マスダンを考える

マスダンパーとは、サスペンションのないミニ四駆において、ジャンプからの着地時にマシンを安定させるためのパーツ。実はF1にも使われた技術で、身近なところだとビルの地震時制震(デカい振子見た事あります?)にも同じ原理が使われています。
ミニ四駆では、元々はダンガンの前タイヤを復活後の公式レースで現在のように使用したのが始まりと聞いており、意外と歴史は新しい。

難しい話は割愛するけど、要するに「着地時の跳ね上がろうとする車体の力にマスダン落下時の慣性重量をぶつけて相殺する」ことにより安定させる役割です。

よく「マスダン付けたのに飛び姿勢変わらない」「マスダン増やした(重くした)から跳ねてCOしないだろう」と言う台詞を耳にしますが、コレは実はマスダンの意味や役割を理解してない間違った認識なのです。
今回は、マスダンについて説明しながら「力の作用」や「バランス」についても触れていこうと思います。

まずは「力の作用」について簡単に。
物質に掛かる力は、進行する力に対し何かに衝突した際、逆向きに質量+進行する力が掛かります。
例えば、ボールとガラス玉。
ガラス玉を落下させ、地面に落ちると上へ僅かに跳ね返るか割れます。
ガラス玉は硬いので材質自体に跳ねる力(反発力)はほぼ持ってませんが、落下エネルギーは跳ねる分またはガラス玉の硬さを粉砕する力が掛かるからです。
ボールは反発力を持っているゴム製品のため、落として地面にあたると出発点まで跳ね返り(正確には重力等の力が掛かり僅か下まで跳ね返り)ます。
では、ボールに回転を加え落とした場合違う方向へ跳ねるのは?
回転する力でボールが跳ねる力の向きを変えているからで、その向きは入力される角度とエネルギー量で変わります。
つまり、ミニ四駆にも同様の力が働いており、この力を相殺し安定させるためにマスダンは生まれました。

ミニ四駆は直進する力でスロープをジャンプし着地します。この時山なりの放物線を描いているわけですが、着地の瞬間は放物線に沿って逆向き(斜め後ろ)に本来は力が働き、着地後は進もうとする力で斜め前方向へ力の向きが変わります。
マスダンはこの着地の瞬間に発生する力にマスダンの質量+落下エネルギーをぶつけて相殺しているのです。

ではなぜマスダンは着地の瞬間に稼働し力が発揮出来ているのか?
思い浮かべて欲しいのは、宇宙飛行士の無重力訓練です。
無重力訓練は、高高度から飛行機の推進力を切って(または急角度で)落下させて行っていました(今は分かりません)。
物質は重さに関係なく、落下する距離と速度に比して重力から解放されます。簡単に言えば重力の引く力を超えるため、飛行機内で無重力体験が出来るのです。もっと身近だと、ジェットコースターが頂上から落ちる時に身体に感じる「アレ」です。
ミニ四駆はスケールが小さいものの、同様の力が働いていて、ジャンプ時の放物線の頂上から着地までの間にマスダンは宙に浮いた状態(またはそれに近い状態)である為、着地時にマスダンの落下エネルギーをぶつけて跳ねる力を相殺出来るのです。

つまり、マスダンを幾ら積んでも飛行中のマシンの飛び姿勢は、マスダンが無重力状態(またはそれに近い状態)なので基本的に変わらないのです。
もし変わったと言うなら、それはマスダンの稼働範囲が狭くて(または稼働させる向きが悪くて)マシンの放物落下速度中にマスダンを「引っ張る」事でバランスが変わっているのであり、その場合、マスダンの落下エネルギーは本来発揮する能力より劣ります。
また、載せ過ぎるとマシン速度によっては、今度はマスダンの跳ね返される力で不安定になったり、場所や付け方によっては「マスダンが別のマスダンの力を相殺してしまう」事も有り得ます。

こうした「力の作用」を知ることにより、効率的で最低限のマスダンで済ませる事で、結果車体重量を減らし、安定した速度向上が望めるのです。
力の作用を突き詰めていくと、ミニ四駆を立体で、高速度でノーマスダンで走らせる事はそれほど難しい事ではありません。条件揃えば、一切のギミックも必要なく完走させることも可能です。
飛び姿勢やバランスについての詳細は、別途後述する予定なので割愛します。

これを読んで、少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。

編集後記
マスダンは安定走行の許容範囲を広げ補うが、マスダンが無いと走れないと錯覚させる既成概念に捕らわれ易い。
マスダンの本当の役割や効能を改めて知る事で、走りは良くなっていくから、考えてみて欲しいと思う😌

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