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よるがあけたら


タクシーを降りると目の前を猫が横切った。よくよく見ると1匹ではない。黒、黒、三毛。3匹の猫たちは真っ直ぐと列を作り、どこかに行ってしまった。きっと家路に着くのだろう。私も家に帰らなければと思うが、胃が寂しいと言った。コンビニに行って適当に菓子パンを買った。寂しさを埋める道具はなんでも良かった。適当な買い物のはずなのに、10分かかった。
赤に変わってしまった信号に気づかないふりをして、走った。足の底が地面についた時に筋肉が硬直して、何かが震えて、そこではじめて自分の身体を意識した。
家に帰って菓子パンを身体に流し込んだ。胃は寂しくなくなったけど、私は寂しいままだった。そこではじめて、本当にはじめて、誰かに会いたくなった。孤独な夜に誰かに会いたくなることなんてなかったのに。


誰も私のことを知らない場所に行きたい。ぼうっと水の音を聞いて、好きな本を読んで、言葉を連ねたい。猫を愛でられたら更に良い。


誰かに会いたいのに、誰にも会いたくないなんてとんだ矛盾だ。笑うー。

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