サブスク(ストリーミング配信)にない名盤の話をしようずPart.1

この記事はこちらのアドベントカレンダー企画に寄稿したものです



こんにちはー!
みなさん音楽は好きですか?
好きであるものと仮定してやっていきますので、ついてきてね。







はじめに

つまりは、音楽ストリーミングサービスの勢力拡大によって世の中のかなりの音楽が簡単にひとところで聴けちゃう時代においては、そこに含まれない(配信されていない)音楽はどんどん浮き彫りのごとくその存在感を増していくけれど、同時にそのような存在は注意しなければどんどん膨大な情報量の波にさらわれて埋もれていってしまうものでもあり、この記事は星の数ほどある先人たちの記事のごとく、これらの取りこぼされがちな名盤たちの存在を伝えるためのもの、ということです。ハァハァハァ

とゆわけで、やってこ!




ストリーミング配信されていない名盤たち



1.SONGS/SUGAR BABE(1975) : シティポップ,R&B,J-POP

こういう話題のときに名前が上がる筆頭格のアルバム
なんてったって日本一有名な反ストリーミングミュージシャンの山下達郎がいたバンドが一枚きり残したアルバムなんだから、そりゃいつまでたっても解禁されないし、望む声だって止まない
シティポップに詳しくない自分でも、どこまでもポップで楽観的で都会的なこのサウンドは不朽の輝きを放っていると理解できる、そんな素晴らしい作品



2.Ex-Military/Death Grips(2011) : Experimental,Hip-hop

Death Grips、本当に好きなんだけど、レーベルとの権利のあれこれなのか日本ではディスコグラフィのほとんどが配信されてなくて本当にもったいないと思ってる
ノイズまみれでサンプルの素材も加工も異常だし、ラップもほとんど叫んでるだけみたいな瞬間だってあるし、ヒップホップの垣根を何度も超えちゃってて、でもそれが最高にカッコいい
レーベルとの権利あれこれの結果、彼らは個人で作ったレーベルのサイト上で全音源をフリーダウンロードできるようにしちゃってるので、ぜひ落として聴いてほしい



3.Stone Flower/Antonio Carlos Jobim(1970) : Bossa nova,Samba Jazz

ボサノヴァがジャズと電子楽器の響きを手に入れて、息を呑むほどの美しさを実現した傑作
全体的にクールジャズ的なコンパクトな作曲で、ビバップなどに比べたら熱量は抑えめな落ち着いた雰囲気
BrasilをCorneliusがカバーしていた曲だとあとから知った
オリジナルのこちらは名演だし、Corneliusのカバーも素晴らしいアレンジだから合わせて聴いてほしいですね



4.Winchester in Apple Blossom Time/Blossom Dearie(1977) : Vocal Jazz

ボーカルジャズなんて……と硬派ぶってた時期、唯一好きになったアルバムがこれだった
とにかくディアリーの歌声が素晴らしくて、クセはあるけど涼やかで、でも豊かな響きを持っている、唯一無二のジャズボーカルだと思う
「ディアリーはこのアルバムだけ特別好きだ」と書こうとして"Blossom Dearie Sings"を聴いてるけど、これもめちゃくちゃいいな



5.Promises/Floating Points,Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra(2021) : Spiritual Jazz,Modern Classical

スピリチュアルジャズの大家がテクノプロデューサー、オーケストラと組んで作り上げたミニマルミュージックの大傑作
オーケストラの織りなす淡々とした反復の隙間にファラオ(ファロア?どっちなんだ結局)のサックスが一息鳴り響くだけで全てを塗り替えてしまう
それだけでも素晴らしいのに、楽章が進んでいくごとに増えていく展開のドラマチックさ、素晴らしさたるやもう……
去年知ってから頻繁に愛聴していたから、配信停止(しかも日本でだけ)されたと知ったときはよっぽど失神するところだった
CD買います

買いました



番外:Spotifyにない名盤たち


1.Instrumental Mixtape vol.2/Oddisee(2006) : Instrumental Hip-hop

J Dillaの伝説的遺作と同年の作品で、陰の名盤って感じ
ゴージャスなネタ使いで聴かせてる向こうに対して、こっちはリズム/グルーヴだけで勝負してる(そして成功している)
裏を返せばあんまりドッカンドッカン盛り上がるような瞬間は少ないっていうことで、1時間24曲聴いてて正直飽きる人もいると思う
でもこの最小限で、かつ細部まで注意の行き届いている素晴らしいトラック群に自分は何度もノックアウトされている
このアルバムは一生聴き続けられると思う


2.Xaybu:Unseen/Steve Lehman & Sélébéyone(2022) : Avant-garde Jazz,Experimental Hip-hop

ニューヨーク出身のサックス奏者リーマンのヒップホッププロジェクトが2枚めに出した怪作
Dos MonosとかSMTKとか好きな人は絶対に聴いた方がいい
不協和なSEがガンガン鳴って、バッチバチにタイトでスキルフルなドラムの上に常軌を逸したサックスが二本絡み合っていて、そこに英語とウォロフ語のラップが載っかる……という構成
曲の完成度によっては頭でっかちのまま崩壊しかねないところだけど、一曲めを聴いた瞬間からそれが全くの杞憂であることを実感できる



3.Rest Stop/Steve McHenry Quartet(1997) : Post Bop,Jazz

これをフェイバリットに入れてる人、本当に自分しかいないんじゃないかって思うくらい誰も聴いてない
モーダルジャズやフリージャズを通過した現代らしい難解な雰囲気も持ち合わせつつ、絶妙に聴きやすいメロディも両立していてすごくいい
それに何よりBen Monderのギターがすごくいい音してる!
彼はMaria Scheneiderのオーケストラのレギュラーメンバーで、その縁からボウイのBlackstarにも参加していたりもするんだけど、リバーブの加減といい音の温かみだったりがものすごくツボだ
モンダーのソロ作も結構好きなんだけど、これもSpotifyにないですね(泣)



4.0%/青葉市子(2014) : Contemporary Folk

言わず知れた日本が世界に誇るフォークミュージシャンのiTunes/Apple Music限定配信盤
Victorの公式ページに「限定配信」って書いてあるから多分この先もそうなんじゃないかな
内容は「0」の収録曲をライブアレンジしつつ、イントロとかインタールードとかアウトロとかいれつつ録音した感じで、これが素晴らしくクオリティが高い
ライブの音響が元の曲の良さをさらに引き立てていて、「ただのライブ演奏」に留まらない価値まで与えていると思う




おわりに


ぶっちゃけ自分はサブスク時代の音楽オタクだし、真剣にディグをやりだしたのもここ二年からの話なので、めちゃくちゃ漏れがあると思います。まずもって邦楽が少なすぎるし、ジャンルも偏りすぎてるし。
なので、「〇〇が入ってない、やり直し」というやつ、構文として嫌いではあるけどここに限っては喜んで歓迎します。もっといろんな音楽聴きたいから。
それでは……



付録:Youtube(公式)のリンク


Ex-Military/Death Grips

Stone Flower/Antonio Carlos Jobim

Promises/Floating Points,Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra

Instrumental Mixtape vol.2/Oddisee

Rest Stop/Bill McHenry Quartet


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