シナリオ「幸福論」


〇字幕『幸福ってなんだろう・・・?』

〇タイトル「幸福論」

〇街頭
  行き交う人々・・・
  いつも目に映る風景。
洋一(ナレーション)「なにが幸福なのだろうか?」

〇同・街頭のビルの大型スクリーン
  大型スクリーンに日本人メじゃあリーガーの活躍が映し出されている。
洋一(ナレーション)「それは夢を叶えたとき?」
  そして、大型スクリーンにマイホームのCMが流れる。
洋一(ナレーション)「はたまた望みの暮らしを手に入れたとき、それが幸福なのだろうか?」

〇同・街頭
洋一(ナレーション)「少なくとも、アパートと会社の行き帰りだけの、そんな生活を送っていると、ふっ、となにが幸せなのか、疑問に感じることがある・・・」
  街頭前にある駅の改札口から出てくる営業帰りの紺野洋一(36)。
  冴えない36歳のサラリーマンである。
洋一(ナレーション)「このまま社会の歯車の一部で終わるのではないかと不安さえよぎる・・・」

〇居酒屋の外観(夜)
洋一(ナレーション)「でも、そんなことを会社の同僚に言うと、同僚は決まって俺を居酒屋に連れ出す・・そして」

〇同・店内
  洋一は、同僚の佐山(38)さん、岩崎(35)さんと飲んでいる。
佐山「でも、いいじゃないか。庭山さんを毎日拝めるだけで」
岩崎「そうだよ!あんな美人と一緒に仕事が出来るなんて、それだけでも幸せと思え」
洋一「確かに彼女を見ているとそんな気持ちにはなれるけど」
佐山「だろ」
岩崎「なんてったってわが社一のマドンナだぞ!」
洋一「でも彼女、どうやら営業の髙木くんと出来てるらしい」
岩崎「ほんとか!それ!」
洋一「そんなうわさを聞いたよ」
佐山「畜生ぉ~あの男、なんでも持っていっちまうんだな」
洋一「仕方ないよ」
岩崎「まぁ、彼はハンサムだし、仕事も出来るわが社期待の最年少課長だからな」
洋一「そうそう、似合いのカップルだよ」
岩崎「俺たち係長どまりの相手なんてしてくれない。俺らは、ただ見てるだけで精一杯だ」
洋一「そうそう、見てるだけ見てるだけ」
岩崎「見るのはタダだからな」
  洋一と岩崎は思わず笑う。
佐山「畜生、高木の奴!いい思いしてるんだろうなぁ~、畜生~」
  佐山は本気で悔しがっている。
岩崎「まぁまぁ、そう熱くならないで、ビールでも飲んで冷やしましょうや」
  と言って、3人は笑いながら乾杯する。
洋一(ナレーション)「この後、決まってエロおやじトークになる・・・それもいつものこと」

〇高層ビルの外観

〇同・会社内
洋一(ナレーション)「それでも、そんなおやじたちの話題になるわが社一のマドンナと一緒に仕事が出来ることが、今の俺のささやかな幸せなのかもしれない」
  洋一の視線の先には庭山まりあ(25)がいる。
  まりあは部長(55)のテーブルに書類をもっていって話をしている。
  部長も自然とニコニコしながらまりあと話をしている。
  ふ、と部長と目が合う。
  洋一は気まずそうに目を机においてある書類に落とす。
洋一「俺にとっての幸せってこんなものかなぁ~?」
  と眉間にしわ寄せながらポツリと呟く。

〇同・従業員食堂
  洋一はトレーをもって並んでいる。
  そして、食べたいものをチョイスしている。
洋一(ナレーション)「じゃあ他になにか叶えたい夢はあるのか?と聞かれたら、別に答えられる夢もなく。じゃあ、いま満足か?と聞かれたら、満足とは言えないがさほど不満でもない・・・曖昧な感情、曖昧な気持ちをもって、ただ過ぎ行く時の中をさ迷っているだけの日々・・・」
  洋一は料金を払って、空いている窓側の席につきながら、
洋一「そんなんじゃあ幸せなんて感じられないな・・・」
  そこへ、ニコニコしながら保険外交員の佐藤(51)さんがやってくる。
洋一(ナレーション)「でも、そんなことを会社に来る保険屋のおばちゃんに言うと」
佐藤「じゃあ結婚しな!そうしたら変わるよ」
  と言って、お見合い写真を洋一の前にどっさり持ってくる。
洋一「佐藤さん、今日は随分持ってきたね」
佐藤「それだけ、あんたの将来のことを考えてんのよ!」
洋一(ナレーション)「そして、必ず決まって」
佐藤「そして結婚して、夫婦でうちの保険に入りな。そしたら幸せになれる」
洋一(ナレーション)「と、保険をすすめる抜け目のないおばちゃんだ」
  洋一は、佐藤さんの強引にすすめるお見合い写真を見て苦笑いを浮かべている。
洋一(ナレーション)「そんな日常がいつものように繰り返される」
佐藤「この人なんか、今日のおすすめ!」
  洋一は相変わらず苦笑いを浮かべている。

