20230517学習ノート『三つのインタナショナルの歴史』第6章-2
20230517
『三つのインタナショナルの歴史』
[大会の仕事]
国際労働者協会の第1回目の大会には、22の支部を代表する60名の代議員が参加した。
・スイス…13支部、代議員20名
・フランス…4支部、代議員17名。
・ドイツ…4支部、代議員3名
・総評議会…オッジャー、カーター、ユンク、エッカリウス、クリーマー、デュポンが出席。マルクスは欠席。
集まったさまざまな政治的傾向を持つ代議員たちは、労働者階級の国際的大衆組織と戦術の最初の礎を築こうとしていた。それぞれが自分のイデオロギーを主張した。しかし大会はとても建設的に進んだ。
大会の主な審議事項は次のとおり。
1. 労働と資本の闘争のために各国で払われている努力を協会の助けによって統合すること。
2. 労働組合の過去、現在、未来。
3. 労働者の協同組合。
4. 直接税と間接税。
5. 労働時間の短縮。
6. 婦人・児童労働。
7. モスクワ政府のヨーロッパ侵略と独立統一ポーランドの復活。
8. 常備軍、労働者階級の利益に対するその影響。
大会は、2年前の「創立宣言」を少し修正しただけで採択した。さらに、マルクスが以前書いた「規約」を承認した。
国際労働者協会は、各地の支部を基礎とし、支部はそれぞれの国ごとに連合評議会に統一された。労働組合、教育団体等の加盟も認められた。これら各団体は、大会に代議員を1名送ることとされた。会員はプロレタリアに限るとする提案がフランス代表団から出たが、イギリス代表団の反対によって否決された。これは、マルクスや経験豊かな政治指導者が排除されることを懸念したためだった。
総評議会は大会の決定したことを実行し、運動全体に政治指導を与えることとなった。会費は年額30サンチーム(3ペンス)とであった。インタナショナルの財政問題は発足以来深刻だった。
[大会の成果]
大会の成果の主なものは次のとおり。
1.労働組合運動の問題についての方針
2.協同組合についての労働者階級の方針
3.労働時間と労働条件
4. 各国の軍事力について
1.労働組合運動の問題についての方針
イギリスの保守的な組合運動家は、組合を単に小さな経済的利権を勝ち取るための手段と考えていた。フランスのプルードン主義は、労働組合は不要であり、むしろ労働者階級にとって危険なものとみなしていた。このような真逆の意見に対し大会の方針は、労働組合を日常闘争において大きな価値があるものとし、労働者階級にとっては教育面で大きな有益性があるとし、プロレタリアート解放闘争においても根本的な重要さを持つものとした。
マルクスは、労働組合を「労働者階級の基礎的中核」とみなし、また、「賃金働と資本の支配の制度そのものの廃止を促進するための組織された手段」として非常に重要なものとしている。そして、労働者はもっと政治に注意を払うべきであり、さらに、未熟練労働者と農業労働者も労働組合に入れるべきだと主張した。
2.協同組合についての労働者階級の方針
協同組合という組織はまだ新しく、多くの混乱した考えが存在していた。ひどいのは、プルードンとラッサールの支持者に多かった。彼らは、協同組合こそがプロレタリアート解放の「ただ一つの道」だと言っていたが、これは大きな間違いで、協同組合「だけ」では労働者の解放を達成させることはできない。このことは「創立宣言」にも書かれている。確かに協同組合も大切ではあるが。
プルードン主義者はなんとかして、インタナショナルによる相互信用銀行の設立を大会に決定させようとした。しかし大会終了後には、このことを口にする者はほとんどいなくなっていた。
3.労働時間と労働条件
労働時間について、大会は、8時間労働制を法律で定める要求を決定した。当時の資本主義諸国の労働者は、主に一日10時間労働制を求めて戦っていた。大会は、それよりもさらに高い努力目標を求めた。アメリカは1836年にすでに8時間労働の要求が労働者新聞に掲載され、1842年にはボストンの船大工たちがこれを実現していた。1866年に全国労働同盟の創立大会が開かれたが、そこでも8時間労働制が主要議題の一つとなっていた。ジュネーヴ大会の決議が、そのご大きな重要性を持つことになる。
労働条件については、婦人の深夜業の廃止と、婦人と児童の産業労働の制限を要求した。プルードン主義者は、婦人は家庭を守るべきだと主張し、婦人の就業を真っ向から非難した。
児童の労働は年齢別に3つのグループに分け、それぞれ労働時間を決めた。この考えは、労働の所得と一般教育と関係した。なお、租税の問題については、大会は、間接税ではなく直接税の制度を支持した。
4.各国の軍事力について
軍事については、大会は、常備軍の廃止と人民軍の設立を要求した。
その他、大会は、ヨーロッパにおけるロシア・ツァーリズムの脅威を非難し、「民族自決権の実現」を通して「民主的・社会主義的な基礎に立つポーランドの再建」を要求した。
宗教については、国際労働者協会のような幅広い大衆団体で宗教問題を持ち出すと必ず分裂のもととなるので、宗教の教義上の面には巻き込まれないようにした。
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