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ジェイZ&ビヨンセ夫妻による「勝ち組」のラップを解読する。(THE CARTERS - "APESHIT")

Writer:@raq_reezy

今回は、ザ・カーターズことジェイZ&ビヨンセ夫妻の「APESHIT」を解読していきたいと思います。カーターはジェイZ(ショーン・カーター)の苗字です。

「APESHIT」は、先日ジェイZとビヨンセが株主でもあるTIDAL限定で突然リリースされたTHE CARTERS名義のアルバム『EVERYTHING IS LOVE』の収録曲。プロデュースは、ジェイZの盟友でもあるファレルです。

ルーヴル美術館で撮影されたミュージックビデオもめちゃくちゃカッコいいので必見です。

それでは、内容を見ていきましょう。

サビ(Beyoncé & Quavo & Offset)

この曲ではアドリブ(ガヤ)にも贅沢にミーゴスのQuavoやOffsetが参加しています。

Stack my money fast and go (fast, fast, go)
Fast like a Lambo (skrrt, skrrt, skrrt)
I be jumpin' off the stage, ho (jumpin', jumpin', hey, hey)
Crowd better save her (crowd goin' ape, hey)

【意訳】
あっという間に素早くお金を積み上げて先に行く(速い、速い、行くぜ)
ランボルギーニみたいに速いのよ(キキーッ、キキーッ、キキーッ)
私はステージから飛び降りるわ(飛ぶ、飛ぶ、ヘイ、ヘイ)
群衆は彼女を救いなさいよ(群衆は猿になる、ヘイ)

ここではライブで観衆がものすごく盛り上がっている様子を歌っています。

I can't believe we made it (this is what we made, made)
This is what we're thankful (this is what we thank, thank)
I can't believe we made it (this a different angle)
Have you ever seen the crowd goin' apeshit? Rah!

【意訳】
私たちが成し遂げたなんて信じられないわ(これを成し遂げたのさ、俺たちはやった、やったぜ)
だから私は感謝してるのよ(これに感謝してるのさ、感謝)
私たちが成し遂げたなんて信じられないわ(これは違う角度)
群衆が猿のように熱狂するのを見たことが一度でもある?ルァー!

ジェイZとビヨンセは夫妻の資産額が10億ドルを超えたと報じられているほど成功しています。ここまで勝ち上がったことが信じられないということでしょう。

1バース目(Beyoncé & Quavo)

Gimme my check, put some respek on my check
Or pay me in equity (pay me in equity)
Watch me reverse out of debt (skrrt)

【意訳】
私に小切手をよこして、小切手にはリスペクトのある金額を書いてよ
それが嫌なら、株式で払って(株で払え)
私が借金漬けから状況をひっくり返すのを見てなさい(キキーッ)

私に安い仕事を頼まないでということでしょう。

手元に満足なお金がないのであれば、株式で払うことを求めています。ビヨンセが一緒に仕事をすれば、企業の売上や価値があがるため、株式を貰っておけば、その価値も上がるからです。

He got a bad bitch, bad bitch
We livin' lavish, lavish
I got expensive fabrics
I got expensive habits

【意訳】
彼には、バッドなビッチがいる、バッドなビッチがね
私たちは豪華に生きてる、豪華にね
私は高価な生地を身につけてるわ
私には高価な趣味があるの

ここは普通のボーストですね。

He wanna go with me (go with me)
He like to roll the weed (roll the weed)
He wanna be with me (be with me)
He wanna give me that vitamin D (D!)

【意訳】
彼は、私と一緒に行きたいみたい(私と一緒に行く)
彼は、大麻を巻くのが好き(大麻を巻く)
彼は、私と一緒にいるのがすき(私と一緒にいる)
彼は、私にビタミンDを与えるのが好き(D!)

ビタミンDは陽にあたるとできるようです。ジェイZは南の無人島をビヨンセんい誕生日プレゼントとして買ったりしています。ビタミンDが不足しないようにだったのでしょうか(笑)。

Ice ornaments, icy style tournaments (woo)
You ain't on to this (no)
Don't think they on to this (no)

【意訳】
きらびやかな装飾品、ギラついたスタイルのトーナメント(ウォウ!)
お前たちはこの域にいない
あいつらがこの域にいると思わないで

アイスはダイヤモンドなどの宝石を指します。

高価な宝石だらけの次元の勝負に自分たちがいるという比喩から、違う次元の勝負をしているということを歌っています。

(Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah)
Bought him a jet
(Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah)
Shut down Colette
(Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah)
Phillippe Patek
(Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah)
Get off my dick (uh, hey)