〇会社内(次の日)
洋一(ナレーション)「しかし、今日は違っていた・・・」
  しかし、見た目はいつもの同じ日常。

〇休憩室(喫煙室)
  そこに保険のセールスをしている見知らぬおばさん、亀田さん(47)がいる。
  社員に対して保険のセールスをしている。
  そのセールスが終わったところへ洋一がやってくる。
洋一「あれ佐藤さんは?」
亀田「ああ、佐藤さん、お子さんが交通事故にあってね。今日はわたしなの。亀田と申します。どうぞ宜しく」
洋一「どうも・・」
亀田「紺野さんのことは佐藤さんから色々聞いてるわよ」
洋一「え!?」
亀田「でも、わたしは佐藤さんと違ってお見合い写真は持ってきませんがね」
洋一「ハハ(苦笑い)」
亀田「その代わりといってはなんだけど、こんな変わった券をお持ちしました」
洋一「変わった券?」
亀田「そう、ここに行けば、あなたの望む幸せがあるかも・・・」
  と言って、ニヤリと笑う。
亀田「あなたの嫌いな退屈な日常、同じような毎日から抜け出せるかもよ」
洋一「そう、でも、今日はあいにく先約があるんでね。友達の結婚式の二次会によばれてるんだ」
亀田「でも、受け取っといて損はないよ。べつにこの券、期限は決まってないから」
  と言われ、洋一は亀田さんからチケットの入った封筒を渡される。
  洋一は封筒の中をちらりと見る。
亀田「残りものには福があるっていうけど、これはなるべく早い方がいいかもしれない」
洋一「ああそう・・ですか・・」
  亀田さんはニヤリと笑う。
  洋一は、いまいち亀田さんの発言の意図がつかめないまま、封筒をポケットに入れる。

〇船上(夜)
  結婚式の二次会である。
  船は臨海副都心を航行している。
  客は皆、スーツを着ている。
  花婿と花嫁の周りには人だかりが出来ている。
  洋一はシャンパンを片手に少し酔い、つかれた感じで人だかりから出て来る。
  そして、まだはしゃいでいる花婿と仲間たちを遠目に見る。
洋一「フー・・さすがに疲れたな・・」
  新郎新婦と客たちはワイワイ騒いでいる。
洋一「確かに、これも一つの幸せだよなぁ・・・少なくとも、今の俺には足りないものだ」
  そういって甲板にもたれ、体全体で浜風を感じている。
洋一「ああ、いい気持ちだぁ~」
  そして、船上から見える夜景を見る。
  すると、夜景の先の洋上に見たことのない都市の明かりが輝いているのに気づく。
洋一「へぇ~、こんな海の上に町があるんだぁ・・・ん、そう言えばあのおばちゃんがくれたチケットの場所も確か洋上だったな?」
  洋一はポケットから亀田さんがくれた封筒を出し、逆さに振る。
  すると、地図つきの派手なチケットが出てくる。
  きらびやかなチケットである。
  チケットには臨海に浮かぶ島の位置と『1年都市』というタイトルが大きく書いてある。
洋一「なんだ、この1年都市って・・・」
  きらびやかなチケットが妖しく光っている。
  竜宮の使いと呼ばれている太刀魚の絵が1年都市の字の上を這うように泳いでいる。
  チケットに印刷されている地図では、1年都市は洋上にあって、そこから光を放っている。
  まるで人を吸いこむかのように光を放っている。
  洋一はその光に目を細める。

