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20230902学習ノート『三つのインタナショナルの歴史』第18章-2 ミルラン事件

20230902

『三つのインタナショナルの歴史』


「ミルラン事件」

この時期は、資本主義が発展し帝国主義に成長した。そして、主だった資本主義国には社会主義政党ができ、社会主義政党の中には右翼日和見主義が成長し、第2インタナショナル全体にまで及んだ。1900年のパリ大会で、日和見主義者をめぐる戦いは頂点に達した。その有名な事件は「ミルラン事件」である。


アレクサンドル・ミルランは、フランスの代議士で、もともとは急進社会党であったが、共和社会主義党に移った。1900年当時はルソー内閣の商業相を務めていた。社会党内で内紛が起きると共和主義連盟に鞍替えした。

このミルランと、ドイツのエドゥアルト・ベルンシュタイン(修正主義)という、2人の日和見主義者の戦いは、第2インタナショナルの右翼と左翼との間で初めて起こった国際的闘争であった。


フランスでは、マルクス主義者は困難な道を歩んでいた。プルードン主義者、ブランキ主義者、バクーニン主義者、ブルース主義者、サンディカリストなど、さまざまな反対勢力が立ちはだかっていた。これらの党を指導していたのは、ゲード、ヴァイヤン、アルマン、ブルース、ジョレスなどであった。ミルラン事件で党の指導者としての存在感を示したのは、ジュール・ゲード(教条主義・正統派マルクス主義)と、ジャン・ジョレス(修正主義)だった。

これらのうち数個のグループが集まってフランス統一社会党を結成するのは1905年のことである。


ミルラン事件の背景は、ドレフュス事件である。フランス陸軍のユダヤ人将校アルフレッド・ドレフュスは、軍部反動から反逆罪をでっち上げら悪魔島(フランス領ギアナにある島。フランス名ディアブル島、英名デビルズ島。日本名は悪魔島または鬼ヶ島。政治犯などの重犯罪者を収容するための監獄が設置されている)へ流された。事件は反ユダヤ主義であり、フランスだけでなく全世界に深刻な反響を呼び起こした。国内の巨大な抗議の声によりドレフュスは釈放され1906年には潔白の身となった。

このドレフュス事件に対する姿勢として、ゲードはプロレタリアートには無関係であるというものだった。それに対し、ジョレスや右翼グループ、独立社会党は、フランス民主主義の運命は危機に瀕していると見ていた。そのためジョレスはミルランを商業相としてワルデック・ルソー内閣に入閣することを承諾させた。ミルランの入閣後すぐ、政府はマルティニークとシャロンにおいて、警察にストライキ労働者を射殺させ、反動的性格をあらわにした。


「パリ大会における左翼の敗北」


1900年の第2インタナショナルパリ大会で、ミルラン事件は3つの立場に色合いが分かれた。

第1の立場(ゲード)は、ミルランの行動を原則に立って非難するものである。

決議案はこう述べた。「プロレタリアートが自分自身の力で、階級闘争を基礎として、その様子をかちとる形のばあいにのみ、ブルジョア政府への参加をみとめるものであり、社会党員がブルジョア政府にくわわることはいっさい禁止する。ブルジョア政府にたいして社会党員のとるべき態度は、つねに断固たる反対でなければならない」

これには、ヴァイアやローザ・ルクセンブルグが強く支持した。

ローザはこう述べた。「ブルジョア社会にあっては、社会民主主義はその本質上、反対党の役割をはたさなければならない。統治する党としての社会民主党は、ブルジョア国家がうちたおされてのちにはじめて、立ちあらわれることができるのだ」


第2の立場(ジョレス)は、極右翼の意見である。ゲードと同様に問題は原則に関わるものとしていたが、方向性は逆であった。社会党のブルジョア諸政党との連携を積極的に擁護し、ミルランの行動を強く支持した。ジョレスは、ミルランの行動は共和国を救ったものとみなし、このようにしてブルジョア政府に参加していくことが社会主義革命の始まりだと述べた。


第3の立場(中央主義)は、カウツキーが持ち出してきた。ミルラン事件において議論されている問題は、原則問題ではなく戦術の問題だとみていた。

カウツキーはこう述べた。「大会はこの問題で決定をだす必要はない」

また、党から独立に大臣になったり、党の代表であることをやめたりする社会党員を批判した。そういう場合には辞職すべきである、と。

左翼はこれを激しく攻撃したが、右翼はジョレスを含め支持して結集した。

決議案は、29票対9票で可決した。この結果は左翼にとって苦しい敗北であった。ミルランのような日和見主義的な裏切り者が続出する道を開いたのだ。右翼主義と中央主義の危険性が深まっているようにみえた。この時のカウツキーの薄っぺらな主張は、後年の彼の腹黒い中央主義的役割の前触れであった。


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