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マンガにアンケートは必要か?

マンガには、書き手だけでなく、読み手の情熱も必要だ

by RECOMAN

こんにちは。株式会社RECOMANのCMO兎来と申します。
CMOは一般的にはChief Marketing Officer(最高マーケティング責任者)ですが、弊社においてはChief Manga Officer(最高マンガ責任者)です。

現在RECOMANは、
「マンガの力で世界を変える」
というヴィジョンを持ち、
「人生を変えてしまうような、人とマンガの出会いを一つでも増やす」
「世界中の人々が、マンガを読める・描ける世界にする」
というミッションに挑むため、新しいマンガアプリ「RECOMAN」を開発しています。

そんなRECOMANにはどんなメンバーがいて、どんなことを考えているのかを知っていただくためにこのノートを立ち上げました。

今回は、コアメンバーであるCEOの細川とCMOの私による対談形式で、「マンガにアンケートは必要か」というテーマについて語っていきます。



アンケートの光と影

細川
今回のテーマは「マンガにアンケートは必要か」です。
アンケートといえばやっぱり、『ジャンプ』ですよね。
アンケートの力で、あそこまでの大作を生み出せたとよく言われていますね。

兎来
『ジャンプ』は『マガジン』や『サンデー』に比べて10年ぐらい遅れてからの出発だったので、他との差別化のために、以下の3つを重視したそうです。

  1. 新人の起用

  2. 専属契約

  3. アンケート

アンケートは実は『ジャンプ』の創刊号からあって、「好きな作品を教えてください」といったものだったそうです。
時によっては「つまらなかった作品を教えてください」と問う場合もあったようです。

細川
この時のアンケートの狙いはやっぱり人気ランキングですかね?

兎来
そうですね。
どの作品がシンプルに人気があるのかを集計していたようです。

それによって編集者同士にも競争意識が芽生えたことで、他の作品には負けないぞ、次はもっと面白くしてやるという競争がすごく働いた。
どうやったら読者に次回をもっと読ませたいと思わせられるか、アンケートの順位を高くするか。

そうやって、どんどんと洗練されていったというところがあるらしいですね。

細川
僕も小さいころに何度かアンケートを出したことがあるんですが、
好きな作品以外にも、ちょっと踏み込んだ質問もあった記憶があります。
どのキャラが好きですか? とか、そういうのありますよね。

兎来
そういったところも見る場合もあると思います。
また、単純に人気があるかだけでなく、人気が低かったとしてもそれをどれくらい修正していける力があるかも大事らしいです。
修正力が高いと、一度打ち切りになっても次の連載につながることもあるからとか。

細川
なるほど。
『ジャンプ』は作品の途中で作風が変わる作品もかなりありますよね。
『幽☆遊☆白書』などは1巻を読むと思っていた印象と違うなと感じます。

兎来
バトルをしたり、トーナメントが始まったりすると人気が出るのは定番だったらしいです。
逆に、そうなるとみんなそれを真似しちゃって食傷気味になってしまうこともあったようです。

細川
一部の雑誌の編集者さん達は敢えてデータを見ない、といった声も聞いたことがあります。

兎来
もちろん、そういう編集の方もいると思います。
『アフタヌーン』系の作品などは、アンケートだけでは生まれない。

細川
わかります。
アンケートでは救えない作品って、絶対ありますよね。
人って、本当の意味で無視するのは中々難しいじゃないですか。
一部見てしまったら、完全に忘れることはできない。
作家先生は見ないほうがいいから、編集で止めちゃう、という判断もありそうですよね。

兎来
感想を言うのはもちろん自由ですが、人によってはナイーブで反応をものすごく気にしてしまう方もいますし。

読者にはよく悪気なく作者に「○○に似ている」と類似の指摘をする人もいますけど、それも反応に困ると聞きます。素朴にそういう感想が浮かぶのは解りますが、「中古で買いました」と伝えるのと同じで、いい気分にならないことをわざわざ本人に伝える必要はないという話ですね。

