浦島太郎って変じゃね?という話と、その一応の解決
最近Twitterでもnoteでも、真面目な話ばかり書いている気がするので、今日は本当にしょうもない話を書いてみることにした。浦島太郎って、あれなに?
浦島太郎は物語としておかしい
浦島太郎、一般的に知られるあらすじとしては、亀を助けたお礼に竜宮城に連れて行ってもらった浦島太郎は、乙姫ら竜宮城の住人たちから歓迎を受ける。故郷が心配になった浦島が帰ろうとしたところ、乙姫は「絶対にあけてはならない」玉手箱を浦島に手渡す。帰り着いた故郷では、浦島が竜宮城で過ごした時間よりはるかに長い年月が経っており、家族や知り合いは既に死んでいた。失意の浦島は玉手箱を開けてしまい、白髪の老人に変わってしまう…というものである。
さて、この物語から受け取れる教訓はなんだろうか?
亀を助けるといいことがある?それはどう考えてもおかしい。確かに浦島は竜宮城で素晴らしい饗応を受けたとされているが、それは自分が生きる時代に戻れないという代償を伴うものだ。
では、約束を破るとひどい目にあうという教訓はどうだろう。乙姫に言われた通りにしていれば、少なくとも玉手箱によって老人に変えられることはなかったはずだ。しかし、これも納得がいかない。そもそも、乙姫はなぜ「絶対に開けてはいけない箱」なんか渡したのだろうか。大きなつづらと小さなつづらのお話のように、正しい選択をすればいいことがあったのに…という話でもない。ただただ開けてはいけない謎の箱、それが玉手箱である。
気になってしらべてみた
Wikipedia先生で調べたら、割としっくりとくる答えにたどり着いたので紹介する。そもそも、浦島太郎のお話の原型は、浦島子伝説というものに由来するらしい。その中でも、内容的に一番詳しい丹後国風土記の内容を、Wikipediaからする。
何か教訓めいたものを読み取れる物語ではないが、先ほど提示した謎に関わる描写が全くないことが分かるだろうか。太郎は亀を助けてなどいないし、箱を開けても老人になったりしない。これであれば、ちょっと不思議な異世界間の悲恋のお話として、十分に納得がいく内容である。というか、結構いい話じゃん。では、冒頭に提示した謎(ここに至っては「余計な付け足し」と言ってもいいだろう)は、いったいいつから足されたのだろうか。
第一の付け足し
「浦島太郎」として伝わる話の型が定まったのは、室町時代に成立した短編物語『御伽草子』によるとされる。内容は以下のようなものである。
おわかりだろうか。亀を助けたくだりが追加されている。老人になるくだりも追加されているが、それは浦島が鶴になって蓬莱山に飛び立つ過程の描写であり、玉手箱を開けた罰というわけではなさそうだ。どうやら、このころから、「亀を助けたお礼」という余計な要素が付け足されたようだ。いや、付け足す分にはかまわないのだが、付け足すならもっと上手くやれよ…。
第二の付け足し
我々がよく知る浦島太郎のお話は、教科書を通じて広く知れ渡ったものらしい。この頃には、亀を助けたくだりはもちろん、玉手箱を開けたことによって鶴になるというオチが省かれ、玉手箱を開けてしまったせいで老人になってしまうという要素が付け足されている。
結局どういうことだったのか
ここから先は私の推測である。元々の浦島子の物語は、仙人の世界である蓬莱と、人間の世界との間で交わされた恋愛のお話であった。しかし、その味わいが分からない無粋な奴が、少なくとも二人いたのではないか。
まず、御伽草子の成立の頃に、浦島と乙姫の、決して幸せには終わり得ない恋の物語という作品テーマを理解せず、「何かいい話にしてやろう」と考えて、亀の恩返し風の要素を追加したバカがいた。全然恩返しになってないのに、である。
さらに、そこから教科書に採用されるまでの間に、「乙姫との約束やぶったのは良くないよね」と、玉手箱を開けたことの罰という要素を付け加えたバカがいたに違いない。どこかで聞いたことのある別の昔話と混同したのかもしれない。
かくして、日本版ロミオとジュリエットとでも言うべき、不思議でロマンチックな浦島の物語は、二人の無粋なアホのせいで、よく分からない道徳話へと改編されてしまったのである!(ナンダッテー)
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