〇1年都市へ通ずる桟橋の前の半円形の建物内(夜)
  半円形の形をした変わった部屋である。
  壁にはチケットにも描かれてた竜宮の使いの絵が大きく描かれている。
  天井には亀の絵が描いてある。
  ドアを開けると、机一つ隔てて男性の局員(37)がイスに座っている。
  洋一は部屋の隅に立った。
局員「ようこそ、1年都市へ」
  局員は洋一にイスに座るようすすめる。
洋一「1年都市って何ですか?」
局員「そう。ここは1年という期間の中で幸せを考える実験都市。他に、契約結婚都市ともいうがね」
洋一「契約結婚都市?」
局員「そう、契約を交わして、この先に浮かぶ1年都市で1年間の結婚生活を営んでもらう」
洋一「1年間の結婚生活?」
局員「そう。それに君は選ばれたのだよ」
洋一「その、なんかよくわからない実験に?」
局員「『実験』って言われたら聞こえが悪いが、でも、君が毎日感じている退屈な日常や変わり映えのない日々からの脱却、なにか新鮮な変化を求めたいんだろ?幸せを感じてみたいんだろ?違うかね?」
洋一「そりゃまぁ」
局員「ならここに来る価値はある」
洋一「でもなんで1年なんだ?なんでそんなことをするんだ?」
局員「そうだなぁ、君は永遠の愛というものを信じる方かね?」
洋一「永遠の愛?」
局員「そう、永遠の愛」
洋一「そんなこと急に言われても」
  局員は立ちあがり歩き、右往左往し始める。
局員「今、こうしている間にも、どこかで結婚するカップルもあれば、どこかで離婚するカップルもある」
洋一「・・・」
局員「愛は、熱にでもうかされたかのように、人の心を一途にするが、時間というものがやがてその熱を奪い、すくなくとも初めのような幸福な感覚はなくなる」
洋一「・・・」
局員「それはひとえに漠然とある時間がその熱をうばっていくのじゃないかと思う」
洋一「・・・」
局員「しかし、充実した時間は限りある時の中にある。その限りある時の中で幸せを求めたら、漠然と降りかかる時間がもたらす倦怠感はない筈だ。限りがあるからこそ必死になる。夢中になる。そうは思わないか?」
洋一「まぁ、確かにそういわれてみれば、そう思わないこともないが・・・」
  局員は小窓から見える洋上に浮かぶ1年都市の明かりを見る。
局員「人は漠然とした時間を生きるのではなく、限られた時間を燃焼するかのように生きた時こそ、幸せを強く感じるのではなかろうか?とまぁ、そんな研究を結婚という1つの幸せの象徴で試しているんだ」
洋一「なんか、突拍子もないこと試すんですね」
局員「そういうの、嫌いかね?」
洋一「嫌いっていうか、余りに唐突過ぎて」
局員「嫌いならこのまま帰ればいいし、構わないと思えるなら、あの1年都市に通じる桟橋を渡ればいい。それは君の自由だ」
洋一「(洟で笑う)フン・・でも、たった1年?」
局員「そうだ」
洋一「それじゃまるで夢を見ているみたいだ!」
局員「だからこそ、その1年を失いたくないと思い、1日1日を大切にする感情が生まれるんじゃないかなぁ」
洋一「研究というより、まるでママゴトですね」
局員「研究というものはそういうものだ。そういうたわいない発想から生まれるものほど、研究する価値があるんだよ」
洋一「そうなんですか」
局員「それに、これは理想探しの旅でもある。人の価値観をも変える新しい幸せのあり方探しだ」
洋一「一種の冒険ですね」
局員「別に強制はしない。行くも行かぬも君の自由だ。あの洋上に浮かぶ都市に君の求めている何かが、今までと違う変化が、新しい発見が、忘れられない出会いがあるかもしれない」
洋一「確かに。日常の生活を大きく変えるもの・・・それは出会いかもしれないと薄々思っていました」
局員「行ってみるかい」
  洋一はしばらく黙りこんで考える。
  局員はそんな洋一を観察している。
  そして、洋一はなにかを決断したかのように、
洋一「今までと違う日々が得られるなら、別に1年だって構わない」
局員「そう!君ならそういうと思った」
洋一「・・・」
局員「では、さっそくあの都市にある君の家に行こう」
洋一「今!?」
局員「勿論、そこに君の奥さんが君の来るのを待っている」
  局員は契約書を机にのせる。
  洋一はペンを持ちながら、
洋一「奥さん!?」
局員「ああ、君が面食いっていうことは良く知っているから大丈夫だよ。心配することはない。決して期待を裏切るようなことはないと思うよ」
  局員は自信たっぷりに言う。
洋一「随分、用意周到なんですね。まるで夢みたいだ」
  洋一は思わず笑ってしまう。
局員「そうかい。君がイヤといえば、あの都市で待っている人に断りの電話を入れるところだったが、そうならなくて良かった」
洋一「・・・」
  洋一は契約書にサインをする。
局員「ああ、それとこの結婚は戸籍にはのらない。あくまでも幸せ探しの臨床実験なんでね」
  洋一はペンを置く。
局員「さぁ、君の新しい家に、昨日とは違う新しい世界に案内するよ」
洋一(ナレーション)「人生の転機とはこうも突然やってくるものなのだろうか?」
  洋一は局員と一緒に部屋を出る。

〇1年都市内(夜)
  洋一と局員を乗せた車が桟橋を渡る。
  そこはもう1年都市。
  洋上に作られた実験都市で大きさは東京ドームぐらいである。
  実験に使われているマイホームが密集している。
  一見、閑静な住宅街だ。
  その一角に洋一を乗せた車が止まる。

