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ショートショートと永劫の時間

・初めて星新一を読んだ。『ボンボンと悪夢』。星新一はなんとなーく子供っぽいイメージがあってプライドの高いオラは敬遠していた。ちょっとした機会があったのでふらっと読んだが面白い。基本SFでアイデア一本釣り。良くも悪くも数ページ先でオチがつくので楽。変な色の潮溜りに顔突っ込んで独自の生態系をのぞいた後ふっと息をつくような。そんな感じ。

・いくつか好きな話を。『夜の道で』草の匂いがした。『顔の上の軌道』終わり方がおしゃれ。『乾燥時代』湿った夜の匂い。『囚人』オタクが好きな関係性。『白昼の襲撃』三崎亜記さんみのある不思議な世界観。『すばらしい食事』伊坂幸太郎さんみのあるシュール逆転劇。

・『囚人』いいよマジで。自ら監獄に入った囚人と早く脱獄して欲しい看守の話。大義があるのなら罪のない人間を殺したり捕らえたりしてもいいのだろうか。何を善とし何を尊ぶのか。看守も囚人もお互いがお互いを殺したいし殺して欲しいと思っているの好き。情緒じゃん。オススメ。

・『宝石の国』を99話までみました。感想は特にないです。めちゃくちゃでした。ファスがどんどん壊れていくのが当然の成り行きとはいえ「どうしてこうなった」と言わざるを得ないよ。シンシャはどんな顔すりゃあいいんじゃ。私はダイヤが好きです。いろいろ複雑なんで。金剛かわいい。お茶目。

・鉱石の話なので次のページで100年経ってたりする。あと性別が不安定?時期によって見た目が女性ぽかったり男性ぽかったりする。無性なのかしら。モノクロだと全然キャラ見分けられてない気がする。それに見た目がころころ変わるしね。一気読みしたので名前も覚えられてない。

・『キリンに雷が落ちてどうする』買った。著者の品田遊さんもといダ・ヴィンチ・恐山さんが好きなので。最初の一話だけ読んでその先は放置している。ごめんね。

・『ファミレスを享受せよ』っていうゲームをした。めっちゃよかった。推定プレイ時間が三十分~ってあるけど二時間は覚悟しよう。主人公が永久のファミレス「ムーンパレス」に迷い込んでしまう話。ムーンパレスには先客がいて、数百万年前からいる人や一国の王や広所恐怖症の人などがいる。みんなこの空間から出ることを諦めており諦観と怠惰が場を支配している。しかしそれは逆にいえば安定であり平和な時が流れていた。新参者の私は彼ら彼女らと交流しながらムーンパレスの謎を解き明かすこととなる。

・ガラスパンが一番好き。ムーンパレスの古株でありえげつない時間を過ごしている。彼女は友人のラテラとこの空間に来たのだが、果てしない時間の後ラテラは突然消えてしまう。ムーンパレスから抜け出せる希望を示しつつ、なぜ私を置いていったのかと問わずにはいられなかったガラスパン。一時は錯乱し発狂したものの、ラテラがいない時間が共にいた時間を上回り幾星霜経ったのち彼女は穏やかな表情で主人公を歓迎するのだった。タイトルの「ファミレスを享受せよ」は彼女のセリフである。

・登場人物みんなが優しい。絵のタッチやBGMも相まってここがありきたりなファミレスだと見紛うほどには。危機感がない。実際死なない餓えないのだから生命が脅かされることはない。それに「一人ではない」という安心感がある。日々の楽しみは会話とドリンクバーだけ。でもそれさえあれば事足りるのかもしれない。永久を生きるには。

・ファミレスって時間を潰す場所という意識が強い。そこからこの作品は生まれたのかな。


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