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怪虫・怪獣

京都の夏は蒸し暑く、冬は底冷え。故に生き物がおかしくなる。今回は2種の生き物を紹介する。

1.松ヶ崎虫

松ヶ崎虫は非常に獰猛である。見た目はトンボと似ている。細長い体に4枚の羽が生えている。しかし、飛び方が違う。トンボは体を横にして飛ぶが、松ヶ崎虫は縦のまま上下に動く。気持ち悪い。トンボよりも竹とんぼである。
一見無害に思える。そんなわけない。変な動きには必ず理由がある。トンボと同じ動きならトンボでいい。松ヶ崎虫の上下運動、それは他生物の脳天突き刺しに特化した動きなのである。脳天に突き刺さって何をするのか、何もしないのだ。怖い。生きるためにする行動じゃない。ただの好奇心で脳天に刺さってくるのだ。突き刺さったら松ヶ崎虫自身は死ぬ。捨て身の謎行動だ。
刺された人間は一度震える。その後も年に数回震えるようになる。しかし、ブルっと一回なるだけなので松ヶ崎虫のせいだなんて誰も気づかない___


2.北山チワワ

北山はモダンでおしゃれな街並みが人気の高級住宅街です。家ですか?というサイズの家やいかにも防犯カメラな防犯カメラ、家を囲うド高い壁がある。そんな北山で生まれた北山チワワの出生秘話を話す。

北山に住むマダムたちは好奇心旺盛。この世の犬という犬、全ての犬をその財力をもって手中におさめてきたため新しい犬をみてみたいと思うようになった。既存の全てを知った人間が何をするか、そんなの決まっている。新しいのを自分で作るのだ。マダムの未知なる犬への挑戦である。
彼女らは小さいが骨は丈夫で番犬に向く性格の犬を求めていた。さらに先住犬たちに虐められないようなカリスマ性のある犬。おまけで人間の言葉を話す犬を育てることを目標とした。
彼女らは生き物への愛とリスペクトがある。だから無理な交配はしない。あくまでも自然に、ナチュラル。やったことは熱心な教育ママと同じようなことだ。胎教から始まり、うまれてからは低脂質高タンパクなドッグフードを食べさせ、隙あらばドーベルマンの動画をみせる。寝ている時は深夜ラジオをきかせ、人間の言葉を常に近くに。その他諸々の努力によりチワワは屈強になった。マッチョなチワワ(マッチョワワ)になった。しかし、チワワも人と同じ。チワワたちは生活に息苦しさを感じていた。
反抗期の始まりである。チワワたちは北山を飛び出し毎晩鴨川デルタでチル。横綱でドッグフード、朝帰り。マダムたちにはどうすることもできなかった。ただ反抗期が終わるのを待つだけ。
転機が訪れた。毎晩うるさいと近所の人間がSNSに拡散し、ニュースにも取り上げられた。「北山チワワ」は全国に名を轟かせ、それと同時に北山のイメージを悪くした。チワワたちは反抗期でも北山のことが大好きだった。だから自分たちのせいで北山が悪く言われることが耐へられなかった。更生ははやかった。2日で昼夜逆転をなおし、3日目からは毎朝ゴミ拾いをするようになった。4日目には落とし物を持ち主に返すボランティアをはじめ、5日目にはトリリンガル(犬・日・英)であることを活かして外国人観光客の通訳を積極的に行った。6日目には自身の経験を活かし、アニマルセラピーで非行少年たちの心のケアをはじめた。そして18時には家に帰り、家族との時間を大切にすることも忘れなかった。
今では「北山チワワ」は実際にみることのできない伝説である。しかし、今も北山にいるチワワにその血が流れていることは間違いない。

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