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出発XXⅥ(生活)

「人はサカナじゃなきゃいけない。だが、僕ときたら、まるで自分がハッパででもあるかのように、カワを下って来てしまった。カワの流れは止まってくれなくて、気付いた時にはウミにいた。

さて、どうしたものか。僕は確かにサカナなのに、泳ぎ方がわかりゃしない。そして、ウミは広いくせに、懐が狭いときてやがる。僕は少し漂っただけで、まったく途方に暮れてしまった。

ウミは泳げるもんにとっては、カワよりずっと自由に泳げる。だが、泳ぎ方のわからないやつにとって、ウミは揺れる拷問でしかない。

僕だって、泳ごうとはしてみたさ。その結果が、この失明だ。どこで間違えたのか。いや、そもそも、どこか間違えたのだろうか。考えろ、考えろ、漂うだけでは、沈んでしまう。

僕はウミに着いた時に、かすかに見えたシマに、手探りで進んできた。目が見えるようになるまで、その岸で憩むことにする。」

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