〇同・洋一が住む家(夜)
  家も半円形の亀の甲羅のような変わった建物である。
  洋一は車から降りて、玄関へと向かう。
  そして、1度、局員の方をふりかえる。
  局員は車の中から頭をふって中に入るよう促す。
  洋一は、少し躊躇ってから呼び鈴を鳴らす。
  すると中から「ハーイ」という元気な声が聞こえる。
  そして、玄関のドアが開く。
  その瞬間、洋一は、ハッとした驚きの表情を浮かべる。
  ドアを開けて、洋一を出迎えたのは、会社のマドンナこと庭山まりあ、その人だった。
まりあ「おかえりなさい。っていうかよろしくがいいのかな。ね、紺野さん」
  とまりあは、悪びれることなく笑顔で言う。
洋一「(うめき声)アッ、ア、アア・・・」
  洋一は、只々驚くことしか出来ない。
  まりあはエプロン姿で常に笑顔である。
  洋一は、まりあのことを上から下へ、下から上へとなめまわすかのように、只々驚きながら眺める。
  そして思う。
洋一(ナレーション)「信じられるか、この光景・・俺の目の前にいるのは、あの庭山まりあだぞ」
まりあ「いやぁねぇ、そんなふうに見ないで下さい!係長さん」
  まりあはちょっと怒った様に可愛らしく言う。
洋一「あ、ごめん。っていうか、まさかこんな所で君に会えるなんて・・」
  洋一は全身の力が抜けた感じで言う。
まりあ「夢みたい?」
洋一「ああ」
まりあ「立ち話もなんだから、入って。今日からここがあなたの帰るべきおうち」
洋一「そうか」
まりあ「そして、わたしがあなたの奥さん」
  とまりあは自分の顔を指差して言う。
洋一「そうなんだ」
  洋一の顔がにやける。
まりあ「もっとも1年だけだけど」
洋一「1年だけ・・そうか、1年だけだったね」
まりあ「局員さんに聞いたとは思うけど、ここでのことは皆には秘密よ」
洋一「え、ああそうだね。研究だったね」
まりあ「さあ、どうぞ、ご飯の用意もちゃんと出来てますよ」
  まりあは微笑みながら洋一を招く。
  洋一は只々、まりあの微笑みに誘われるかのように部屋の中へ。
  その光景を車の中で局員は見てから、ニコリと微笑んで安心したかのように車を発進させる。

〇同・部屋
  まりあは、洋一の上着を受け取りハンガーにかけながら、
まりあ「このおうち、広さは2LDKだけど2人で住むには充分でしょ」  
洋一「ああ、別にかまわないよ」
まりあ「紺野さんのことどう呼んだらいい?」
洋一「え」
まりあ「紺野さん?それとも洋一さん?それとも・・係長さん?」
  と言って、クスッと笑う。
洋一「なんでもいいよ」
まりあ「じゃあ、洋一さんって呼ぶね。係長さんじゃあ、あんまりですものね」
  と言ってクスッと笑うまりあ。
洋一「そうだね」  
まりあ「わたしのことはなんて呼ぶ?」
  と言って、洋一がいつも呼ぶようなマネをして、声色を変えて、
まりあ「庭山くん」
  まりあは思わず吹き出して笑う。
まりあ「今の、洋一さんが会社でわたしのこと呼ぶときのマネ」
洋一「ああ、そうだっけ」
まりあ「わたしのことはまりあって呼んでくださいな」
洋一「まりあ」
まりあ「そう、まりあ」
洋一「わかったよ・・・まりあ」
  まりあは思わず嬉しそうに笑う。
  洋一はこの事実が信じられず、まりあの笑顔にもう骨抜き状態。
  まるで、まりあの魔法にかかったかのようだ。
まりあ「洋一さんって、プライベートでも物静かなんですか?」
洋一「え、いやぁ、まさか」
まりあ「そうですか?」
洋一「いやぁ、まさかこんな所でほんと君に会えるなんて思ってもみなかったから」
まりあ「でも、これは夢ではありませんよ。現実ですよ。現実にわたしはあなたの奥さんなんですよ。そりゃ1年っていう期間はありますけど・・・でもその1年を思いっきり楽しみましょう」
  と言いながら、まりあは胸の前で洋一の手をとり握り締めている。
  洋一はまりあを見つめる。
  段々愛おしさだけが募ってくる。
  洋一はいきなりまりあをギュッと抱きしめる。
  まりあも静かに洋一の背中に手を回す。

〇同・洋一の家の外観(夜)
  窓には洋一がまりあを抱きしめているシルエットが映る。
洋一(ナレーション)「・・こんな・・こんな出会いもあるんだなぁ」

〇会社内
洋一(ナレーション)「しかも彼女は職場の華。わが社のマドンナ。彼女が通ればいつも振りかえって、彼女の後姿しかみることの出来ないこの俺が・・」
  洋一はデスクワークをしている。
  そして、フッとまりあと目が合う。
  まりあは人目に気づかれぬように、洋一に微笑む。
洋一(ナレーション)「そんな彼女が俺の奥さんに!?」
  まりあのそばにうわさの高木課長(29)がやってくる。
洋一(ナレーション)「彼とは、ほんと只のうわさだったんだ・・・」
  まりあは高木課長と馴れ馴れしく談笑している。
  洋一はその姿に少し腹を立てている。
洋一(ナレーション)「昨日の今日だっていうのに、なんか妬ける・・」
  まりあと髙木課長は話が終わり離れる。
  まりあは洋一の視線に気づき微笑む。
洋一(ナレーション)「そもそも、なんで彼女はあの都市にいるんだ?」

