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ミルグラム考察 バイアス その❶

バイアス

バイアス(英: bias、中: 偏誤)とは
偏り、かさ上げ、または斜めのこと。(Wikipedia)

偏り

偏り 
- 統計学の用語。母集団の要素が標本として平等に選ばれていない、または推定すべき量を何らかの理由で高く、または低く推定しすぎていること。
サンプリングバイアス 
- 不適切な標本抽出によって、母集団を代表しない特定の性質のデータがまぎれこんでいること。
偏見 
- 偏った見方のこと(用例:「あの人の意見には新聞は不正確だというバイアスがかかっている」)。

斜め

糸が斜めに走っていること。「バイアス織」、「バイアス編み」(この場合「バイヤス」とも)。
斜めに裁つこと。「バイアス裁ち」。
バイアステープの略。
空気入りタイヤで構造材が斜めに入っている「バイアスタイヤ」のこと(タイヤ#構造と使用される材質)。
バイアス
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英語:bias

傾向、偏向、先入観、データ等の偏り、思考や判断に特定の偏りをもたらす思い込み要因、得られる情報が偏っていることによる認識の歪み、といった意味で用いられる語。

バイアスは英語の bias をそのまま日本語に導入した語であり、英語の bias も日本語と同様「傾向」「先入観」など文脈によってさまざまな意味合いで用いられる。

統計的手法を用いる調査においては、調査方法や調査結果の抽出方法・解釈などに起因する「データの偏り」がバイアスと呼ばれる。バイアスが含まれている可能性を顧慮しないとデータの解釈を見誤る場合があり得る。

「認知バイアス」は心理学の用語で、人間の判断・認知・意思決定などにしばしば紛れ込む恣意的な傾向を指す。
たとえば、災害が生じ危険が身に迫っている状況下において、多くの人は何となく「自分は助かるだろう」と思えてしまう。
結果として逃げ遅れ命を落とすような事態につながる。この「自分は大丈夫」と考える認知バイアスは特に「正常性バイアス」と呼ばれる。

学術的な文脈でなくても、先入観にとらわれている、偏見が先行している、色眼鏡で見る、というような意味合いで「バイアスがかかっている」と表現される場合が多々ある。たとえば2010年代後半の安倍政権においては「安倍信者」と罵られる人々や「アベノセイダーズ」と揶揄される人々があるが、これらの呼称には「安倍首相が最高と信じている」「安倍首相が全ての元凶と信じている」というバイアスがかかっている含みがあるともいえる。

https://kotobank.jp/word/バイアス-7199

テープ

バイアステープとは?

バイアステープは裁縫に使う、生地の織り・布目に対し角度を45度傾けて細いテープ状に切った布。
伸縮性の無い布でも、斜めに使う事で伸縮や曲げの自由度が上がり、縁取りや当て布に向く。
好みの布で自作出来るが、四角い生地を斜めに細長く切って作る為、長さがそろわずつなぎ足す必要がある。 
製品では、あらかじめ布を斜めに織るため長尺生産が可能になっている。
ただし、柄や色味をそろえるのが困難である。Tシャツのリメイクなどの時は、使うのが困難と思われる。

手芸でいうバイアス(英語表記でbias)は 
生地の斜めを指します。

バイアステープ以外に他のテープの可能性はあり得ると思います。
そこについてはコトコちゃんの考察に繋げます。

アンコンシャス・バイアス

1. 
アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)とは?

アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)とは、自分自身は気づいていない「ものの見方やとらえ方の歪みや偏り」をいいます。
アンコンシャス・バイアスは、その人の過去の経験や知識、価値観、信念をベースに認知や判断を自動的に行い、何気ない発言や行動として現れます。自分自身では意識しづらく、ゆがみや偏りがあるとは認識していないため、「無意識の偏見」と呼ばれます。

アンコンシャス・バイアスは些細な言動や何気ない行為に含まれており、「よくあること」「気にする人のほどの事ではない」と見過ごされがちです。しかし、そのまま放置すると、社員のモチベーション低下やハラスメントの増加、職場のコミュニケーション不全、ひいては組織や個人のパフォーマンス低下など様々な弊害を生みます。

