見出し画像

パルワールド騒動論点整理

パルワールドがリリースされてSNS上で論争を招いているのでそれに関して個人的に思うことを書きます。

本当はちゃんとひとつの意見として仕上げたかったのですが、肝心の著作権に関する知識が十分でなかったので、論点を上げてそれに対する私見を述べていく形式に留めています。


パクリかどうか

まず、パクリかどうかですが、これはもうパクリです。ポケモンはたくさんいるので偶然似てしまうという意見もありますが、複数のキャラクターに渡って、配色や細部のデザインなどが一致するわけがありません。

また、法的に問題があろうとなかろうとパクリはパクリです。「パクリ」は法律用語ではありません。

パルワールドがパクリではないと主張するのはバカの意見で、自分を貶めるだけなのでやめましょう。

法的問題

法的に問題がないのだから、問題がないとか意見するべきではないという人がたくさんいましたが、これは間違いだと思います。

社会の問題と我々の間に法律は関係ない

例えば傷害事件では正しく起訴が行われさえすれば、被疑者は刑法に基づいて裁かれます。このプロセスは法律にしたがって行われ、第三者が口を挟む余地はありません。法的に問題がないから意見するべきではないという論理では、我々は社会で起きた問題になにひとつ意見を発信することができなくなってしまいます。

私達はほとんどいつも法的ではない部分において、社会の問題を捉え、意見を発信しているのです。

法的に問題がない保証がない

そもそも、法的に問題がないかどうか?という点についてもポケットペア側が「法務のレビューを受けて問題がないとされた」と主張しているだけで、本当に問題がない保証がありません。

本当に問題があるかないかを確認するためには裁判を経由するしかないので、いまのところ正しく判断できる人はいないと言えます(もちろん具体的な判例などを参考に類推することは可能ですが、私見ではこの規模のパクリが国内で争われた例はないように思います)

キャラクターデザインとゲームシステム

一般的にゲームシステムというものは著作権法で保護されないとされています。いわゆる〇〇ライクというジャンルのゲームはここにあたり、これに法的な問題は発生しないというわけです。

一方、キャラクターのデザインは意匠権や著作権によって保護されます。この場合は同一性が問題になるわけですが、これを法的に判断するのは専門性が求められる部分なので私は詳しくは言及出来ません(軽く調べましたが、マジで難しかったです)

いずれにせよ、ゲームシステムを真似することは法的に問題がなく、キャラクターのデザインを真似することは法的な問題がある場合があるわけです。ここを混同して「〇〇というゲームは〇〇のシステムのパクリなのにパルワールドだけ批判をするのはおかしい」と指摘しているケースを多く見かけましたが、キャラクターデザインの部分で元ネタがここまでわかるようにパクっている例も、少なくとも国内ではないのではないでしょうか?

なお、もろにポケモンをパクった韓国産のポケットトレーナーDXはGoogle Play上から削除されています。

ついでにこれはあくまで法的な視点ですので、ポケモンユナイトはLOLのパクリと言うことにも別に問題はないと思いますが、Dota2の気持ちも考えてあげてください。

倫理的問題

パクリというのは法的問題に限った話ではありません。

むしろ、法的問題の項で述べたように、巷で話題になる「パクリ」のほとんどは法的問題ではない問題。すなわち倫理的な問題であるといえます。

特にここで私が思ったのはクリエイターにおける倫理観です。

昨今、クリエイターといわれる人達もSNSなどでの発信をするのが普通ですが、著作権法的な問題になりかねないゲームをプレイしていることをSNSに投稿したり、プレイしている様子を動画配信したりするのは自分の成果物に対する信用を落とすことになると思います。成果物がパルワールドと同じ倫理観で出てきたら、普通のクライアントは困ってしまいますからね。

個人的には自覚をもちながら開き直ってプレイしていると表明しているのであれば、プレイの様子を発信するのもいいと思ったりします。ですが、インターネットしぐさとしては自分は悪いことをしていると開き直るのは筋悪なので、現実的には黙って裏でやっておくのがが無難でしょう。

