐ活躍できるのか

ではロドリゲスは今すぐ一軍で活躍できるのか。
結論から言うと先発としては課題も多いためまだ少し時間がかかりそう、中継ぎとしてなら今からでも十分活躍可能だと思います。
勿論これは今現在の話で、夏場ぐらいから課題をクリアしたロドリゲスが先発で獅子奮迅の活躍を見せる可能性は十分にありますし、それぐらいのポテンシャルを秘めている投手だと思います。

しかし現段階では先発をするには球種が少ないのが課題で、去年キューバで先発した試合を観ていても粘られて四球を与える、球種を絞りやすいため少し甘く入ると痛打されるというケースが目立っていました。
今日の教育リーグの阪神戦でも四球や長打から崩れて3回4失点。
中継ぎとしてなら今の球種だけでも非常に威力がある為それなりの活躍は見込めると思いますが、まだ先発としては物足りなさを感じてしまいます。
やはり先発として活躍するためには新たな球種を習得する必要があり、カット気味のストレートと大きなスライダーの中間となるスラッターや、今のツーシームのような高速チェンジアップとは別にスプリットのような落ちる球を習得し、三振が奪えてゴロも打たせられる「本質的先発投手」に成長して欲しいです。

キューバリーグでの先発/中継ぎ時成績
https://twitter.com/Akamiso97/status/1207610920731471872?s=20


4.ロドリゲスの将来を考える

最後にロドリゲスの将来の完成形や起用法、育成法について考えていきます。
まずロドリゲスは3月下旬から行われる五輪予選に出場しなければならない為、しばらくの間日本を離れ開幕は開催地のペルーで過ごすことになります。
そのため支配下登録は帰国後の二軍での登板内容次第、ロメロが離脱したから今すぐ支配下登録にというファンの声も多いですが、まずは二軍での結果が求められます。

中継ぎとしてなら帰国後すぐに支配下登録しても問題ないレベルだと思いますが、中継ぎにはゴンサレスやマルティネスもいるので焦って上げる必要もないですし、ロメロの穴を埋めるための先発として一軍に上げるには、二軍でしっかりと経験を積んで課題をクリアしなければなりません。

ですので一軍の先発に助っ人外国人がいないという状況にはなってしまいますが、まだ若く課題も多い育成選手の為しばらくは二軍で先発経験を積ませて欲しいです。
そして早ければ夏場から、来年ぐらいにはローテに入りして将来的には球界を代表する先発投手に、今すぐロメロの穴を埋めるというよりは後半戦チームが苦しいときや将来チームを優勝へ導くための救世主として期待したいです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
チームでもトップクラスのポテンシャルを持つ竜のチャッキーの今後の活躍に目が離せませんね!

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