そのため、アンコンシャス・バイアスの知識や対処法を身につけることは、多様な社員をマネジメントする上での必須要件として位置づけられ、すでに様々な企業がトレーニングを実施しています。Googleやフェイスブック、マイクロソフトなどの大手外資系企業が先陣を切って導入し、現在では金融・証券、IT、製薬、流通、土木、製造など、あらゆる業種の日本企業が、アンコンシャス・バイアス研修を導入しています。

2. アンコンシャス・バイアスは、誰もが持っている

皆さんは、次のような職業にどんなイメージを持っていますか。
年齢は?見た感じは?性格は?どのような人を想像しますか?

それぞれの職業から、すぐに「この職業の人はきっとこうだろう」と、ステレオタイプ的なイメージを思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。脳は瞬時に物事を無意識に紐づけて素早く理解しようとします。アンコンシャス・バイアスは高速思考ともいえます。大量の情報を処理し、すばやく行動するためには欠かせないものです。アンコンシャス・バイアスが機能することで大枠で物事を理解したり判断することが可能となります。アンコンシャス・バイアスは誰もが持っているもので、良い悪いというものではありません。一方で、その情報や知識が偏っていたり思い込みによるものであっても、自動的に瞬時に処理するため修正することができません。自分を含めて、誰もがアンコンシャス・バイアスを持っていることに自覚的になり、それをきちんと取り扱うことが大切です。

3. いつでもどこにでもあるアンコンシャス・バイアス

自分の先入観や思い込み、勝手な解釈で、無意識に発した言葉や態度が、否定的なメッセージとなり、相手を傷つけたりストレスを与えることがあります。
アンコンシャス・バイアスは「思い込み」「きめつけ」「押しつけ」となり、周囲に悪影響を与えるのです。
いつでも、どこでも、誰にでも起こりうるものだからこそ、自分自身に「思い込み」や「きめつけ」がないか、自己認識を深めることが重要です。気づきのアンテナを立てることが、関係性や組織をよりよく変えるためのスタートとなります。

4. アンコンシャス・バイアスの代表的な例

組織

正常性バイアス

危機的状況になっても、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする
ex) うちの会社は大丈夫/自分の部署には関係ない/たまたま今回起こっただけ

集団同調性バイアス

集団に所属することで、同調傾向・圧力が強まり周囲に合わせてしまう
ex) 会議は満場一致が原則/コンプライアンス違反/ハラスメント的な指導が常態化しているが、誰も意見しない。

アインシュテルング効果

慣れ親しんだ考え方やものの見方に固執してしまい、他の視点に気づかないか無視してしまう
ex) 過去の成功体験にこだわる/どんなにいいプロジェクト案も前例がないと許可されない

コミットメントのエスカレーション

過去の自分の意思決定を正当化し、自分の立場に固執したり、損失が明確でも引けなくなってしまう
ex) 多額の投資をした不採算プロジェクトが撤退できない

個人

ハロー効果

ある人物に好意を抱くと、その人物に対するすべてのものに対して好意的に考える
ex) 学歴が高い人は優秀/同じ趣味を持つ人/自分を慕う後輩

ステレオタイプバイアス

あるグループに所属するものには特定の特徴があると判断する。
ex) 裁判官は男性/高齢者にITは向いていない/外国人は自己主張が強い

確証バイアス

仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視、または集めようとしない
ex) ワーキングマザーは仕事より家庭を優先する/長時間働かないと成果が出ない

慈悲的差別

少数派に対する好意的ではあるが勝手な思い込み
ex) 子どもがいる女性には負荷の高い業務を任せない/気が利き職場を明るくする社員は好まれるが、評価・昇進の対象ではない

インポスター症候群

自分への過小評価・可能性を閉ざしてしまう思い込み
ex) 上司は推薦するが、私にはリーダーは無理/どうせ上手くいかない

5. 原因はエゴ・習慣・感情スイッチ

アンコンシャス・バイアスを生み出す要因は3つあります。

1つ目は、自分を守ろうとする「エゴ」
自分を正当化したり、よく見せたいと考えたり、自分にとって心地よい状態を保ちたいという、自己防衛心、自己保身の表れでもあります。