〇1年都市へ通ずる桟橋の前の半円形の建物内(夜)
局員「もうそんなことが気になり始めたのかい」
洋一「誰だって気になるわ!彼女は会社のマドンナ。その彼女がこんなふざけた都市にいること自体おかしい」
局員「ふざけた都市とは聞き捨てならんが、まぁ一般常識をもっていればそう見えても仕方ないか」
洋一「なぜ、彼女はここにいるんだ?俺はそれが知りたい!」
局員「そうだなぁ。それに関しては余り答えたくはないが、まぁ答えられる範囲内で答えよう。本人に直接、根掘り葉掘り聞かれて、それが原因で別れのもとになっても困るしね」
洋一「じゃあ、彼女はなぜ?」
局員「彼女はこの都市の常連というか、お嫁さんなんだよ」
洋一「お嫁さん」
局員「あまりプライベートなことをいうのはなんだけど、彼女は二十歳の頃に1度結婚しているんだけどね。嫁ぎ先の人間関係やらでうまくいかず別れてしまったんだよ。でも、結婚願望は強く、いつまでも色あせることのない甘い結婚生活がおくれるのならしてみたいと、この期限付きの契約結婚に興味をもってね。この都市で暮らすことを決めたんだよ」
洋一「じゃあ、彼女はここは長いの?」
局員「長いと言うのはあまりいい言い方ではないが、彼女は我々の研究にかなり貢献しているよ」
洋一「そう」
局員「そりゃそうだ。彼女は君の会社のマドンナでもあるがこの1年都市でもマドンナだ。彼女と甘い生活をおくりたいという希望者はあとをたたない。それが例え1年という限られた時間でもね」
洋一「・・・」
局員「彼女は倦怠感のない、決して冷めることのない甘い結婚生活だけを楽しみたいのさ。それには1年という期間はうってつけだろ」
洋一「甘い部分だけとって生きる。そういうことか」
局員「いやな言い方をするね」
洋一「そうですか」
局員「君はそういうの嫌いかい?」
洋一「よくわからない」
局員「でも、期間がもたらす効力はそれだけではないよ」
洋一「・・・」
局員「君は近所の老夫婦に出会ったかい」
洋一「いえ」
局員「まぁいずれ出会うと思うが、君の近所に住む老夫婦はね、わざわざ離婚してこの都市にやってきて1年間の契約結婚をしたんだよ。なんでそんなことするのかわかるかい?」
洋一「いえ、わかりません」
局員「その老夫婦の夫はね、死を宣告されているんだよ。余命幾ばくもなくてね。それで老夫婦はこの1年都市にやって来た。なにを求めて?それは張りだよ!1年間という限られた期間を設けることによって、1年間は必ず生きていこうという張りを求めてやってきてるんだよ」
洋一「・・・」
局員「確かに一般の人から見たら、1年間の契約結婚都市なんてふざけた研究にしか見えないが、時間というものを強く意識して生きていくことが幸せにつながる人もいる。そういうことを研究しているんだよ」
洋一「・・・」
局員「まぁ、他にも人それぞれ、この都市の活用方法はあるがね。ここに入るとそういう幸せと時間の関係とかを色々学ばされるよ」
洋一「案外、深いんですね」
局員「まぁ、実際のところ深いのから浅いのまで色々あるがね。それより彼女は幸せな甘い結婚生活を楽しんでいる。あなたも1年間、甘い結婚生活を楽しんでください」
洋一「はい」
局員「その後にいろいろ聞かせてください。あなたにとってどういう1年だったのかを。期限付きだが彼女をめとれて別に不満はないでしょ?」
洋一「ない。ないどころか俺みたいな男が彼女を1年の期限付きでもめとることが出来るなんて、感謝したいぐらいだよ」
局員「なら、結婚生活をおうかして下さい」
洋一「そうします」
  洋一は少しスッキリした表情をしている。

〇同・洋一の家(夜)
  洋一は帰宅する。
洋一「ただいま」
まりあ「おかえりなさい」
  と言って、笑顔で洋一を迎える。
洋一(ナレーション)「この笑顔、これは嘘ではないんだ。この笑顔は間違いなく俺を幸せにする笑顔だ!」
  洋一はカバンをその場に置いて、まりあを抱きしめ、まりあの唇を貪るように吸い始める。
  まりあは突然のことで少しビックリした表情を浮かべる。
  そして、洋一の動きを静止させて、
まりあ「どうしたの急に。こんな所で」
洋一「まりあ」
  と言って、2人は部屋の中へと消えて行く。

〇街頭
  行き交う人々・・・
  いつも目に映る風景。
洋一(ナレーション)「心が満たされると町は今までと何ら変わりはないのに、全てがなにか違うようにさえ思える」

〇会社
  デスクワークをしている洋一。
  まりあは部長の席でなにやら仕事の話をしている。
洋一(ナレーション)「俺の求めていたものはこれだったのか!少なくとも今、俺は猛烈に幸せを感じている。まりあが与えてくれる幸せを心の底から感じている」
  まりあの後姿を見る洋一。