なお、倫理的問題についてストリーマーやゲーマーに期待するのは、もとから倫理観が狂った人間の集まりですので無駄です。

生成AI

生成AIを使ってキャラクターデザインをしたから問題だという憶測を見かけました。ですが、生成AIはデザインの手段でしかないので、生成AIを使ったから問題であるという話にはなりません。なお、個人的にはデザインの草案に生成AIを使っている可能性はそこそこあると思いますが、使っているか否かはパクリ問題においてあまり重要ではないです。

なお、生成AIを著作権的理由で問題視していた人が、パルワールドの著作権侵害疑惑に関心を持っている雰囲気がないのは都合がいいなと思っています。生成AIを著作権的理由で批判するのはアクロバティックなしぐさなので、パルワールドのパクリを見ないふりしながら生成AIだけを批判するのはだいぶ無理筋です。

もちろん、自分の関心のある話題にだけ言及する自由はありますが、生成AIの話題にしか関心を持たない姿勢では、逆に生成AIの話題に関心を持ってもらうことからも遠ざかると思います。

優良誤認

知り合いにポケモンの新作として誤認している友人がいました。これは実際にポケモンの利益を侵害していることになりますし、パクリ問題の本質的な部分に関わることです。

パクリと指摘すると名誉毀損で訴えられる

訴訟を起こすのは自由なのでなんにだって訴訟されるリスクはありますが、SNSでゲームのパクリを批判しただけで訴えられた人なんていません。そんな、あるかないかわからないような些細なリスクが嫌なら、いますぐSNS辞めたほうがいいです。

そして、もしポケットペア社がパルワールドという明らかなパクリゲームへの批判を訴訟で潰そうとする企業ならば、それこそ糾弾すべき事柄です。

厳しいパクリの指摘は第二の青葉被告を生み出しかねない

この辺まで来ると、正直意味がわかりません。

今回はポケットペア社がポケモンをパクった話ですので、そのままの意味で受け取ると開発元のゲームフリーク社のクリエイターがパクられたことを恨み事件を起こす恐れがあるということになります。だとしたらだいぶ失礼な想定で、それこそ名誉毀損で訴えられそうなものです。

広めに解釈してもポケモンファンが事件を起こすという程度でしょうか?ここまで広げるとはあながち見当外れでもなってきて、過激なポケモンファンがポケットペア社の関係者に対し、法的に問題がありそうな発言をしているのは私もX(旧Twitter)上で目撃しました。実際、殺害予告などに発展すればそれはよくないことです。

ですが、私刑の扇動でもなんでもない、単なるパクリ批判すらしてはいけないというのは行き過ぎです。

セガも龍が如くシリーズでポケモンをネタにしている

龍が如くシリーズはシリーズを重ねるごとに悪ノリが気持ち悪くなりますね。3くらいまでは楽しめてましたが、その先は追うのを止めました。

まあ、これについてはさすがに大企業同士ですので、なんらかの合意はあるんじゃないでしょうか?実態は知りませんが、これこそ第三者がとやかく言うことじゃないと思います。

売れてるんだから勝ち

まず、個人的に好きな意見ではないです。特にスタートアップの鑑みたいに持ち上げてる起業家たちは全員ひどい目にあえばいいと思っています。人をズルい方法で出し抜いて金を稼ぐことは人間的に負けです。

で、それはそれとして現実問題、ポケモン社からすれば、自社のIPをパクったゲームが何百万本も売れて、提訴したら和解金なり賠償金なりで何億円も絞れる可能性がある状況になっているわけです。

私がポケモン社の経営者なら、経営判断として訴訟しますし、訴訟そのものの勝ち負けに関わらず、販売サイトでの販売差し止め請求が通った時点でポケットペア社は損失を回避するために和解せざるを得なくなります。Dark and Darkerの例などを見るに、Steamでの販売差し止めはそんなに難しくないハードルのように思います。

まとめ

いろいろ書きましたが一般ユーザーが開き直って遊ぶ分にはいいんじゃないでしょうか。悪いことをしているという自覚を持ちながら悪いことをするのもなかなか難しいのかも知れませんが、無理にアホになったり変な理屈をひねり出したりして正当化するよりはマシな態度だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?