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イスラエル-ハマスの軍事衝突と米軍の抑止力

はじめに


ロシア-ウクライナ戦争

2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻を開始し、米軍は黒海及びポーランド等の上空にAWACSや情報収集機を展開させている。また、不測の事態に応じて、ヨーロッパ軍隷下の米陸軍部隊の一部を東欧のNATO諸国に前方展開している。

ハマスイスラエルの軍事衝突

10月7日にハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエルはその後空爆と地上侵攻を開始した。そのため地域の軍事バランスは悪化し、イランとイラン革命防衛隊の支援を受けた複数の武装勢力がイスラエルや紅海、アデン湾で船舶を攻撃している。

東シナ海での中国の侵略

東アジアでは、2023年に10月末に南シナ海を飛行中のB-52に対し、中国空軍のJ-11戦闘機が威嚇行為を行った。

また、10月22日、フィリピンが領有するセカンド・トーマス礁への補給任務を中国海警局の船舶に妨害された。その後11月末からフィリピンの排他的経済水域上にあり、中国が実効支配しているスプラトリー礁周辺に130隻の海上民兵が停泊している状態である。

ベネズエラによるガイアナ侵攻の可能性

加えて、12月3日に南米ベネズエラは、ガイアナとの国境に軍を集結させつつ、ガイアナの領土の半分以上をベネズエラ領土だと主張し国民投票を実施した。結果は95%の賛成となった。ガイアナはベネズエラに対して軍事的に大きく劣勢であり、防衛協定を結んでいるブラジル、アメリカ等の介入が必要とされる状況である。

米軍の抑止力と台湾有事

台湾有事において、日米の優位性は現状維持が目的であるという点と、世界に展開する米軍と日本の戦力では中国を上回っている点である。そのため、防衛省のシンクタンクである防衛研究所は、長期戦に持ち込むことで世界に展開している米軍を西太平洋に集中させることができ、かつ可能性が高まると分析している。

そのため、米軍の展開能力は、台湾有事への対応能力、戦力の余剰を考えるうえで非常に重要であると考える。

本記事では、イスラエルとハマスの軍事衝突に伴って、米軍の海空軍戦力がどのように展開したかついて記す。

イスラエルとハマスの軍事衝突

2023年10月7日にガザ地区からイスラエル領内に対し、数千発のロケット弾攻撃を行い、潜伏工作員がモーターパラグライダー部隊を誘導し、イスラエル領内に侵入した。
その後、初めのハマス等の攻撃でイスラエル領内にいた人々が少なくとも数百名が死亡し、数十名が拉致された。

その後、イスラエル軍は3週間近く空爆を行い、10月29日ごろから北部に対して本格的な地上侵攻を開始した。

 2023/10/29 @War Mapperより

米軍の展開

その中で、アメリカ軍は複数の部隊を派遣し、周辺国に対する抑止を行っている。部隊の展開の主な時系列を記録する。

2023/10/08 GRFCSGが東地中海に到着

空母ジェラルド・R・フォード(CVN78)、ミサイル巡洋艦ノルマンディー(CG60)、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦トマスハドナー(DDG116)、ラメージ(DDG61)、カーニー(DDG64)、ルーズベルト(DDG80)が東地中海に到着。

2023/10/10 Fleet and Marine Tracker

2023/10/13 354th Fighter Squadron のA-10がCENTCOMのAORに到着

米中央軍の公式Xアカウントで、第354戦闘航空団のA-10が米中央軍の責任範囲に到着とポスト。

2023/10/14 494th Expeditionary Figther SquadronのF-15EがCENTCOMのAORに到着

同じく米中央軍の公式Xアカウントが、第494遠征戦闘航空団のF-15Eが米中央軍の責任範囲に到着とポスト。

2023/11/21 DODがTHAADとパトリオットを中東に追加配備と発表

米国防総省はTHAADとパトリオットの各1個大隊を中東に配備すると発表した。ハマスのイスラエル攻撃、イスラエルの反撃を受けて地域の米軍への攻撃が増加していることが理由である。

2023/10/21 ロイターより

2023/11/04 ドワイド・D・アイゼンハワーCSGが東地中海に到着

ニミッツ級空母ドワイド・D・アイゼンハワー(CVN69)、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦(CG58)、アーレイバーク級ミサイル巡洋艦メイソン(DDG87)、グレーブリー(DDG107)が東地中海に到着した。

2023/11/06 Marine and Fleet Tracker

2023/11/05 オハイオ級原潜がCENTCOMのAORに到着

同じく米中央軍の公式Xアカウントが、オハイオ級原潜が米中央軍の責任範囲に到着とポスト。オハイオ級原潜は、18隻運用されており1番艦から4番艦までは巡航ミサイル原潜、5番艦から18番艦までは戦略ミサイル原潜である。巡航ミサイル原潜であればVLS 22基からトマホークを発射することができる。今回、何番艦が展開したかは不明。

2023/12/04 現在の展開状況

ギリシャにジェラルド・R・フォードCSGが停泊している。また東地中海にサンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦(LPD-19)とマウント・ホイットニー揚陸指揮艦(LCC-20)、紅海にバターンARG、ペルシャ湾にドワイド・D・アイゼンハワーCSGが展開している。

2023/12/04 Fleet and Mrarine Traker 

まとめ

米軍は現在、中東に2個CSGと1個ARG、西太平洋に2個CSGと1個ARGを展開し、各脅威に対し抑止あるいは反撃を行っている。

ロシアウクライナ戦争、ハマスイスラエル紛争が長引くことで米空母及び、不足している攻撃原潜等の展開サイクルや米軍の兵站能力は徐々に圧迫されていると考えられる。

図は原子力空母と通常動力空母の整備サイクルの比較

2024年から中距離ミサイルを装備したマルチドメインタスクフォースを西太平洋に配備すると答えた。この部隊は、機動展開することが想定されているが、これは緊急的に空母打撃群や遠征打撃群等を展開できない場合に、航空機や船舶を通じてグアムからより台湾、中国に近いフィリピンあるいは日本のいづれかに展開し、抑止を行うことが推測できる。

西太平洋における米軍の優位性が崩れつつある一方で、世界では米軍の展開を必要とする状況が増えている現状において、強大なアメリカの海軍力を一部代替できる、日米の更なる戦力の配備が必要となってくるだろう。

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