2つ目は「習慣や慣習」
慣れ親しんだ慣習や当たり前、常識だと思っていたことが、時代に合わなくなったり、多様性が増す中でずれが生じているにもかかわらず、それに気づかないままに行う言動が、違和感を生んだり、ストレスを与えることとなります。同質性が高く暗黙のルールが強くある組織ほど気をつける必要があります。

3つ目は「感情スイッチ」
感情スイッチとは、その人特有の「囚われやこだわり」や「劣等コンプレックス」、また不安感や感情を呼び起こすポイントを意味します。感情スイッチを刺激されると、人は本能的に「自己防衛反応」をとったり平静ではいられなくなります。自分を守るために、他者や現実を客観的に見ることができなくなったり、時には攻撃的な言動をとることがあります。

6. マジョリティ(多数派)のもつ「力」に留意しよう

アンコンシャス・バイアスは、誰もが持っているものですが、とりわけ組織のリーダーや管理職は注意が必要です。眉をひそめる。腕組みをする。相手を見ずに話をきく。軽く扱うような発言をする。どれも取るに足りない小さなことです。マイクロメッセージ(小さなメッセージ)と呼ばれるこのような行動を上司が行った時、部下はどのように思うでしょうか。管理職は部下の評価や育成、仕事をアサインする役割を担っています。役割がもつ「ポジションパワー」に無自覚なまま発する、何気ないひとことや些細な行動に、立場の弱い人たちは恐れや不安をいだき、ストレスや無力感を感じることがあります。力を持っている人ほど、自分自身のもつ「力」を自覚し、意識的に取り扱う必要があります。
アンコンシャス・バイアスに気づくためには「メタ認知」が重要となります。メタ認知とは、自分を客観的に見る能力をいいます。感情的になりそうなとき、思わず反応してしまった時、一呼吸おいて自分を俯瞰して見つめなおしてください。「これってアンコンシャス・バイアスかな?」「自分は今、アンコンシャス・バイアスにとらわれていないだろうか」
自分のもつバイアスに気づき、それが周囲にどのような影響を与えているかを自覚する。それがアンコンシャス・バイアスを取り扱いための第一歩となります。

アンコンシャス・バイアスの悪影響

アンコンシャス・バイアスの悪影響は、個人にとどまらず、組織全体に波及します。とくに、管理職やリーダーのアンコンシャス・バイアスは、企業のパフォーマンスや意思決定に大きな影響を与えます。対応を怠れば、職場全体のモチベーションや生産性低下など、深刻な問題に発展していきます。場合によっては、ハラスメントの告発やブランドイメージの失墜など、組織が社会的信用を失うことにもなりかねません。
アンコンシャス・バイアスを放置することは、経営リスクとなります。

コトコちゃんとバイアス

コトコの囚人楽曲「HARROW」の読み方はハロー

ハロー効果(ハローこうか、英語: halo effect)とは

社会心理学の用語で、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと

光背効果、ハローエラーともいう。

例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまうことや、外見のいい人が信頼できると感じてしまうことが挙げられる。

ハロー効果は、良い印象から肯定的な方向にも、悪い印象から否定的な方向にも働く。

ハロー効果という言葉が初めて用いられたのは、心理学者エドワード・ソーンダイクが1920年に書いた論文「A Constant Error in Psychological Ratings」である。
ハローとは聖人の頭上に描かれる光輪のことである。
ハロー効果が起きるのは、原始的な時代には物事を即断することが生存に有利であり、それが遺伝的に受け継がれているためと考えられている。
「あばたもえくぼ」、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざは、この効果を表している。
(Wikipedia)

分かりやすかったハロー効果についてのサイトを載せます!

