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・・・・・・複雑に交差する迷路のような道を歩いていれば、蝟集する家々の屋根の向こうから夜空へ…
・・・・・・町のはずれに大きな煙草工場があって、住人たちが眠りについた夜明けの通りは、帰路へ…
・・・・・・夕陽の沈んだ空から色が失せていき、街路に落ちた墨色の影が濃くなるころ、おまえ…
明くれば夜の様をかたり 暮るれば明くるを慕ひて 此月日頃千歳をすぐるよりも久し …
人通りの絶えた真夜中の橋を、女が歩いている。 歩道に沿って点々と降る街灯に、ヒールサ…
人への期待を欠片ほどももてなくなったとき、おまえは最後に半透明の浴室をおとずれるだろう…
もう何年も、枕の下から子供が笑っている。 男のものとも女のものともしれない、いかにも楽しげにはしゃぐ嬌声が響いて、それを意識の端で耳にしながら、毎夜眠りに落ちる。いったい実在するのか夢の底から湧いて出るのか、たいてい目が覚めたときには忘れているが、かすかに声の余韻の残る日があっても刻々の忙しさに流されてすぐに忘れている。そうしてまた夜が来て、目を閉じて、暗闇のなかで聴き慣れた声に耳を澄ませる。 子供がほしいとおもったことはない。長く付き合った恋人と数年前に別れてからは、
きりなく膨張しつづける乾いた街の、かえりみられない路地裏の一角、くたびれた労働者たちが…
数世紀前に打ち棄てられたままだという石造りの聖堂にいつからか住みついた老人は毎夜祈るの…