【意訳】
彼にジェット機を買ってあげた
コレットの店じまいをする
フィリップ・パテック

先ほど、ジェイZがビヨンセに無人島を買ったと書きましたが、ビヨンセはジェイZにジェット機を買ってあげています。とんでもない夫妻です。。。

コレットはフランスにあったファッションの小売店で、ジェイZとビヨンセも訪れています。

パテックフィリップは時計ブランドです。

2バース目(JAY-Z & Beyoncé)

I'm a gorilla in the fuckin' coupe
Finna pull up in the zoo
I'm like Chief Keef meet Rafiki—who been lyin' "King" to you?

【意訳】
俺はクーペに乗ったゴリラ
ようやく動物園にやってきた
俺はチーフ・キーフとラフィキの合わせ技みたいなもんさ
誰がお前に「俺がキングだ」と嘘をついてんだ?
お前はどのライオンキングに仕えてるっていうんだよ?

今回のジェイZのバースは曲名が「Apeshit」ということで、動物園に絡めた言葉遊びや比喩で満ちています。

ラフィキというのは、ライオンキングに登場する賢い猿のキャラクターです。チーフ・キーフはシカゴ出身のギャングスタ・ラッパーです。

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つまり、ジェイZは自分がギャングのような荒々しさと、理知的な賢さを両方とも持ち合わせているということをアピールしています。

また、四行目は英語では「who been lyin' "King" to you?」は、二つの意味で読み取れます。

1つ目は、文字通り「誰がお前に王だと嘘をついてるんだ?」という意味です。

2つ目は「lyin' "King"」が「ライオンキング」と聞き取れることから、「お前はどのライオンキングに仕えてるんだ?」という意味にもなります。

Pocket, watch it, like kangaroos
Tell these clowns we ain't amused
'Nana clips for that monkey business, 4-5 got change for you

【意訳】
お金でいっぱいのポケットを見ろ、まるでカンガルー
ピエロどもに、俺は楽しんでないと伝えてくれ
ちゃちなビジネスには弾倉の弾を打ち込む、5ドル札が4枚、お釣りがあるぜ
おままごと経営者どものためにトランプは変わっちまった

動物園の比喩が続きます。たっぷりと稼いでポケットがお金でいっぱいの様子をカンガルーにたとえています。

4-5は5ドル札が4枚という意味と、45代目の大統領であるドナルド・トランプ氏のダブルミーニングになっています。

モンキービジネスというのは、ちゃっちいビジネスという意味ですが、5ドル札のお釣りが出る程度のちっぽけなビジネスとして一蹴した後に、そうしたちっぽけなビジネスをしている奴らのためにトランプが変わってしまったと嘆いています。

Motorcades when we came through
Presidential with the planes too
One better get you with the residential
Undefeated with the 'caine too

【意訳】
俺たちが通るときには自動車の列
飛行機もあって大統領みたい
住宅ビジネスでも誰かが信じてあげないとな
コカインのビジネスでも負けたことがない

前のラインでトランプ大統領が出たことで、ここでは自分を大統領と比較するような挑発的な描写が続きます。

ジェイZとビヨンセ夫妻は、娘を学校に送り迎えするのに自動車列を雇っているそうです。

住宅ビジネスはトランプ大統領の手がけてきた不動産業でしょう。それに対して、ジェイZは自分がコカインのビジネスを手がけた過去があり、負けたことがないと張り合っています。

I said no to the Super Bowl: you need me, I don't need you
Every night we in the end zone, tell the NFL we in stadiums too

【意訳】
俺はスーパーボウルの出演を断った
だって、お前らは俺が必要、俺はお前らを必要としない
毎晩、俺たちはエンドゾーンにいる
俺たちもスタジアムを埋めてるとNFLに伝えろ

スーパーボウルはNFLの決勝戦のことで、全米でみんなが見るような、国民的イベントです。しかし、ジェイZはスーパーボウルの仕事をする必要がないと歌います。

ここでジェイZがNFLに対して物申しているのは、NFLの選手であるコリン・キャパニック選手が、警官による黒人射殺事件が相次いだことに抗議する意図で、2016年に試合前の国家斉唱を拒否した事件が背景にあります。

トランプ大統領は、キャパニック選手をツイッターで猛烈に批判しました。キャパニック選手は2016年に所属チームとの契約を早期終了し、2017年はどのチームとも契約していません。

Last night was a fuckin' zoo
Stagedivin' in a pool of people
Ran through Liverpool like a fuckin' Beatle
Smoke gorilla glue like it's fuckin' legal

【意訳】
昨夜は、マジで動物園状態だった
人の渦にダイブする
ビートルズみたいにリバプールを走り抜ける
ゴリラ・グルー(大麻)を、まるで合法かのように吸う

ここは普通のボーストです。

Tell the Grammy's fuck that 0 for 8 shit
Have you ever seen the crowd goin' apeshit? (Rah) (ayy)

【意訳】
8部門でノミネートされて受賞が0とかどうでもいいってグラミーに伝えろ
だって、お前らは群衆が荒れ狂うのを見たこともないだろう?