〇1年都市がよく見える場所(夜)
  フェンスに寄りかかりながら1年都市の明かりを見ている洋一。
洋一(ナレーション)「しかし、その幸せも1年という限りあるものだと思うと、なんかちょっぴり寂しさも募る・・・なんか苦しいぐらいだ」
  洋一は1年都市の明かりを見ながら、思わず独り言を呟く。
洋一「でも、ここからあの都市の明かりを見ていると、1年都市っていうのは夢じゃないんだなぁ~って、つくづく感じる・・・それに、彼女が俺の奥さんのせいか、なにかこう毎日が今までとは確かに違う。全く違う・・・こんな感情は、生まれてはじめてだ・・・でも、それがたった1年で終わってしまうかと思うと、この苦しさは・・・ほんと局員の言った通り1日1日を大切に思うよ」
  すると1人の男、牧村大悟(26)が洋一のそばにやってきて話かけてくる。
大悟「すみません。あなたはさっきからあの洋上に浮かぶ都市を眺めていますけど、あそこの住人なんですか?」
洋一「え?」
大悟「いえ、突然すみません。別に警戒することはないですよ。僕も以前あの都市にいましたから」
洋一「そうなんですか」
大悟「ええ、もっとも1年いることは出来ませんでしたが」
洋一「どうして?」
大悟「いえ、僕はあの都市に感情を弄ばれたような気がしてならなくてね。だから、逃げ出したんです」
洋一「そうですか」
大悟「でも、僕はあの都市に忘れ物を取りに行くつもりです」
洋一「忘れ物」
大悟「ええ、僕は永遠の愛を信じているから・・あなたは永遠の愛を信じますか?」
洋一「誰だって永遠の愛を信じると思いますよ。別れると思って結婚する奴はいないだろうから。少なくとも神前の前で永遠の愛を誓いますからね」
大悟「なんかあそこの局員みたいなことをいうんですね」
洋一「正直、わたしにも良くわからないんです。あの世界はとっても難しい世界だ」
大悟「でも。僕は自分の思念の為にあの都市に忘れ物を取りに行くつもりです」
洋一「忘れ物って」
大悟「僕にとっては大切なものです」
洋一「そうですか」
大悟「今思うと僕はあの都市に行くべきではなかったのかも知れない」
洋一「どうしてです?」
大悟「いえ、ただそう思うんです」
洋一「・・・」
大悟「こんなことを聞くのは失礼なんですが、あなた今まで結婚したことありますか?」
洋一「結婚ですか?ないです」
大悟「じゃあ、あそこが戸籍に残らないとはいえ初婚になるわけですね」
洋一「ええ」
大悟「初婚は辛いですよ」
洋一「なぜ?」
大悟「僕が初婚でしたから」
  と言って大悟は笑う。
大悟「ちょっと初対面なのにおしゃべりが過ぎましたね」
洋一「・・・」
大悟「ただ、あの場所で平常心をもって暮らせることが出来る人なんているのだろうかと、それがずっと疑問でしてね」
  洋一は静かに大悟を見つめた。
大悟「ついおしゃべりが過ぎましたね」
洋一「・・・」
大悟「僕は駄目でしたから。だから、もう1度確かめるつもりです」
洋一「・・・(なにを)」
大悟「それじゃあ、色々失礼しました」
  洋一は去って行く大悟を見送る
洋一「なんだったんだろう?」
  洋一は首をひねる。 

〇1年都市内の洋一の家(夜)
  洋一は着替えてソファに腰掛けながら
洋一「さっき変な人に話かけられたよ」
まりあ「変な人?」
洋一「ああ、以前ここにいた人だってさ・・ここに来なければよかったとかいってたかな」
まりあ「洋一さんはどう思ってる」
洋一「俺は来て良かったと思うよ。だって君が俺の奥さんなんだからね」
まりあ「クス」
  まりあは微笑みながら洋一の前に立つ。
  洋一はまりあを見上げながら、
洋一「今こうして面と向かっていても、やっぱりなんか信じられないよ」
  洋一は自分の前に立っているまりあの腰を抱きしめる。
  まりあは微笑み洋一の頭をなでる。
まりあ「ビールでも飲む?」
洋一「ああ」
  そして台所に向かう。
洋一「・・こんな夢のような生活が、たった1年だけかと思うと、ほんと寂しさがこみ上げてくるけど・・・あいつの言っていたことはこのことか?」 
  と独り言を呟く。
 
〇1年都市へ通ずる桟橋の前(夜)
  会社帰りの洋一が1年都市の桟橋に現れるなり、局員が慌てて話しかけてくる。
局員「紺野さん紺野さん!大変です!」
洋一「どうしました?」
局員「奥さんがさらわれました!」
洋一「さらわれた!?誰に?」
局員「ボートで1年都市に侵入した者がいるんです」
洋一「ボートで?」
洋一「で、まりあは今どこにいるんです!?」
局員「1年都市の岸壁に侵入した男と一緒にいます。しかし、男も興奮して拳銃をもっているらしくて手が出せないんです!」
洋一「そんな・・・。その侵入者に心当たりあるんですか?」
 局員は頷き、
局員「奥さんの前の旦那さんです。あなたと結婚する前の夫です。その男はまりあさんとは初婚だったんです」
洋一「初婚?」
局員「はい、初婚です。初婚の人は理想しか知りませんから。揉め事を起こす人の大半は初婚なんです。しかも若い人。若ければ若いほど揉め事を起こす確率も高くなるんです」
洋一「・・・僕も初婚ですよ」
局員「でも年齢をかさねてる。大人でしょ」
洋一(ナレーション)「転機は突然やってくるものだと思ったが、別に転機だけじゃない。災いも突然やってくることを俺は知った」
洋一「とにかく行きましょう!」
  洋一は局員と一緒に車に乗って1年都市へ向かう。

