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友人たちと恋人へ—スターダムにのし上がる前のJ. Coleが宛てた言葉。(J.Cole - "Hold It Down")【前編】

written by @vegashokuda

フィーチャリング無しでリリースしたアルバムがプラチナムを達成してしまう
ほどの人気ラッパーも、そのつい5年前には、Twitterのフォロワーが502人になったことを喜んでいたのだから、人生何があるか分かりません。

ヨー、フォロワーが502人になったぜ! 他のほとんどのラッパーにとってはきっと多くないだろうけど、「フォロー」ボタンを押してくれた一人ひとりに感謝するよ。

今回解読するのは、そんなJ. ColeがRoc Nationと契約して間もない頃にリリースしたミックステープ『The Warm Up』(2009年)に収録されている“Hold It Down”です。

タイトルの“hold it down”にはスラングで「レペゼンする」などの意味もあるようですが、ここでは「頑張る」「持ちこたえる」くらいの意味が適切かなと思います。この曲では1ヴァース目と2ヴァース目が友人、3ヴァース目が恋人に宛てられています。

個人的には構成・メッセージともに、Coleが大ファンだと公言している2Pacの“Unconditional Love”を下敷きにしているのではないかと感じます。御多分に洩れずこの曲もCole自身がプロデュースしているようで、センチメンタルなビートの上でColeの誠実な言葉が映える一曲です。

なお、この曲の解読にあたっては、前編と後編の2回に分け、今回は1バース目とフックの中身を見ていきたいと思います。

1バース目

If my heart stop pumpin’ tomorrow don’t feel no sorrow
‘Cause life is hard mentally and everything is meant to be
Sometimes I ask myself if I was gone who will remember me
It's hard to tell, oh well, sit back and sip this Hennessy

【意訳】
俺の心臓が明日拍動を止めても、悲しくなんかない
だって人生は精神的にキツいし、全部がそう
時々、俺が逝ったら誰が憶えてくれるか自問するんだ
難しいから、ゆっくり座ってこのヘネシーでも啜ろう

このように内省的かつネガティブなリリックで始まります。ここで2Pacのリリックにも頻出の「ヘネシー」が出てくるあたりが、Pacにインスパイアされた曲なのではないかと感じるもう一つの理由でもあります。Coleが上のように考える背景には、次のようなことがあるようです。

Now lately it’s been hard to tell my friends part from my enemies
‘Cause plenty niggas show me love but in they hearts they envy me
Why? I’m just a nigga from around the way
Told my momma I’d make it happen and I found a way

【意訳】
最近じゃ友達を敵から見分けるのも簡単じゃない
多くの奴らが愛を示すけど、心の中では俺を羨んでるんだ
なぜかって? 俺はその辺の奴にすぎないから
母さんに実現してみせるよって言って、道を見つけたんだ

同じような境遇から一人成功したColeを妬む人間が多く、Coleはそうしたなかで生きる難しさを感じているようです。そして、亡き友人たちに思いを馳せます。

Pour out some liquor for my niggas at the crossroads
And may the Lord give guidance to the lost souls
I know that deep inside these niggas know it’s more to life
Than mackin’ hoes and stackin’ dough

【意訳】
あの世の奴らのために少し酒を注ごう
失われた魂を主が導きますように
こいつらも心のどこかでは分かってるはず
人生は女を引っ掛けて金を積み上げるだけじゃないって

『ボーイズ’ン・ザ・フッド』(1991年)や『ポケットいっぱいの涙』(1993
年)といったフッド・ムービーを観ていただければ分かるとおり、フッドでは
亡くなった友人のために地面にお酒を注ぐ慣習があります。“crossroad”には「十字路」「岐路」といった意味がありますが、後者の意味が転じて「天国」を意味することもあります。

前述したColeを妬む人間を、彼は見限ったりしません。むしろ、「こいつらも
人生で本当に大事なことを理解しているはず」とし、彼らに新しい世界を見せ
てあげようとします。

Man I’m sort of like a nigga who done seen greener grass
So when they think they ballin’ like The Dream Team
My nigga I done seen meaner cash

【意訳】
俺は青い芝を見てきたような奴なんだ
奴らはドリームチーム気取りだろうけど
俺はもっとヤバい金を目にしてきたぜ

「隣の芝は青い(The grass is always greener on the other side)」ということわざを使って、自分が別の世界を見てきた人間だと言っています。Coleは「青い芝を見てきた」人間としての使命を感じているようです。

2行目の“ball”には「バスケをする」以外に「派手な暮らしをする」という意味もあり、二重の意味が掛けられています。「ドリームチーム」は、1992年のバルセロナ五輪におけるバスケットボールのアメリカ代表のことです。

And I’m tryna get it, follow me, nigga, I’m on a prowl
Headed to the top, you watchin’ me nigga? Then hold it down

【意訳】
そして俺はそれを手に入れようとしてるんだ、ついてこい、やるぜ
頂点に向かってるんだ、観てるか? 待ってろよ

“prowl”は「(動物が獲物を求めて)うろつくこと」の意味であり、さしずめ
Coleは自分が成功する瞬間(獲物)を待つライオンといったところでしょうか
(余談ですが、『The Warm Up』には“Grown Simba”という曲があり、『ライオン・キング』で王になろうとするシンバに自身を喩えています)。

最後の“you watchin’ me ni**a?”は、天国の友人に向けられたものかもしれませんし、Coleを妬む人々に向けられたものかもしれません。いずれにせよ、若くして命を落とすこともなく、「青い芝」を見る機会に恵まれたColeが、得たものを還元しようとしている姿勢が伝わってきます。

サビ

Hold it down, if you need to holla at me
Don’t hesitate to call it ain’t a problem
I can be there I’d ride for you, lie for you
I know you’d do the same, I will die for you
So hold it down, when the times is hard, I’ll be around
So hold me down and it don’t matter how far I’ll be around
Yea, I'll hold you down

【意訳】
踏ん張れ、俺に言いたいことがあれば
躊躇わず電話しな、問題ない
お前のためなら何だってするさ
お前も同じだって知ってるからな
だから頑張れ、辛いときは一緒にいるから
俺にもそうしてくれ、遠くに居たってすぐそばにいるさ
ああ、お前のためにな

後編では2ヴァース目と3ヴァース目の解読をお届けします。また別の人々に宛
てられたColeの言葉を聴くことができます。乞うご期待!

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