アエルダリ考:比類なき先見性

事情でミニチュア作業が出来ないのでその間にそのうち書くといった内容をまとめてみる。

比類なき先見(Unparalleled Foresight)、またの名をSwordwind改

さて、アエルダリのデタッチメントアビリティ、つまりアーミー能力。
ひとつは最初にも書いた宿命の糸(Strands of Fate)。ダイスを振る前に手持ちから置き換えて確定する。シスターの奇跡ダイスと似たような機構を持つアビリティだ。
そしてもう一つが今回の比類なき先見になる。効果はユニットごとにヒットロールとウンズロールを1dずつ振り直すことができる。つまり、ユニットすべてにリロール命令がかかりっぱなしになってるようなものといえる。アーミーロスターがユニット5個ならヒットとウンズで10CP分相当。そう考えると大分ぶっ壊れている。
9版ではクラフトワールド、今のアエルダリのデタッチメントのひとつにビエル=タンがあり、剣風(Swordwind)というアビリティを持っていたのを知っている人もいると思う。それに近い、というかウンズロールも振り直せるのでそれより強い。

前回も書いたようにこのアビリティは現在のアエルダリの生命線であり、なおかつ致命傷、というか毒でもある。
宿命の糸のように決定的な場面で確定で成功を演出する派手さこそないものの、常に確率を上方修正するこの能力は非常に強力でダイスによる結果予測のぶれを少しずつ良い方へと修正してくれる。
例を挙げよう。4+/4+の1回攻撃は25%の確率で成功する。ここに比類なき先見を適用すると56%まで結果が向上する。(1-3までの失敗したロール50%を振り直して再度50%でロールするのでヒットのみの成功率が75%、同じことをウンズロールでも行うので。)

この効果量はざっくりいえばロール結果に+1に近い。そうやって書くと大した効果ではないように見える。何せユニットにつき1回の攻撃に対してだけしかこの効果は適用されない。さらにいえば、ロール結果を操作する能力の評価で良く見られる効果量割合でいえば目標値が高いほどその割合は増すため、アエルダリの強みである高精度の攻撃性能においては効果量の割合は減少してしまう。要は2+3+といったロールに対して1dのみ結果を+1するのでは、それこそシスターのヒットロール/ウンドロール+1には到底及ばないし節目の誓いのリロールにも大きく劣るという話である。しかも極端な話、ツインリンクのウンドロールでは一切恩恵がない。

が、それでもこの比類なき先見は強いと思う。状況を制限せず、最初から最後の一兵に至るまで効果を発揮し続けること。対象を制限せず、どんな攻撃にも反映されること。これらは上記二つの能力とは異なる。
そして効果割合を押し下げるアエルダリの高精度の攻撃も、高い期待値を持つ攻撃の期待値をさらに押し上げる、という点では意味がある。端的にいえば、全体的な見通しを立てやすくする。当たる攻撃がより確実に当たるように、通るダメージ量がスペック通りにより近づくため予測がしやすくなる。これは全体的な耐久性能が低く、相手が自分を排除するよりも先に相手を排除する必要があるアエルダリにとっては大きなアドバンテージになるのだ。特に2+に関しては失敗の確率を1/6から1/36に大きく下げるため、効果がないロール結果+1よりも大きく確実性を向上してくれる。

それがもたらした歪

さて、実際どのくらい強力かは使ってみるか使われてみるかするとして、それが何をアエルダリにもたらしたのか。
ここからは想像だが、この能力を見て、なおかつ宿命の糸とのシナジーを考慮して、10版初期のアエルダリプレイヤーはこう考えた。比類なき先見を徹底して効果的に使うことが勝ちへの道筋だと。少なくとも僕はそう思った。
そしてそれが招いたのが今につながる大艦巨砲主義ではないだろうか。この場合大鑑であるさほど必要はないのだが、攻撃を受けても火力が減少し辛く最後まで同じ性能を維持しやすい、という意味ではそれも意味がある。
とにかく巨砲主義に至る理由を説明してみよう。
まず、どんなユニットでも1dずつを振り直すことができる。同じポイント数のユニットが同じ程度の火力を出力できるとすると、それを1回の攻撃にまとめてある方が比類なき先見の効果が高くなる。1回の攻撃を振り直せるとして、1回で10Dの攻撃と10回で1Dずつの攻撃を同じコストのユニットが撃つならば、前者の方が比類なき先見性の効果が高い、という話だ。もちろん後者の方が確率が収束しやすくなるため安定したダメージ量が見込めるのだが、そこに先ほどのアエルダリの高精度攻撃を組み合わせると確実に通る可能性が高まるせいもあって前者の有効性が高まった、ということなのだと思う。分かりやすいのがインデックス公開前からフォーカスされたファイアプリズムだろうか。安定して6Dの砲を撃ち込むそれは攻撃回数がたった2回であっても、12回の1D射撃をするユニットよりも「比類なき先見の面では」有利なのだ。
ただしこれには落とし穴があって、ファイアプリズムに関しては++を貫通する方法がなかった。6点を効果的に発揮するためには6W以上の相手を撃つ必要がある訳で、そういった大物は得てしてスペシャルセーブを持っていることが多い。致命的ダメージも会心ウーンズもないファイアプリズムが思ったほど注目されなかったのはそこが理由のはずだ。
ならばデバステだ、確実にスペシャルセーブ、即ち++をバイパスできる攻撃を持つユニットだ、となったときにレイスガードやサポートウェポンにスポットが当たったのだと思う。これらのユニットは攻撃回数が少ない代わりに1回当たりのダメージ量が大きく、++を無視できる会心ウーンズを持つ。会心ウーンズに関しては大量に振るほど6の出目は増えるため攻撃回数が少ないのは本来不向きなのだが、そこに宿命の糸や運命の使者が滑り込んで6を確定させることができるために巨砲主義が成立してしまった。
同時に手数に優れた会心ウーンズ持ちとしてスパイダーやジェスターが存在し、数の多い相手に対抗する手段も存在していたため、そういった一部のユニットだけがロスターにピックされることになった。もっとも海外の大会等では強ユニットを詰め込むのは手堅い勝ち筋なのでアエルダリに限ったことでもないのだが、それが顕著な上にオーバーパワーだったのも確かである。
巨砲主義がロスターの幅を狭め、さらにそれに伴うグッドスタッフが目立った結果はどうなったか。
ひねり出す構成は端からナーフされ、さらにロスターの幅を狭めていく。壊れな程勝ってんだから仕方ない。ただしその調整はポイントの上昇で対応され、元より高コストなアエルダリはさらに組み合わせの幅が狭くなった。それで誰が楽しいのかという話ではあるが。

それでも、10版開始の頃に大量にいた使用ユーザーがアエルダリを見限って大きな大会の上位にアエルダリが現れなくなっても、そういったガチガチの勝利を目指すのでなければ楽しくない訳ではないというのが僕の考えではある。何というか、祭りが終わって通常運行に戻っただけ、という話だ。
ただ、歪になったロスター構成と、組み合わせの選択肢が狭まった高コストを見ると若干切なくはある。いろんなユニットを入れて遊べる方が楽しいに決まっているのだし。

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