読書記録R6-47『図書館は生きている』

著者 パク・キスク
訳者 柳美佐
原書房2023年11月第1刷

訳者あとがきから(抜粋)
本書は、アメリカの公共図書館で司書として勤めた著者のエッセイ。
司書目線で語る図書館の日常と世界中の図書館にまつわる興味深いエピソードの数々は、新たな視点で図書館を見つめるきっかけを与えてくれる。

新聞の読書欄で紹介されていたこの本。
図書館を毎週のように利用している当方としては読むべきだと予約した1冊。

著者は韓国の淑明女子大学文献情報学科を卒業後、アメリカのシラキュース大学院に留学し、修士号を取得。帰国後、IT開発者として働き、再度渡米。
カリフォルニア州オレンジカウンティの公共図書館で勤務。
著者はまた、世界各地の図書館を訪ねて旅行を楽しむ図書館愛好家でもある。
「図書館旅行者」のハンドルネームでSNS発信していたのが書籍編集者の目に留まり、本書が刊行された。

世界各地の図書館を訪ねる旅行?
何と楽しそうなんだろう…

赤ちゃんからお年寄りまで集う公共図書館は、たくさんの人生が交差する場所。いまや本を貸し出すだけでなく、楽器を貸し出し、お葬式をあげる図書館も。
(え?本当?)
長年、アメリカで司書を務めた著者が見てきた図書館の愛しい日常と、世界の図書館をめぐる25のエピソード。
(本書見返しページより)

目次
はじめに
司書は元祖検索エンジン
請求番号にまつわる裏話
読んでいない本について司書がかたる方法
傷んだ本を見ると
蔵書廃棄の苦しみ
見向きもされない本のために
図書館、本、言葉、思想を支える人たち
図書館で老いる楽しみ
寄る辺ない人たちのオアシス
騒がしい図書館
図書館をつくる建築家たちへ
ニ十世紀きっての図書館オタクの夢
図書館で使わなくなった言葉
検閲ではなく選定を
韓国人司書の喜びと悲しみ
気まぐれな情報ハンターの趣味生活
〈ブックマークすべきデジタル図書館〉
アナログ図書館の反撃
貸出カードのロマンと憂うつ
スティーブン・キングも恐れた図書館警察
図書館ねこの存在
ビールを記録する図書館
楽器たちの図書館
古代図書館の遺跡で発見した平行線
図書館旅行の理由
〈あなたの旅行計画に加えるべき図書館〉
あとがき
〈図書館旅行者の書斎〉
訳者あとがき

「読んでいない本について司書が語る方法」では面白い本を紹介している。
ピエール・バイエールの『読んでいない本について堂々と語る方法』(2016年、ちくま学芸文庫)
この中でロベール・ムジールの小説『特性のない男』に司書として登場する男の言葉を引用する。「有能な司書になる秘訣は、自分が管理する文献について、書名と目次以外は決して読まないことだ…内容にまで立ち入っては、司書として失格です!…そういう人間は、絶対に全体を見晴らすことはできないでしょう!」

〈あなたの旅行計画に加えるべき図書館〉には日本の図書館は記されていない。
訳者あとがきに日本の図書館事情に触れている。

また訳者は同志社大学嘱託講師。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。
京都市中央図書館の司書への感謝が述べられているのが印象的。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?