服に込められた思い

まえがき

専門外のことを話します。みんなが興味ないことを話します。ですが、少しでも興味を持ってくれたら幸いです。

本題

「GUCCIというブランドの名前を聞いたり、実際に見たり、持っている人はいますか?」この質問に対して、ほぼすべての人が「はい」と答えると思います。確かに、最近では、ベルトやスニーカーなどの小物類やTシャツなど着ている人が多いですよね。また、ここで質問です。「実際に、映像や写真でGUCCIのコレクションを見たことがある人はいますか?」この質問に対して、自分が予測する答えは半分以上の人が「いいえ」だと思います。また、そこに重ねて質問です。「GUCCIのデザイナーは誰かわかりますか?」この質問に対しては、ほとんどの人が「いいえ」と答えるでしょう。別に、この質問を通して、自分の知識量を自慢してひけらかしたり、それを知らない人を馬鹿にするつもりはまったくありません。ですが、最近思うのです。多分、GUCCIのアイテムをこれ見よがしにつけている人の多くはこの事実を知らないんじゃないかと。そして、このことにもの淋しさと、少しの憤りを感じるわけです。ファッションというのは、興味深い表現方法で、ビジネスの上に表現が成り立つという結構珍しいスタイルだと思います。分かりやすくいうと、デザインとアートの中間のようなモノだと自分は思っています。GUCCIのデザイナーであるアレッサンドロ・ミケーレは、2020春夏のプレタポルテコレクションで「この世界に入ってからの25年間、ぼくの仕事はマーケティングだった」と言いました。だからこそ、ミケーレの狙いは成功しているといっていいでしょう。でも、素直にもったいないと思いませんか?確かに、みんなが手に取り、マーケティングの面では効果があったでしょう。しかし、それは、ファッションではなく、自分のステータスを示すためのツールになってはいませんか?実際、自分の価値を高く見せるためにそのようなラグジュアリーブランドのもので身を固めるという考え方を持っている人は多いと思うし、その考えを僕は否定をしませんが、ファッションの在り方からは決定的なズレが生じていると感じています。実は、コレクションにはシーズンごとにテーマが決められているんです。先ほど紹介したGUCCIの2020春夏プレタポルテコレクションのテーマは、「GUCCI ORGASMIQUE」で、GUCCIというブランドを新たなフェーズに上がっていくためのキーワードとして掲げていました。そのようなテーマを表現するためにデザイナーはコレクションを考えています。だからこそ、デザイナーがどのような思いで、何を意図し、その服、アクセサリー、小物が作られているのか理解して、身にまとうことが自分の価値を上げる以前に、自分を着飾っているものの価値を正しく認識できるのではないかと思います。

あとがき

値段が高い、低いの話ではなく、それよりもっと高い次元で自分たちが着るものを吟味してほしいと思って、この話を書きました。これには、自分が思っているもどかしさや願望が詰まっています。別に、誰かを悪者にしようと思っているわけではないんです。知ってほしい。ただ、それだけなんです。

ちなみに、GUCCIを事例に出したのは、分かりやすいかな?と思っただけで、嫌いなわけではありません。むしろ、アレッサンドロ・ミケーレが表現するものは、何かしら自分たちの心に訴えかけてくるものがあり、尊敬するクリエイションが多くあります。

最後に、ファッションというのは人間にとって一番身近にある、デザインであり、アートでもあります。その力を少しでも感じとる手助けができたら幸いです。

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