デジタルの時代

細川
マンガも紙の雑誌から、アプリの時代になってきて、アンケートはこれからどうなっていきますかね。

兎来
最近はアプリの中にコメント機能があって、そこにコメントするケースが増えていますね。
そのアプリでは購入はしていなくても、口コミが気になるからわざわざ見に来る人もいるそうです。
作品全体でなく、1話ずつの感想が見れるのもいいみたいです。

細川
すごく気持ちわかります。

また、純粋なアンケートとは違いますけど、それこそAIで、要約はかなり簡単になって来ていて、この話に対して、このようなレビューがされていますよって抽出はすごく簡単にできるんですよ。

あくまで要約で、全体の平均であって、一番大事な端っこの部分は落ちちゃう可能性はあるんですけど、そういうのをアンケートの代わりとして使っていくことも面白いですよね。

兎来
今は帯でもよく書かれていますが、データとしてSNSでどれぐらいバズったかが重視されていますね。
作品そのものの本質とすごく相関がある数字を見れればいいんですけど、そうじゃない運要素や外的要因によって左右される要素が入ってしまうと、作品作りに逆にノイズになってしまう懸念もありますね。

細川
なるほど。

次世代のアンケートとは

細川
デジタルの時代とかいいながら、全然違うアナログな話をしていいですか?

兎来
どうぞ(笑)。

細川
僕は一時期、『ジャンプ』の新連載を全然読んでない時期があったんですよ。
でも、そのときでも『鬼滅の刃』だけはかなり初期から読んでたんです。
なんで読み始めたかというと、電車の中ですごい形相でマンガアプリを見てる人がいたんですね。

なに見てるんだろ、って思って覗いたら、『鬼滅の刃』だったんです。
ブームの全然前で、『約束のネバーランド』の方が一般的には人気だった時期です。

その人のマンガへの執着というか、表情が本当に凄かったんで、これは読まなきゃって思った訳です。
そして、めちゃくちゃハマりました。

何が言いたかったかというと、人気の数、これくらいの人に読まれてますよ、支持されていますよ、というのも確かに大事だけど、
圧倒的な1票も大切だと思うんですよ。

支持している人は一人だけかもしれないけど、その人はものすごい熱量でこの作品を愛しています。
こういった情報をキャッチしてフィードバックできたらいいなと。

兎来
ものすごく作家性が強くニッチな作品でも、今はそれを求めている少数の人へも届きやすくなってきてはいると思います。
そして、そういう人が放つ熱量というのはやっぱり高くて、またそれを受けて読みたくなる人がいる。
そういったものをもっと上手く回して届けられる仕組みを作りたいですね。

作者が描きたい事と、読者が読みたいもののバランスは難しいですよね。
奇跡的にそれが一致している方も中にはいますが、多くの方はその葛藤の中で作品を作り出していると思います。
はじめは一部の人にしか刺さっていなくても、それを貫いたからこそヒットした作品もあると思います。

細川
まさにそれが大事だと僕も思います。

デジタルが進みすぎると、簡単にユーザーの声が反映できるようになってしまう。
一歩間違えると、読者が読みたいものに寄り過ぎてしまうと思うんです。
そういった作品は、はじめは人気が出ても、どこかで失速してしまうんじゃないかなと。

次の時代を作る作品は、ユーザーがわかりやすく望むだけのものではなくて、
作者の想いも大切だと思うんです。
そこがぶつかりあった時に、本当の名作になるんじゃないかなと。

RECOMANは、デジタル技術を強みにしていますし、それはもっともっと導入されていくべきだと思います。
ただ、本当に大切なのは、
その裏にいる人であり、心なので、
読者の気持ちも、作者の想いも、
どちらもWinWinになるようなフィードバックの仕組みを作っていきたいですね。

兎来
本当にその通りです。


次回は5/8(水)に「マンガの配信の歴史 前編(全三回)」を公開予定です。

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