煙突

かの町に住むと決めたものは
重ねた親指を首にあてがい
喉を潰す
それから 話すことなく
目を交わすことなく
それこそが幸福であると知る静けさの内で
一生を終える
この無音の町に
長く暮らした男が ただ一度だけ
煙突を登り
頂上で灯りをかかげたことがある
しばらくの後
眼下の暗闇に
いくつか小さな火が点るのを認めたとき
男は両手で顔を覆い
音を立てずに泣いたという

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