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女性を送り込んで犯行を働くリル・ウェインのストーリーテリングを読む。【後編】(Lil Wayne - "Mona Lisa" feat. Kendrick Lamar)

Writer:@raq_reezy

前回はリル・ウェインの「Mona Lisa」を2バース目まで解読しました。(前編はこちら

なので、今回は3バース目のケンドリックのバースを解読していきたいと思います。

最初に少し内容を振り返っておくと、この曲「Mona Lisa」は、リル・ウェインが犯行パートナーの女性をお金持ちの男のもとに送り込んで、その女性がリル・ウェインたちを招き入れることで強盗や盗みを働くというストーリーテリングとなっています。

そして、3バース目はケンドリックがこのリル・ウェインの犯行の被害者の立場をラップで歌います。

ここでケンドリックが歌う男は、リル・ウェインでもケンドリックでもない男として歌われています。

ということで、内容を見ていきましょう!

3バース目(ケンドリック・ラマー)

Ah, every day she wake up with a different color makeup
And a promise he gone take her to the movie and the mall
Chillin' with the Laker, on the floor, fourth quarter
Four minute on the clock, Black Mamba with the ball

【意訳】
毎朝、彼女は違う色のメイクをして目を覚ます
男は、彼女を映画とショッピング・モールに連れて行くと約束する
レイカーズを見ながらフロアで休憩する、第4クオーターさ
残り4分、コービー・ブライアントがボールを手に持つ

Black Mambaは、コービー・ブライアントのニックネームです。

コービー・ブライアントは2016年に引退しているので、このバースをケンドリックが録音したのは、それ以前のようです。

とりあえず、男が、女性に惚れて、あちこちにデートに行っている様子が描かれています。

Paparazzi lookin' at 'em both poppin' up and take a picture, uh
Probably on a Internet blog
In a minute, he gon' be admittin' that he love her on his mother
Man, he want to meet her mother by tomorrow

【意訳】
パパラッチは二人を見つけて、突然現れて、写真を撮る
たぶんインターネットメディアにでもアップされるんだろう
近いうちに、彼は、彼女のことを好きだと母親にも伝えて認めることになる
ああ、彼は、彼女の母親に明日にでも会いたいと思う

二人はパパラッチに見つかります。

男は、その写真がインターネットメディアに掲載され、お互いの親も知ることになるだろうことを想像して、今後のことを考えています。

Mona Lisa
Pussy good enough, it got him sinnin' in the walls
And he diggin' in it like he livin' in it
Make a new religion with it, man a nigga 'bout to go against God

【意訳】
モナ・リサ
プッシーはすごくいい、彼を壁の中の罪人にしてしまう
彼は、そこの住人になったかのように掘る
新しい信仰を得てしまう、そいつは神にさえ逆らおうとしてる

「walls」は膣壁のことで、プッシーを意味しています。これはケンドリックが過去につくった「These Walls」という曲を参照しています。

「These Walls」は、ケンドリックの友人を殺害したことで、逮捕されて刑務所(こちらも壁の中)に入れられた男の彼女を、ケンドリックが復讐のために寝取るという設定の曲です。メジャーデビュー作『Good Kid m.A.A.d City』で大成功してカリスマに祭り上げられたケンドリックの心の弱さや、ケンドリックも普通の人間であることを描く曲として、セカンドアルバム『To Pimp a Butterfly』に収録されています。

Poetry in a pear tree
Sweet tone like a hummingbird when she asked him
Did he want to make love in a yellow taxi
Never gave two fuck, jumped in the backseat

【意訳】
梨の木には詩が書かれている
ハミングバードのような甘い声で、彼女は男に尋ねる
「黄色いタクシーの中でセックスをしたい?」ってね
考え直すこともなく、彼は後部座席に飛び込んだ

「Pear Tree(梨の木)」というのは、ヒルダ・ドゥリトルという詩人の書いた詩のようです。

ここでは引き続き、男が女性の惚れている様子が描かれています。

Woke up in the morning to The Great Gatsby
Then he dogged it again like the bitch Lassie
I'm a dog in the wind, I'm a pit laughing
I'ma call up again like I did last week

【意訳】
朝になるとグレート・ギャッツビーのような気分で目を覚ます
それから、彼はまたラジーみたいに犬になった
俺は風の中を駆ける犬、俺は笑う穴
俺は先週みたいに、また電話をかける

『グレート・ギャッツビー』はフィッツジェラルドという作家が描いた、とある大富豪の物語です。

ラジーは『Lassie Come-Home』という物語に登場する犬です。

Make good with the friend and I'm all jazzy
Britney with the twin and the girl Ashley
Found out that I fucked, he was unhappy
Bitch, I never let the bullshit get past me

【意訳】
友だちとも上手くやる、俺はジャジーなのさ
双子といるブリトニー、それからアシュリー
俺もそいつらとヤッたと知ると、彼はアンハッピーだった
ビッチ、俺はデタラメを許さない

