兄が推しに貢ぐために妹にお金を借りに行く話[1:1]
推しに貢ぐために実家に帰って両親にお金を借りようとしたら、妹しかいなかったので妹にお金をせびる話。
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〈登場人物〉
賢二♂:推し活に全てを捧げる社会人。
花音(かのん)♀:大学生。卒業旅行のためにアルバイトでお金を貯めている。健気で天然。
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花音:「あれ?おにーちゃん!いつ帰ってきたの?」
賢二:「つい、さっきな。父さんと母さんは?」
花音:「旅行に行ったよ!近場だけど夫婦水入らずで過ごしたいんだって。」
賢二:「…なんでこんなときに、旅行なんて…。」
花音:「連絡しないおにーちゃんが悪いんだよ。急に帰ってくるなんて。ご飯とかなにも用意してないや。どうしよ?」
賢二:「花音、メシとかいいからさ。金貸してくれないか?来月には返すから!な!頼む!」
花音:「はぁ?お金?だっておにーちゃん社会人でしょ?私まだ学あ生だよ?社会人が学生にお金借りるなんて…。」
賢二:「今月だけ!今月だけだから!な?貯金あるだろ?頼む!」
花音:「妹の貯金あてにするとか…。どういう生活してるの?もぅホントに…。で、いくら?」
賢二:「10万!いや20万!」
花音:「はぁ!?20万!?本気で言ってる?私、学生だよ。分かってる?」
賢二:「来月には返すから!な!頼む!」
花音:「20万なんて…すぐ出るわけないじゃない…銀行行かなきゃないよ。」
賢二:「なぁ、頼むよ。」
花音:「待ってて。銀行行ってくるから。」
賢二:「ありがとう!来月には返すから!」
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花音:「はい。これ。ちゃんと数えてね。」
賢二:「いち、に、さん、大丈夫。ちゃんと20万ある。」
花音:「卒業旅行の資金なんだから、ちゃんと返してね?」
賢二:「分かってるって。それでさ、このことは父さんと母さんには内緒にしてて欲しいんだ。」
花音:「まあ、社会人の兄が学生の妹にお金借りたなんて聞きたくないだろうね。そうしようか。変な心配かけたくないし。」
賢二:「そうそう!そうだよ!さすが花音!話がわかる。」
花音:「ふぅ…。ところでご飯食べてく?母さんじゃなくて私が作ったやつだけど。」
賢二:「食べていこうかな。あとソファーでいいから泊まっていくわ。」
花音:「わかった。お風呂も焚いとくね。」
賢二:「おぅ!ありがとう!」
--夕飯---
賢二:「花音の料理は薄味だな。不味くはないけど物足りない。」
花音:「父さんが塩分制限あるからね。母さんも減塩してるはずだよ。」
賢二:「そうなのか…。花音、醤油とマヨネーズあるか?」
花音:「醤油はわかるけど、マヨネーズ??まあいいか。」
--お風呂--
花音:「おにーちゃん。湯加減どう?着替えおいとくね。」
賢二:「おー。ありがとう。」
--就寝--
花音:「おにーちゃんの部屋は物置になってるんだよね。なんとかベッドだけでもって思ったけど難しかったから、やっぱりソファーだね。はい。毛布。まだ暖かいから大丈夫だと思うけど、一応もう一枚毛布おいとくね。」
賢二:「ありがとう!花音。おやすみ」
花音:「はーい。おにーちゃんおやすみ!」
--深夜--
賢二:「ここか?違うな。こっちか?違う。ここだ!あった!」
花音:「うーん。眠いのにがさがさうるさいよ、おにーちゃん。あれ?おにーちゃんなにしてるの?それ父さんの通帳だよね?」
賢二:「こ、これは…その…。」
花音:「おにーちゃん…ダメだよ。父さんに怒られるよ。」
賢二:「カスミちゃんが、ガチイベ走ってるんだ。どうしても1位にしてあげたくて…。」
花音:「カスミちゃんって誰?ガチイベって何?」
賢二:「Vライバーだよ。カスミちゃんは。ガチイベは入賞すると1ヵ月間、帯に掲載されるんだ。チャンスなんだよ。カスミちゃんの知名度がぐんと上がるチャンスなんだ。」
花音:「それと父さんの通帳なんの関係あるの?」
賢二:「明日、ラスランなんだよ、そうラスラン。カスミちゃんが1位になるにはあと40万ptくらい足りなくて。今回は荒れに荒れてさ。けっこう投げないと1位になれないんだ。」
花音:「40万pt?ラスラン?」
賢二:「カスミちゃんの大事な時なんだ!わかってくれ!」
花音:「よくわからないけど…お金が必要ってこと?」
賢二:「そ、そう!投げるにはお金が必要なんだ!どうしてもカスミちゃんを1位にしたい。そのためには40万pt投げなきゃダメなんだ!」
花音:「昼間に貸した20万じゃ足りないの??」
賢二:「あと50万は欲しい。」
花音:「50万??そんな大金家にあるわけないじゃない!私のバイトと父さんの年金で生活してるんだよ?昼間の20万だって卒業旅行のためにやりくりして3年かけて貯めたんだから。」
賢二:「なあ、頼むよ!父さんの印鑑の場所教えてくれ!どうしてもカスミちゃんを1位にさせたいんだ!」
花音:「おにーちゃんがそこまで言うなら…でも印鑑の場所は私も知らないからなぁ。父さん達帰ってくるの明後日だし。」
賢二:「そんな…」
花音:「あと12万くらいなら私の貯金から貸せるけど…足りないよね?」
賢二:「恩にきる…花音。お前はいい妹だ。」
花音:「ううん。おにーちゃんがそこまで尽くしたいっていう人なんだから、素敵な人なんだろうね。だからさ?親に黙って持ち出した通帳で引き出したお金なんか喜ばないと思うんだ。もう泥棒みたいなことはしないでね。」
賢二:「すまない…ホントにすまない…」
花音:「このことも秘密にするね。父さん達に変な心配させたくないし。」
賢二:「ありがとう!ホントに何から何まで申し訳ない。」
花音:「大丈夫だよ。おにーちゃんにも好きな人ができたんだね。よかった!仕事とゲームしかしてないから彼女さんなんて出来ないって思ってたけど!ついに!おにーちゃんにも春がきた!これは大変喜ばしいことです!」
賢二:「へ?」
花音:「父さんも母さんもきっと喜ぶよ!そっかー。おにーちゃんに春がきたかー。ふふふ。」
賢二:「いや?あのVライバーさんだから…彼女とかじゃないんだな…」
花音:「結婚式はハワイとかいいね。楽しみにしてるよ!おにーちゃん!」
賢二:「お、おぅ?」
--おわり--
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