〇同・1年都市内の岸壁
  局員たちが大悟とまりあを遠回りで囲んでいる。
  大悟は左手でまりあの腕を掴み、右手には拳銃を握っている。
  局員たちはそれ以上、近づけない。
まりあ「わたしはあなたの言う通りにはならない」
大悟「なぜだ!なぜそんなにこの都市に固執するんだ!」
まりあ「わたしはここの生き方がしょうにあってるのよ」
大悟「嘘だ!ここは病原菌を生み出す巣窟だ!ここは、まやかしの世界だ!だから僕は君をこんな世界から連れ出す。その為に来たんだ!こんなまやかしの世界を出て、2人で外の世界で一緒に暮らそう」
まりあ「イヤよ!そんなこと勝手に決めないで!」
  そこへ、洋一がやってくる。
  洋一は局員たちで出来た人垣を越えてまりあと大悟の前に現れる。
洋一「まりあ!」
まりあ「洋一さん」
洋一「まりあ!」
大悟「・・・あんたか?・・あんたが今のまりあの旦那だったのか」
洋一「あなたは、たしか」
大悟「まさか、あんただったとはな」
洋一「忘れ物っていうのはこれか!?まりあのことか?」
大悟「そうだよ!俺は1年間の契約結婚なんて認めない。俺はまりあを永遠に愛せる。それなのに、そんなまりあが、あんたのような僕の知らない得体の知れない男と平気で結ばれることが許せないんだ!」
洋一「・・・」
大悟「ここで行なわれているそういうこと全てに強く怒りを感じるんだよ!」
まりあ「それを承知でやってきたのはあなたでしょ!それを今更」
大悟「なぜだ!なぜ君は肯定するんだ!?」
まりあ「わたしにはわたしの結婚観、幸福論があるのよ。それはあなたに強制されるものではないわ!わたしはあなたと何処へもいかない。ここがわたしの幸せになれる場所なのよ」
大悟「うそだ!そんなのうそだ!こんなまやかしの世界で幸せになれる筈がない!」
まりあ「わたしはもうあなたの妻じゃないのよ」
洋一「・・・」
大悟「・・・なら、しょうがない。ここに来るとき既に覚悟は決めてきた。外の世界で永遠の愛が得られないなら、今この場で永遠の愛を得る」
洋一「なにをする気だ!」
大悟「・・・ここで2人で死のう」
まりあ「バカなことはやめて!」
  大悟の右手がスローモーションでも見ているかのように動き、腰から上に拳銃が上がって行く。
  洋一はとっさに大悟の拳銃の握られた右手にしがみつく。
  そして、もみ合いの中、空に向かって一発、発砲される。
  まりあの悲鳴が聞こえる。
洋一「冗談はよせ!」
大悟「離せ!」
  2人のもつれ合いの間にまりあが大悟の腕から逃げる。
洋一「お前なんかに、まりあを奪われてたまるか!俺の幸せを奪われてたまるか!」
  洋一は拳銃を持った腕を離さず、そのまま海に拳銃もろとも大悟を引きずり落とそうとしている。
大悟「この手を離せ!お前の方こそ、僕の幸せを土足で踏みにじっているんだ!」
  もつれ合いの中、拳銃を引っ張る洋一の方へ丁度、銃口が向けられる。
  銃越しに洋一が、大悟の苦悶する表情を見た瞬間、銃口から弾丸が洋一に向けら
  れ発射される。それと同時に洋一は海に落ちる。
  海の中で弾丸はわき腹をかすめ、洋一はそのまま海に沈んでいく。
  その落ち方は手足を伸ばし体をUの字になった姿勢である。
  洋一は海の底に向かって、ゆっくりと落ちながら薄れゆく記憶の中で、局員たちの会話が幻のように聞こえてくる。
局員A『全く、こんなことになってしまうなんて』
局員B『これは秘密裏の実験だぞ。こんなことが表沙汰になってみろ』
局員C『そうだ、このことはあくまでも内密に処理しなければならない』
局員A『では、どうする?』
局員B『彼女には当分、この都市を離れてもらおう』
局員C『これ以上、揉め事が起こっては困るからな』
局員A『じゃあ、彼は?』
局員C『無論、彼にも今回のことは忘れてもらう』
局員B『そうだ、それがいい』
  その会話が聞こえなくなり、洋一は薄れゆく意識の中で自分の上を竜宮の使い(太刀魚)が泳いで行く姿を見る。