ハロー効果(halo effect)とは
他者の評価を行う際に、対象者がもつ1つの特徴を根拠にその人の印象を過大にもしくは過小に評価してしまう認知バイアスの一種です。

ハロー効果の「ハロー(halo)」とは、

「聖像を引き立たせるために像の後ろ側に飾られた
光輪や後光」を示します。

ハロー効果がはたらくと、対象者の目立つ特徴や他者よりも優れたり劣ったりする一面が、後光のようにその人の後ろから差して、その人を立派に見せたり劣って見せたりすることがあるため、そのような名称が与えられました。

ハロー効果は、人間がもつ思い込みの心理と解釈される認知バイアスの一種として知られています。

認知バイアスとは、
人間が物事を認識するときに、過去の経験や知識、環境などの様々な要素から作られた個々のバイアス(偏見、偏った見方)もとに物事を認識してしまうこと

ポジティブ・ハロー効果

他者(評価対象者)の持つ良い点を根拠に、
他者について実際以上の好印象を抱いてしまう
ハロー効果

ネガティブ・ハロー効果

対象者の持つ悪い点を根拠に、
対象者について悪い評価を下してしまう
ハロー効果のこと
ハロー効果から考えるコトコの仮説

・女性だから力が無い、弱いのような感じで、「女性」として評価されることが嫌だから、自分のことを命を削ってまでも鍛えあげようとしたり、タイムラインでも自らを鼓舞するような発言をしたりした
(筋肉の話に拘るところ)

・看守を攻撃し続けようとしたミコトから、看守エスを庇ったという図から、コトコちゃんにはポジティブハロー効果、ミコトくんにはネガティブハロー効果が働いた可能性がある。
→「看守を守ってくれる」コトコと「看守を攻撃する可能性があるミコト」というような対比したポジティブな意識、ネガティブな意識を与えて、印象を印象操作をした。

コトコのCDジャケットには上から剥がれかけのテープが貼られている
→「誰かのための正義」「守ってくれる正義の味方」という印象を自分に貼り付けた可能性

ハローの言い換えから、波浪

波浪警報

台風や低気圧など気象が原因で発生する高波により,船舶や海上業務などに重大な災害の発生が予想される場合に発表される警報。

太平洋や日本海などの外海ではおおむね 5~6m以上,東京湾など内海ではおおむね 3~4m以上の有義波高(連続する波を観測したとき,波高の高いほうから順に全体の 3分の1の個数の波の波高を平均したもの)が予想されるときに発表される。地震による津波は含まない。
(→気象警報,波浪注意報)

コトコが災害に巻き込まれた可能性
また
救助のボランティアなどで災害があった地に自ら赴いた可能性がある

https://kotobank.jp/word/波浪警報-155627

災害の避難の妨げになるバイアスとは?

正常性バイアスとは?

「正常性バイアス(normalcy bias)」は、心理学の用語です。社会心理学や災害心理学だけでなく、医療用語としても使われます。
人間が予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)を指します。
何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、人間にはそのようなストレスを回避するために自然と“脳”が働き、“心”の平安を守る作用が備わっています。ところが、この防御作用ともいえる「正常性バイアス」が度を越すと、事は深刻な状況に……。
つまり、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、“脳”の防御作用(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、生命の危険にさらされる状況を招きかねないのです。

逃げ遅れの心理「正常性バイアス」の恐ろしさ

甚大な被害を出した東日本大震災では、「大地震の混乱もあり、すぐに避難できなかった」「あれほど巨大な津波が来るとは想像できなかった」と思った人がたくさんいらしたことが、のちの報道によって明らかになりました。そう話していた人々が住む地域には、大型防潮堤等の水防施設が設置されていた……、また10m超の津波を経験した人がいなかった……などの様々な要因があり、迅速な避難行動が取れなかったことも事実です。よって、一概に「いち早く行動を取れるか」「危険に鈍感になっていないか」を明確に線引きできない部分もありますが、緊急事態下で的確な行動を取れるか否かの明暗を分けうる「正常性バイアス」の働きを、過去の災害が示唆する教訓として、私たちは理解しておきたいものです。また、御嶽山の噴火の際にも同じような心理が働いていた可能性があります。
火山の噴火という危険な状態に接しても、「大丈夫だろう」(=正常性バイアスの働き)と、立ち上る噴煙を撮影していたため、避難が遅れた人も少なくないといわれています。
災害の報道をテレビで見ている多くの人は冷静であるがゆえ、「撮影している時間があれば逃げられたのでは?」と考えがちですが、災害に直面した当事者にしかわからない「正常性バイアス」は予想外の大きなチカラで人々の行動を制限します。そのため過去の事例からも、地震、洪水、火災などに直面した際、自分の身を守るために迅速に行動できる人は、“驚くほど少ない”ことが明らかになっています。

