ひたひたと (野沢尚)

「一切の書かれたもののうち、私はただ、その人がその血をもって書かれたもののみを愛する。

血をもって書け。

君は、血が精神であることを知るだろう。」

                            ニーチェ

単調な日々が続くと

 

隙を見て顔を覗けようとする

 

自分の中の何かを誤魔化すために

 

血を持って書かれたものを読まなければならない

 

 

 

野沢尚は「ひたひたと」を出版した2004年

 

44歳のとき首を吊った

 

心の中で暴れる攻撃性を

 

自分の作品の登場人物に投影して

 

何度も殺し、

 

殺されたはず

 

 

 

それでも最終的に

 

それを実際に自分に向けてしまった

 

 

 

夫が実は

 

幼少期に自分を陵辱し

 

以来苦しまされ続けた

 

小児性愛犯罪者だった・・

 

 

 

というだけでも

 

十分ショッキングなのに

 

そこからもうひと押し、

 

ふた押しされる

 

 

 

読んでいて鳥肌が立つ

 

ガーン

 

本当に野沢尚の血で書かれたかのような

 

エピソードは読み終えた後も当分頭から消えない

 

 

 

人間、

 

女性の屈折した論理の秘密が

 

リアルに寒気を感じさせる

 

 

 

野沢尚の新作はもう出ることはない

 

 

 

それでも私はこれからも

 

氏の作品を本棚から探し

 

自分の何かを誤魔化そうとするに違いない

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?