百合の咲く庭

不思議なことがある。
私の小さな庭に、三年前から百合が咲くようになった。
白い百合は自然にどんどん増え、
肥料もあげていないのに、
今では四十本の百合が庭を埋め尽くし、
窓からはすでに百合しか見えなくなった。
昨日、その白い百合の庭から
鍋を叩く音がした。
私の部屋は二階なのだが、
暗い庭の片隅で、誰かがずっと鍋をたたいていた。
それは長いこと続いた。
そのあとでおばあさんの咳が聞こえた。
たぶん、そのおばあさんは百合が好きなのだろう。
夜の不思議な演奏だった。
もうすぐ8月がやってくる。