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【ライブレポ】ヒグチアイHIGUCHIAIband one-man live 2023[ 産 声 ]​​渋谷大和田総合センター さくらホール

暗くなった会場に響く鼓動の音。
ステージにサポートメンバーが現れ、最後にヒグチアイ登場。

ゆったりと曲が始まる。
静まり返った会場に響くイントロに息を吞む。
ライブの幕開けを飾るのは、
聞いてる。

軽やかなリズムを刻み、縁を歌い始めると、「立ってみる?」とヒグチに促された観客たちが、それを待ち望んでいたように次々と立ち上がり、リズムに合わせて手拍子を打つ。
続くランチタイムラバー。
明るくポップなメロディーに、身体を揺らし心も踊る。
そして、最初のグーでは歌詞に描かれているように、握った拳を掲げる。と同時に、さらに感情に熱を帯びていくのが自分でもわかる。

こういうライブをずっとしたかった。
憧れていた。
そう話すと周りから「似合わない」「そういう雰囲気じゃない」って言われる。
そういう他人の求めるところに寄っていってしまう自分がいて。
でも、そういうのやめよう!自分のやりたいようにしよう!って決めた。

そのヒグチの言葉に、会場から大きな拍手が沸く。
「お前ら、最高だな!!」と思わず口からこぼれた言葉に、「お前らとか言うの…苦手だった。皆さん、ね。」少し照れくさそうに言い直す彼女。

こういうやり取りも、もしかしたら過去にはあったのかもしれないが、コロナ禍真っ最中にヒグチ沼にはまった私は、それ以前のヒグチアイのライブがどういう様子だったのか、知らない。
勢いよく本音が漏れる彼女の様子が、新鮮で、微笑ましく可愛らしい。

大阪公演で「やりたい、けど出来ない。やりたい、けど出来ない…」「でもそれを何回も繰り返して、やっと、出来る!ってなった」と話していたヒグチ。
その葛藤を繰り返して、彼女の中で掴んだ、出来るのタイミング。
彼女がずっとやりたいと考えていたものがカタチになったそれが、今回のツアー「産声」で。

ステージの彼女と、静かに1対1で対峙するようなじわじわと心に迫るものがあるこれまでのライブも、いつも何にも代えがたい感情をくれる。ヒグチアイの紡ぎ出す音楽を堪能出来るライブのカタチは、それだなとも思う。
今回はアーティスト、ヒグチアイとしてステージに立ついつものライブよりも、素に近い樋口愛が垣間見れるツアーだったのではないか。
彼女がとびきりの笑顔をみせて楽しんでいる姿を、実妹のひぐちけいがニコニコと嬉しそうに見守る。その姿をみて、ふとそんなことを思った。

コロナ禍で生まれた楽曲、mmm(ハミング)。
彼女が無力感に苛まれながら、どんな思いでこの楽曲を作り出したのだろう。あなたがいないと鳴らない音楽。まさに、そうだ。
少しアップテンポにアレンジ仕直されたこの曲に、ハミングではなく、ラララと声を出して歌えたこと。それにまた胸が熱くなる。

そして高々と掲げたタオルと共にアンセム、祈りが会場中に響き渡る。
ステージ上のヒグチとサポートメンバー、会場の観客皆が一緒に作り上げる一体感。

こうして幸せに満ち溢れた空気に包まれたライブは、沸き立った気持ちを抱えたまま、あっという間に終わりの時間を迎える。
余韻にいつまでも浸っていたい。
名残惜しさでいっぱいになった。

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聞いてる

ランチタイムラバー
最初のグー
猛暑です
ラジオ体操
わたしのしあわせ
悪魔の子
前線
黒い影
まっさらな大地
劇場
mmm
祈り
an.
この退屈な日々を(新曲)
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HIGUCHIAI band one-man live 2023[ 産 声 ]​6.11(日)渋谷大和田総合センター さくらホール

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