アシュリーとブリトニーというのは、アメリカで多い女の子の名前で、リル・ウェインの「Alphabet Bitch」という曲中でAとBとして登場するので、それをレファレンスしてケンドリックが用いたものと思われます。

男は、ケンドリックもそれらの女性と関係を持っていたと知ると、不機嫌になっています。

Better yet, I wanna break up, don't you ask me
'Bout a motherfuckin' double standard, acting
Fucking on another nigga, that's a negative alone
But you sucked this dick, that's just nasty

【意訳】
できれば、俺はお前と別れたい、理由なんて聞かないでくれよ
ダブル・スタンダードな振る舞いをするところだぜ
他の男とヤッたってのは、個別のネガティブ要素だけど
お前はそれでいて俺のちんこを舐めた、それは汚いぜ

そして、別れ話が始まります。

男はアシュリーやブリトニーという複数の女性と関係を持っているものの、女性側の浮気は認めないことから、ダブル・スタンダードな振る舞いと歌われています。

Matter of fact, bitch, gimme your phone! (No!)
You fuckin' with Wayne's? (No!)
Bitch, gimme your phone! (No!)
Let me, let me take this call real quick

【意訳】
いいから、ビッチ、お前の携帯電話をよこしやがれ!(嫌よ!)
お前はウェインともヤッてるってのかよ!(ヤってないわよ!)
ビッチ、お前の携帯をよこせって!(嫌よ!)
ちょっと待って、この電話を取らせてよ。

証拠を見つけるためか、携帯をよこせという男と、拒否する女性。

そこで、電話が掛かってきて、女性が電話を取らせてと言います。

(…lick me like a lollipop) He on your fuckin' ringtone?
Is that the shit that you do?
Touchin' yourself, lookin' at Kendrick videos
Jump on the internet, watchin' his interviews
I don't know what the fuck lately got into you

【意訳】
(リル・ウェインの"Lollipop"が流れる)
あいつ、お前の着信音なのかよ?
それがお前のやり方だって言うのかよ?
ケンドリックのビデオを見ながら自慰をして
インターネットを開いて、あいつのインタビューを見る
お前、最近どうしちまったんだよ

その着信音がリル・ウェインのヒットソング「Lollipop」であったため、男はそれがリル・ウェインからの電話であり、女性がリル・ウェインとも関係を持っているということを確信します。

リル・ウェインからの電話の着信音がリル・ウェインのラップという女性は実在したようで、以下の記事で説明されています。

参考
【Genius記事和訳】リル・ウェイン「Mona Lisa」のケンドリックのヴァースは誰のこと?

さて、男は彼女がリル・ウェインやケンドリックに浮気をしていることで傷ついています。

Tell me who love you, I bet I love harder
Forgot all the shit that I did for your daughter?
The pampers, the Pedialyte and my momma
Daycare after school and she never did charge her

【意訳】
お前を愛してるのは誰なんだ、俺はもっと愛してやるよ
お前の娘のために俺がしたことを全部忘れたってのかよ?
パンパースにペディアライト
それから俺の母親は放課後はお前の娘の面倒を見て
お金だって請求したこともない

男は、女性のためにどれだけのことをしたかを述べ始めます。

パンパースはおむつ、ペディアライトは乳幼児用の飲料です。また、自分の母親が娘の面倒まで見てやっただろうと恩を売っています。

You scandalous as fuck and I hope you blow up
You know what, I give up, let me go get my gun
I got one in the chamber I'm plannin' on aimin'
Goddammit, you know that the damage is done

【意訳】
お前はスキャンダラスすぎるぜ、もう爆発してくれよ
もうたくさんだ、俺は銃を探してくる
部屋にひとつあるんだ、俺は狙いを定めるつもりさ
クソが、もうこの関係は傷ついてしまったんだ

ついに男は関係を終わらせるべく、部屋に銃を取りに行きます。

ケンドリックのエモーショナルなフロウが切迫感を高めます。

Bitch I'm emotional 'cause I'm in stress
I'm not supposed to go through this, I guess
So in conclusion, since you like rappers that's killin' that pussy
I'm killin' myself

【意訳】
ビッチ、俺は感情的になってる、ストレスを感じてるからな
俺はこんな思いをしなくてもいいはずなんだ、たぶんな
だから結論としては、お前が他のラッパーを好きで、そいつらとヤってるなら
俺は自殺するよ

そして、銃を取ってきた男は、女性を撃つのかと思われる口調で責めますが、悲しみから自殺してしまいます。

ということで

以上、2回に分けてリル・ウェインの『Tha Carter V』から「Mona Lisa」の解読をお届けしました。

リル・ウェインの『Tha Carter V』からは「Don't Cry」も解読しているので、もし良ければあわせてお読みください。

あわせて読みたい
XXXテンタシオンのボーカルを用いた、リル・ウェインの死生観を読む。

ということで、リル・ウェインの『Tha Carter V』、まだ聴いてない方は、興味を持たれたら、ぜひ聴いてみてください。

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