○船上の医務室(夜)
  窓から外の明かりが見える。
  友人の結婚式の二次会のパーティー。
  洋一の意識はぼんやりしている。
  洋一のスーツはびしょ濡れである。
友人A「洋一」
洋一「・・・ああ」
友人A「洋一」
  洋一は目を覚ます。
友人A「洋一・・やっと気がついたか」
  洋一は友人の顔を見てから、そして、辺りを見渡す。
洋一「・・・ここは?まりあは!」
  と言いながら、洋一はとっさに上半身を起こす。
友人A「まりあ?誰だそれ?」
洋一「まりあは無事なのか?」
友人A「なに言ってんだよ」
洋一「1年都市だよ、今まで俺がいた!」
友人A「ハァ?なんのことかさっぱりわからん」
  洋一はイラつきながら、
洋一「じゃあ、ここはどこだ!?」
友人A「医務室だよ、医務室。お前が酔っ払って海に落ちちまうから大変だったよ」
洋一「医務室・・1年都市のか?」
友人A「さっきからなに訳のわからないこと言ってんだよ!船の上の医務室!二次会の場所だよ」
洋一「二次会?」
友人A「そうだよ」
洋一「船の上」
友人A「やっと正気になったか」
洋一「・・・」
友人A「なんかだいぶ、うなされてたみたいだけど、悪い夢でもみたんじゃないのか」
洋一「ゆめ!」
友人A「お前、酒強くないくせに飲みすぎなんだよ」
洋一「ゆめ・・・」
友人A「まぁ、酒癖悪いのはいつものことだけど」
  洋一は我に帰る。
洋一「夢か・・・」
友人A「ちゃんと謝っとけよ。新郎新婦に・・・心配してたぞ」
洋一「・・・」
友人A「ほんと海に落ちたときはビックリしたよ。少しは場所をわきまえろよな!」
洋一「悪い・・・」
  洋一は額を押さえる。
洋一「なんだったんだろ、あれは・・夢か!?」
  洋一は疲労しきった顔をしている。

〇会社(あくる日)
  洋一はいつものように出勤し、デスクワークをしている。
  まりあもデスクワークをしている。
  そこへ、高木課長がやってきてなにやらまりあと談笑している。
  洋一はそんなまりあをチラリと見ながら、
洋一(ナレーション)「夢の中で俺のお嫁さんだったっていったら彼女、笑うだろうな」
  洋一は軽く笑みを浮かべる。
  そして、デスクワークをする。
  まりあも髙木と談笑しながら、チラリと洋一を見る。
  その視線はなにか意味ありげである。
  そして、視線を高木へ戻す。

〇お台場(臨海副都心)(夜)
  お台場の湾岸沿いをドライブしている洋一。
  助手席に伊藤恵理子(30)が乗っている。
洋一(ナレーション)「あれから俺は保険屋の佐藤さんのすすめでお見合いをした。彼女は伊藤恵理子」

〇回想・休憩室
  洋一に休憩室でお見合いをすすめている。
佐藤「×1だけど今までのお見合い候補の中じゃあ1番の美人だし、わたしはこれ以上の人、紹介出来ないよ」
  その写真には伊藤恵理子が写っている。

〇お台場(臨海副都心)(夜)
恵理子「(夜景が)とってもきれいね」
洋一「そうだね」
恵理子「紺野さんって、無口な方なんですか?」
  洋一の頭に1年都市で言われたまりあの言葉がよぎる。
まりあ(ナレーション)「洋一さんって、プライベートでも物静かなんですか?」
  洋一は恵理子を見て、
洋一「そんなことないと思うよ。普通だよ。
 今日ははじめてだし、少し緊張してるのかな」
恵理子「そうですか。わたしは逆に緊張するとおしゃべりになるんです」
洋一「・・別に緊張することないよ」
  洋一は車中から海を見ている。
洋一(ナレーション)「そうだ、確かここから1年都市の明かりが見えた筈だ」
  しかし、海に明かりはなく真っ暗である。
恵理子「お台場に良く来るんですか?」
洋一「え、いや、あんまり来ることはないんだけどね。なんだか、なんとなく行きたくなってね」
洋一(ナレーション)「ここに夢があった・・夢を見ていたところだ。とっても不思議な夢だった・・冴えない男の御伽噺のような夢だ・・・」
恵理子「なにかいいました?」
洋一「いや、なんでもないですよ」
  洋一は車を走らせている。
  そして、しばらく湾岸沿いを走っている。
  風を受け走っている。
  そして、しばらく走ると洋一は、遠くに夢で見た1年都市への入り口の半円形の建物を発見する。
洋一「あ!」
  洋一は急に車を止める。
恵理子「どうかしたんですか?」
  洋一は、慌てて車を降りて、その半円形の建物を目を細めて見る。
洋一「あの建物は、そして・・・1年都市」
  建物の向こうに都市の明かりが見える。
洋一「そうか、浮き島だったのか?」
  そこへ、慌てて恵理子がやってくる。
恵理子「どうかしたのですか?」
  洋一には恵理子の声は聞こえず自問自答している。
洋一「なら、あれは夢!?それとも現実?」
恵理子「どうしたんですか、いったい?」
  恵理子は洋一が見ている視線の方を見て
恵理子「あの明かりがなにか?」
  洋一は恵理子の方を向いて尋ねる。
洋一「君は、永遠の愛って信じる?」

               END


赤字は修正箇所。自分なりに加筆修正、大幅入れ替えもあります。
青字は自分でも迷ったところです。このままでいいのでは?など。


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