最後は狼に食べられてしまう、
イソップ物語『羊飼いと狼

羊飼いの少年に何度も「狼が来た」と言われて惑わされた村人は、いつしか「またか」と対応しなくなり、ついには本当の非常事態だということがわからなくなって、羊は狼に食べられてしまいます。
物語の本来の目的は「うそをついてはいけない」ことを子どもに伝える童話なのですが、裏を返せば、村人の「正常性バイアス」の働きをうまく突いた、“戒め”のように聞こえなくもありません。

数々の災害や事故などによっていくつもの「想定外」が生まれ、「想定内」にする努力がなされていますが、いまだに「想定外」が出現し続けている昨今。
私たちの心の在り方そのものが、さらなる災害を生みだすことのないよう、日頃から日常と非日常の切り替えに翻弄されず、冷静に対応することが求められています。

同調性バイアス

「周りの人と同じ行動をとる」ことが安全と考える心の働きです。
特に,日本人はこの働きが強いのかもしれません。
本来であれば迷うことなく逃げるべき状況でも「周りの人が逃げない」から「自分も逃げない」という選択をする人が圧倒的に多 いとされています。例えば、火災で煙が充満しているのに「周りの人が逃げない」からとおとなしくその場で待機し, 結果的に死者が増えてしまうというケースもあります。

オオカミ少年効果とファクトフルネス

近年、毎年のように初夏から秋にかけて、日本のどこかで記録的豪雨に伴う災害が発生しています。
地球温暖化の影響とも言われていますが何とも忌まわしい限りです。先日、テレビ番組で某防災専門家が、大雨のたびに出される避難勧告などに従って、繰り返し避難したが毎回空振りだったという高齢の母と娘が十数回目の避難時についに水害に見舞われ九死に一生を得た、という逸話を紹介していました。無駄と思われたそれまでの避難行動は良い予行演習になり、決して無駄ではなかったという落ちでした。
このような度重なる誤警報は警報の信頼性を低下させ、避難率を下げる一因にもなりますが、この現象はイソップ童話の「羊飼いとオオカミ」の嘘つき少年になぞらえて「オオカミ少年効果」と言われています。

 一方でオオカミ少年になるのを恐れて警報発令を控えたところ大雪になって東京都心が大混乱に陥ったという失敗例もあって、災害情報発信の判断は相当に難しそうです。
この現象は、羊飼いに絡めて「居眠り羊飼い効果」と称する専門家もいるそうですが、居眠りの方が嘘つきよりその弊害は大きそうですね。

ところで、昨年の社会科学系書籍でベストセラーになった「ファクトフルネス」という本はご存知でしょうか?

ファストフルネス

聞き慣れない英語の標題ですが、ファクト(事実)とフルネス(いっぱい)の造語です。我々は共通の思い込みが邪魔をして事実を正しく認識するのは難しいという趣旨の話が書かれているのですが、私にとっては久々に目から鱗が落ちた一冊でした。
一般的な思い込みには10のパターンがあり、それが事実誤認を生み出すというのですが、その中に「ネガティブ本能」(「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み)、「恐怖本能」(「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう)、「焦り本能」(「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み)が挙げられていました。
 興味深いのは、この3つの思い込みは日常的に問題となる認識パターンではありますが、以前にコラム(防災の話題1「災害心理について」)でご紹介した非常事態なのに普通だと思い込む「正常性バイアス」とは真逆の反応で災害時にはむしろ望ましい行動を生み出すかもしれないというポジティブな側面もあるという点です。
 一方、この10パターンの中の一つ「パターン化本能」(「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み)が避難勧告の空振り続きの時に「オオカミ少年効果」を助長すると理解できそうですし、非常時の「同調性バイアス」とも連動しているかもしれません。

