スタグフレーションに関するひどい記事を読んだので、知っていることを書く

 記事を書くことにした動機は表題の通りである。ここに書いてある内容は、高校の政経の範囲であり、筆者は経済の専門家でも何でもないことは最初に言い訳しておく。

 ウィキペディアにも書いてあるような内容を改めて書くのもバカバカしいのだが、スタグフレーションとは、景気停滞(スタグネーション)の中で、物価が持続的に上昇する(インフレーション)現象を表す造語である。(読んだ記事はこの時点で間違っていた)

 最近、コロナウイルス感染症による物流の滞りや、産油国の原油生産量などを理由にして、コストプッシュ型のインフレ(詳しくは後述する)が生じていることから、このままではスタグフレーションが起こるのではないかという懸念が世界各国で広がっている。

まずはインフレーションについての簡単な説明

 インフレーションとは、物価が一定期間継続して上昇する現象をいう。景気の上昇に伴って消費活動が活発化し、モノがよく売れることから企業の生産活動も活発となり、給与も上がってさらに消費が活発化する…というように、社会が安定している状況での物価上昇は経済の成長を促すものであり、一般的に、数%のインフレは良いことと考えられている。(実際、アベノミクスは「2%のインフレ目標」を掲げていた)むしろ、日本は長年のデフレ(インフレとは逆に、物価が継続して下落する状態のこと)に悩まされており、デフレ脱却が課題の一つであった。
 しかし、インフレもすべてが素晴らしいというわけではない。インフレ下においては、物価上昇にともないお金の価値が目減りしていく。一方で、すべての財やサービスが同じように一定の価格上昇をするわけではないので、給料の上昇が物価の上昇に追いつかないことで、かえって消費活動にブレーキがかかることもある。とりわけ、短期間で物価が数倍〜数百倍にも高騰するような過剰なインフレは、経済に大混乱をもたらすことになる(ハイパーインフレーション)。

スタグフレーションのなにがやっかいなのか

 一般的に、加熱したインフレへの対処方法は、金融引き締めや増税などによって行われる。要するに、市場に出回るお金の量を絞ることで、インフレ率を抑えるという考え方だ。しかし、インフレを抑制しなければならない場面で、不景気を同時に発症していると、対処は途端に難しくなる。不景気から脱却するためには、むしろ政府はどんどんお金を使わなければならないにもかかわらず、お金を市場に増やしてしまうと物価が上がってしまうというジレンマに陥るからだ。

なぜ今スタグフレーションが懸念されているのか

 まず、スタグフレーションの一つ目の条件であるところの、不景気については説明不要だろう。コロナのせいである。ではインフレのほうはどうか。実はこれもコロナのせいである。コロナウイルスの混乱によって、国際的な人の動きが制限されたことによって、サプライチェーン(商品の供給網)に混乱が生じており、輸送コストの増大やらなんやら(航空会社が青息吐息の反面、船会社はめっちゃ儲かってるらしい。日本郵船の株価はコロナ下で10倍近くに跳ね上がっている。)で、輸入物品の価格が上昇している。さらに、原油価格が上昇しているのはご承知の通りである。需要減で減産していた石油をどのくらい増産するかで産油国が渋っているため、原油価格も上昇している。これに食料価格の引き上げなども重なり、世界的なインフレ傾向が続いている。このような、原材料費などの生産コストの増大で発生するインフレのことを、コストプッシュインフレなどという場合もある。なかでも、輸入原材料の高騰によるインフレを、輸入インフレという。このような場合、国内での賃金上昇などとは結びつかないインフレとなる場合が多く、インフレの利点があまり出てこない。
 そのような事態に対処すべく、米連邦準備理事会(FRB)が債券買い入れプログラムを来年3月で終了することを決めたり、英中銀が利上げを決めるなど、海外の中央銀行が緩和政策の修正(金融引き締め)を進めているというのが現状だ。

日本はスタグフレーションに陥るのか

 正直分からない。ただ、他の先進国に比べると、比較的マシなのではないかという見方もある。なぜなら、そもそも日本は長年のデフレに苦しんできた国だからである。これまで健全なインフレ率を維持してきた国と比べると、上昇しても耐えられるインフレ率に余裕があるという見方もできるわけだ。
 たとえば、先日の金融政策決定会合後の記者会見で、日銀の黒田総裁は「一時的な要因やエネルギーを除いたベースの物価上昇率を見てもプラス0.5%程度で、目標の2%にはなお距離がある」と述べ、欧米のようにすぐさま金融政策の正常化に走るようなことはないと言及している。
 先に述べたように、インフレ対策は景気回復の妨げにもなりうるため、インフレ抑制を優先するか、景気回復を優先するかは非常に繊細な舵取りが要求されることになる。なんとか上手いことやってほしいものである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?