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ワンルーム創世記【幽霊船日記】

・右手が熱い。右側の肩甲骨の内側あたりに痛みがあり、腕の付け根、肩周りに重みがある。右肘は気にならないほどではあるが神経的な痛みが常にある。左手と右手の手のひら同士を合わせると、一方的な熱交換が行われる。ずっとほかほかしている。

・この異常に心当たりしかない。先日の日曜と月曜、私はとにかく連打をしていた。エントロピーとアイデアと変異原とスターダストと免疫と病原体を集めなければならなかったから。

・やってました。ずっと。今プレイ時間見たら22時間やってた。二日間で?

・いわゆる放置ゲーム。放置しているとエントロピーというポイントがたまって、それを消費することで進化の木を広げることができる。最初はアミノ酸、次はDNA、その次は原核生物……というように。段階が進むごとに生産するエントロピーも要求される塩基量もインフレーションするので、最後の方はもう"わや"になる。何が何だか。さあ、人間を超越してシンギュラリティを目撃しよう!

・エントロピーの稼ぎ方は放置以外にもあって、画面タップでも生産が可能になっている。つまり、待ちきれないせっかち野郎はひたすら連打することで、進化のものさしを短くすることができるわけだ。はい。せっかち野郎は俺だ。ずっと叩いてた。右手をこわばらせて痙攣する感じでタブレットの上を微かに触れ続ける。人差し指、中指、薬指。三本の発電機が一秒間に八回くらい振動する。それを何時間とやってたんだから、まあ肩を痛めるわな。

・このゲームは六年前くらいにプレイしたことがある。その時も私は放置然とさせなかったので、これは日常が破壊されるとなったため消した。あとスマホが熱すぎた。あのころと違って自由時間と処理能力を得たし、もう一度やってみたくなってインストールしてみた。そしてこのざまだからな。飽食も中るときはある。

・このゲーム、日本語訳が明らかに変。それがむしろ無機質に感じられて異様な雰囲気を醸すこともあるけど、間違いなく翻訳ミスの時もまま見られる。昔プレイした時はSeal(アザラシ)が「密封する」になっていた(確認したら修正されていました)。他には「重力発電機」というのが木星関係のワードででてきて、おそらくこれはジェネレーターが発電機になったのだと思われる。そういう妙も楽しめるっちゃ楽しめるが、不安になるので改善してほしいです。

・このゲームの良い(悪い)ところは、「シミュレーションのやりなおし」ができるところ。やりなおせばやりなおすほど、次のシミュレーションはより効率的にできるようなボーナスが得られる。強くてニューゲームってわけだ。これが本当によくない。既に私は世界を7回やり直している。恐竜たちは12回滅んだし、宇宙は8度生まれ変わった。気持ちよくて止まらない。ドーパミンがインフレーションする。快楽物質で脳が沸騰する。数が増えていく様子を見ていると人間の本能的な欲求を満たされていく。止まらなかった。このゲームは危険です。

・勉強になる情報がいっぱいあるので、そこは本当に評価されるべき。進化系統や歴史の流れをシミュレーションを通じて(勉強という意味で)苦が無く学ぶことができる。生物学と歴史学が一番面白いんだから。

・ゾンビピッグマンは睡眠をしないのだろうかとふと思った。マインクラフトの特殊ディメンション「ネザー」には昼夜の概念がない。また、システム的にベッドが使用不可になっている。つまり奴ら寝たことがないのかもしれない。まぁ、生物ならまだしもあいつらゾンビだもんな……そうだあいつらゾンビなんだ。中立モブだからゾンビという認識もなかった。脳のある生き物は大抵睡眠をする習性がある。ゾンビには脳が無いから睡眠をしない……?意味分からないクリーチャーだな。

・ゾンピグは水も見たことないわけか。奴らの体液ってどうなってるんだ?

・ああ、そういえば今はもうゾンビピッグマンじゃないのか。ゾンビピグリンだ。

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