昨年、ジェイZは8つの部門でグラミー賞にノミネートされましたが、結果として全て受賞に繋がらず、受賞ゼロに終わりました。ここでは、そのことについて、気にしていないぜ!と歌っています。(気にしているのでは...。)

3バース目(Beyoncé & JAY-Z)

Haters in danger (dangerous)
Whole lot of gangin' (gang)
35 chains (chains, chains)
I don't give a damn 'bout the fame (nope)

【意訳】
へイターは危険な状態にあるわよ(危ない)
ギャングだらけ(ギャング)
35番のチェーン(チェーン・チェーン)
私は知名度なんてどうでもいい(いらない)

ここはギャングスタラップ的な歌詞が歌われています。

G8 planes (tshh, tshh)
Alexander Wang (woo!)
She a thot that you claim (woo!)
Can't be toppin' my reign (c'mon, c'mon, c'mon)

【意訳】
Global8000の飛行機
アレキサンダーワン
彼女はあなたが言う通りの嫌な女
私の治世は終わらない

Global8000の飛行機というのは、超高級なプライベートジェットです。

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アレキサンダーワンは有名なファッションデザイナーでブランドです。

Poppin', I'm poppin', my bitches all poppin'
We go to the dealer and cop it all (cop it all)
Sippin' my favorite alcohol (alcohol)
Got me so lit, I need Tylenol (Tylenol)

【意訳】
盛り上がってる、私は盛り上がってる、彼女たちも盛り上がってる
私たちはディーラーに行って、全部買い占める(買い占める)
大好きなアルコールを嗜む
めちゃくちゃ盛り上がってるわ、タイレノールを持ってきて

タイレノールは鎮痛剤・頭痛薬です。アルコールを飲みすぎて頭が痛くなるほどに盛り上がっているということでしょう。

All of my people, I free 'em all (free 'em all)
Hop in the whip, wanna see the stars, uh
Sendin' the missiles off, drinkin' my inhibitions off

【意訳】
私の民、私はみんなを解放する
車に飛び乗って、星を見にいきたいわね
ミサイルを飛ばして、私を抑圧するものをお酒で流すの

引き続き、抑圧から解放されている様子が歌われています。

250 for the Richard Mille, yeah yeah, live in a field
My body make Jigga go kneel
Man, my momma, my Lord, my shield

【意訳】
25万ドルでリチャード・ミルを買う、そう、そう、ここに生きてるわ
私の身体はジェイZを跪かせる
男、私の母親、私の主、私の盾

「Jigga」はジェイZの愛称であり、自分の身体の美しさが夫であるジェイZを跪かせたと歌っています。

ジェイZとビヨンセは、ジェイZの浮気疑惑でもめていましたが、ビヨンセがアルバムで浮気疑惑に触れるような内容を歌い、その後にジェイZが「4:44」という曲で謝罪しています。

Look at my jewelry, I'm lethal (lethal)
These diamonds on me, they see-through (see-through)
I'm a Martian, they wishin' they equal (equal)
I got M's like the back of Evisu

【意訳】
私の宝石を見て、死んじゃうほどよ
ダイヤモンドを身につける、透明よ
私は火星人、あいつらは平等を願ってるわ
Evisuの背面みたいにM(億)を稼ぐのよ

「火星人」というのは、リル・ウェインというラッパーが「俺は火星人だ、お前たちとは違う」と歌っており、その引用となっています。

Evisuは日本のブランドであり、後ろにブランドロゴの「M」がプリントされています。このMとミリオン(約1億円)のMを掛けています。

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ということで

以上、ジェイZとビヨンセによる勝ち組ラップでした。

いかがだったでしょうか。

ビヨンセのマンブルラップや、ジェイZのキレッキレのラップ、ミーゴスによる豪華なアドリブ、ルーヴル美術館でのミュージックビデオ撮影など、まさに勝ち組という感じですね!

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