 人の心理は複雑怪奇で一筋縄ではいきません。
 しかしながら、災害警報がオオカミ少年になったとしても、騙されたとは思わずに「備えあれば憂いなし」の精神を忘れないようにしましょう!
「聡明な人は危険に気付いて身を隠すが、経験のない人たちは進んでいって当然の報いを受ける」(格言22章3節)のですから。

https://www.kusanosk.co.jp/trivia/column/防災の話題-column/9947

コトコのモチーフは「狼」
災害と「狼少年効果」は関係がある可能性

レッテル理論(ラベリング理論)

ラベリング理論(labeling theory)とは
ある規則を犯せば逸脱となるような規則こそが、逸脱という行為を生み出すという考え方です。

ラベリング理論と逸脱行為

「逸脱(deviance)」とは、社会規範から逸れた、望ましくない行為を意味します。

広義にいえば、
「ある社会規範、ルール、秩序のあり方からずれたさまざまな行為・態度・状態」を指します。
この際、法律、道徳、礼儀作法といったものも社会規範やルールに含まれます。

具体的に、次のような行為が逸脱として研究されてきました。

逸脱行為の具体例
*  犯罪
*  非行
*  狂気
*  自殺
*  薬物依存
*  アルコール依存
*  不登校
*  幼児虐待
*  中絶
*  性的逸脱

ラベリング理論と逸脱行為

これらの逸脱行為は社会的な「病理」や「問題」と考えられ、「社会病理学」や「社会問題論」の研究対象となってきました。「社会病理学」や「社会問題論」では望ましくない行為を

①なぜ人はするのか?(原因)
②どのようにその行為を受け取るべきか?(是非)
③どう対処すべきなのか?(対策)
といった点が議論されてきました。

逸脱行為の区別:望ましい行為と望ましくない行為

しかしよく考えてみると、「望ましい行為/望ましくない行為」の区別はそれほど自明ではありません。ある社会における逸脱行為は、異なる社会や異なる時代で正常な行為であることがあるからです。
たとえば、コペルニクスの唱えた地動説は当時宗教的な犯罪と考えられましたが、現在では正しい意見と認められています。中世から近代におけるヨーロッパで同性愛は犯罪でしたが、現在では社会的に認められています。つまり、なにを逸脱行為とするか?は自明な出発点ではなく、議論に値する問題なのです。また、社会・文化・歴史が違えば、逸脱行為とされるものは変化します。そういった意味で、逸脱行為は社会を理解する鍵であるのです。

ラベリング理論と犯罪の事例

さて、このように逸脱行為を対象とする研究はこれまでも存在しましたが、ラベリング理論は画期的なものでした。ラベリング理論の代表的な論者はハワード・ベッカー(Howard Becker 1928-)です。彼は次のように、逸脱行為を説明しました。少し長いですが、ベッカーの言葉を引用します2。

社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人びとに適用し、彼らにアウトサイダーのレッテルを貼ることによって、逸脱を生み出すのである。

この観点からすれば、逸脱とは人間の行為の性質ではなくして、むしろ、他者によって規則と制裁とが「違反者」に適用された結果なのである。

これまでの内容を踏まえて、ラベリング理論のなにが画期的なアイデアだったのかわかりましたか?
これまでの議論とラベリング理論を比較すると、次のような違いがあります。

* これまでの議論・・・逸脱行為がまず存在して、それを人びとが逸脱として認識する
* ラベリング理論・・・人びとがある行為を逸脱と認識するから、逸脱になる。「逸脱者」というレッテル貼りが「逸脱者」を生み出す

ベッカーは個人の内的な性質(動機、性格、精神病理)によって逸脱行為を説明してきたこれまでの社会学の常識を、逸脱を貼り付ける社会制度とラベリングされる側との相互作用として説明したのです。

犯罪という逸脱行為

これまで議論とラベリング理論を、犯罪の事例で考えてみましょう。
ラベリング理論の発想からいくと、法律こそが犯罪という逸脱を作り出すといえます。それは法律に準拠しながら、私たちは逸脱行為を認識するからです。
つまり、逸脱行為があるから法律が取り締まるのではなく、法律によって逸脱行為が作り出されているということです

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