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他人の話は聞いてない奴

ちょこちょこスキマバイトや短期のコールセンターなどで働くうちに、やたらと穴場バイト(治験)(交通量調査)(当日現金支給)
の数々に詳しいオジサマと仲良くなった。
私も仕事への好奇心から接触した。

こういう短期単発バイトだとそれぞれ素性不明でお互いあまり詮索しないのだが、オジサマは自称()インバウンド旅行者のガイドをやっているらしく、どうも押しが強いタイプ。

ある日コールセンターの帰り道、「ミナミのガイドしてあげるよ」と言うので暑い中人混みを三駅分ほど歩かされた。
その挙句教えてもらったのは
☆「ここ、ボクが行ったことあるしゃぶしゃぶ屋さん!」と見せられたしゃぶしゃぶの看板。
☆ホストクラブが乱立する人口密度の高い路地
☆「ここなら絶対駐輪撤去されないよ!」というファミマの裏空き地

……ガイド、とは。(・Д・)
ガイド中()もオジサマは1人でずっと話していた。まるで会話のターンというものがない。
この日からオジサマをなるべく警戒し、連絡が来ても軽くあしらうようにしていた。

しかし私はバカなので喉元過ぎれば熱さを忘れるタイプ。
少し期間が空いてからあるスポーツイベントに誘われた。ちょうどバイトもなく空いていたしサッカーを見る機会も滅多にないので誘いに応じてしまった。

オジサマは大雨の中チャリでずぶ濡れでやってきて、会場のチラシを尻に敷いたり前の座席に平気で傘をかけたり、途中で大きな舟を漕いで居眠りしたり、
一緒に居て恥ずかしいタイプであった。
開幕前や休憩の間も自分のやっているバイトの話をこれでもか、というぐらいガンガン喋る。私にもやればいいのに、とガンガン勧めてくる。
帰りはオジサマが知ってる大阪で一番美味しいお好み焼き屋さんが近くにあるので食べて帰ろうという計画だった。

“近く”というのはオジサマの基準であり、実際は30分蒸し暑い中歩いた。
裏路地でひっそりやっている個人店で、
オジサマがあらかじめ私達が向かう時間に焼いといてくれるように電話で段取りをしていた。

汗だくで店に着くと、閉店モード全開で(看板も中にしまって誰もいない)私達の到着を店主が外に出て待ちくたびれていた。
すでにテーブルには氷の溶けたお冷が置いてあり、店内を見ると“閉店時間9時”と書いてあった。
私達が着いたのは8時50分。

無言で食べた。鉄板から来る熱気でサウナのように暑い。
しかし閉める雰囲気満載の中無言で詰め込むしかない。猫舌なので熱い。苦しい。
滝汗が流れてくる。
まるで大食い選手権に出ている状況だ。
しかもオジサマは気を利かせたのか、「小でよい」という私の希望を「中」にしていた。

腹パンになり、オジサマに助けてもらおうと思ったが、オジサマは自分の分を食べ終わるとそそくさと便所に行く始末。

早く帰れオーラ全開の中とにかく詰め込んだ。
大阪で一番美味しいかどうかなど分からなかった。15分ほどで詰め込み、店を出た。

……ガイドとは。

自分基準でしか物を想定していないこのジジイが本当にガイドなんかやっているのか。

店を出てからも道中ずーっと自分のやっているセールステレアポバイトを異常に勧めてくる。
「興味のない事を人に勧める仕事はできない」
と言ったがまだまだジジイはこたえていない。

やっと駅に着きJRに乗った方が安いだろう、と言われ

ここではっきりと

「あ、わたしうつ病で障害者手帳持ってますんで、メトロ半額なんです。だから自転車も乗らないです」

と言ってやった。

ジジイは急に敬語になり
「あ、お気をつけておかえりください、ありがとうございました!」

と言いチャリに乗って帰っていった。
あれから連絡はない。

自分語りの多い奴は要注意だ。
ヤバイ奴にはヤバイ奴として接するのが得策のようだ。

【追記】しばらく静かだと思っていたら、相変わらず強引な仕事勧誘の連絡がきました。やはりこういうメンタルの人は何があってもこたえない!

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