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Saber:Solana DEX Ecosystem: Exploring AMMs and CLOBs (和訳)

著:Saber Labs

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イントロダクション

本記事では、Solana上でステーブルアセットとラッピングされたアセットのスワッピングを行うための Central Limit Order Books (CLOBs)と Automated Market Makers (AMMs)のトレードオフとシナジー効果について探索していこうと思います。Solanaのスピードと効率性はオーダーブックベースのDEX、特にSerumを用いたものによって成り立っています。オーダーブックは、トレーダーがリミットオーダーによって価格をコントロールできるようにすることで、トレーダーへの価値を与えることができます。リクイディティプロバイダーへ、積極性のあるマーケットメイキングストラテジーや流動性を集中させることが可能になります。

それに対して、特にステーブルコインの場合、コンポーザビリティ、資本効率、スピード、そしてトレーダーとリクイディティプロバイダーの両方にとって使いやすさという点でメリットを享受することができます。これらのマーケット構造は必ずしも別々のものではありません また、AMM / CLOBの統合、すなわちSerum / Raydiumの統合とSaberのSerumとの統合計画についても説明します。

バックグラウンド

Automated Market Makerは、スマートコントラクトにが保有するリクイディティプールの集合体です。イーサリアムの有名な例として、SushiswapとCurveがあります。タイプAのxトークンとタイプBのyトークンのプールを考えます。為替レートを決定する一般的なメカニズムには、プール内のトークン量の積を一定に保つこと(xy=k)や、トークン量の和を一定に保つこと(x+y=k)があります(kは何らかの定数)

Saberでは、この2つのメカニズムを組み合わせたステーブルスワップアルゴリズムを実装することで、、トークンの比率が1対1に近い取引でも、低いスリッページで一定の価格に近づけるような、”レバレッジの利く”ボンディングカーブを実現します。しかし、その価格においても流動性があることを前提とします。これは、renBTC / BTC UST / USDC のように、同じ価値を持つアセットに有効です。より詳しいステーブルスワップメカニズムについては、SaberのsステーブルスワップコードまたはCurveのステーブルスワップホワイトペーパーを参照してください。

Central Limit Order Bookは、市場参加者が作成したリミットオーダーを集めたものです。 市場価格は、現在の最も低い売値と最も高い買値によって決定されます。これらのメカニズムは、仕組みは、伝統的な株式やデリバティブの取引所や、FTXやCoinbaseのような集中型の暗号取引所で採用されています。カスタマイズ可能なオーダーや市場の可視性というのはトレーダーにとって、自然に適正な価格を設定することが可能になるため、よりコントロールしやすくなります。これらの改善によって、これらの改善により、SolanaにおいてAMMが規模に応じて有用であるかどうかを疑問視する評論家を生み出す原因にもなっています。次のセクションでは、特にステーブルアセットについてのAMMの主な利点を説明します。

AMM vs CLOB における差別化

新しいアセットのためにマーケットを作成すること

ステーブルなAMMは、Solanaに新しいアセットを導入する際の障壁を低くします。アリスが、イーサリアム上でaUSDという新しいアルゴリズムのステーブルコインを作ったとします。彼女が、aUSDをSPLトークンとしてSolanaに追加する際、イーサリアムのaUSD保有者のために相互運用性を実現したいと考えています。しかし、例えばaUSDのユーザーがワームホールブリッジを利用する場合は、ワームホールで、ラッピングされたaUSDからネイティブのSPLバージョンに切り替える必要があります。

アリスは、マーケットメイキングの経験がないので、ワームホールを使って
ラッピングされたaUSDとネイティブのaUSDを、Serumのようなオーダーブックでマーケットを設定するのは困難です。彼女は、誰かを雇うか、自分でマーケットメイキングをするか、第三者のアービトラージアーを待つ必要があるでしょう。このようなことは、価値のある時間を奪ってしまうことになります。それに、マーケットの規模が小さすぎたり、安定していないため、マーケットメーカーに資本を割くことができない場合もあります。もし、アリスがSaberやRaydiumのようなAMMを使っていればワームホールのaUSDとネイティブのaUSDを追加するだけで、すぐに機能する市場を作ることができます。これにより、新しいアセットのコミュニティをSolanaに簡単にブリッジするすることができ、エコシステム全体に利益をもたらすことができます。

コンポーザビリティとLPトークン

ステーブルスワップを行うためのAMMにおいて最も重要な利点は、リクイディティプロバイダーがLPトークンを利用できるようになったことにあります。例えば、ボブが$100,000を使ってオーダーブック上のBTC/renBTCペアの流動性を提供した場合、その$100,000を他の目的に簡単に使うことができません。その代わりにボブが$100,000ドルをSaberのAMMプールへと提供すると、ポジションを表すファンジブルLPトークンを受け取ることになります

AMM LPトークンのコンポーザビリティとファンジビリティは、ボブのロックされた資本を動的にします。これで、ボブはLPトークンをレンディングプロトコルの担保として利用したり、ファームに賭けたりすることができます。他のDeFiアプリケーションは、そのトークンを使って追加機能を構成することができます。一方で、理論的には、プロトコルはオーダーブック上により複雑なLPポジションをトークン化することができます。 (Uniswap v3では、NFTを使用して、リミットオーダーに近似した複雑な流動性ポジションを表現しています。)ペアが安定しているにもかかわらず、ファンジビリティーがないため、摩擦や複雑さが増してしまいます。

資本効率と手数料

資本効率には、LPトークン以外にも様々な側面があります。マーケットメーカーの立場からするとオーダーブック上での、リクイディティプロバイダーは、カスタマイズ性と集中力を高めることにつながります。例えば、オーダーブックのトレーダーはUSDC/USDTのすべての売り注文を1.0002として出します。そして彼らはすべての買い注文を0.9998に設定したり、より複雑なレンジを採用したりすることができます。従来のAMMにおけるLPでは、無限の価格範囲で流動性を提供しています。この問題はステーブルペアやステーブルスワップにおけるボンディングカーブによる動的なレバレッジによって多少軽減しています。しかし、オーダーブックはLPにとって資本効率の面でメリットがあります

一方で、AMMにおけるLPでは取引における手数料一定割合を受け取ることで資本効率を向上させることができます。多くのオーダーブックシステムでは、全ての手数料は中央集権常の取引所、またはガバナンストークンホルダーやDAOメンバーに配られます。ステーブルペアの場合比較的ボラティリティが小さいためLPにとって手数料は重要な収入源になり、これは収益性に影響を与えます。

ユーザーエクスペリエンス

オーダーブックの主な利点は、トレーダーがリミットオーダーやストップリミットオーダーなど、より複雑なオーダーを出せることです。例えば、SOLが現在$37で取引されていますが、ボブはSOLは$35まで下落する、または$35以下になると信じているとき、オーダーブックではその考えを反映させることは可能です。この体験はAMMにおいてトレーダーに提供することは難しく、不可能に近いモノがあります。

このような注文のタイプは、ボラティリティーの高いアセットを取引する際に非常に有効です。リミットオーダーでは、トレーダーがフロントランされたり、市場価格から離れたところで悪意を持って注文を入れられることを防ぐことができます。それに、 ストップロスによるリスク管理の鍵を握っています。これらの注文では、多くの裁量的および定量的な戦略の不可欠な部分です。しかし、ステーブルアセットをスワップするユーザーの重要の目標は、相互運用性にあります。例えば、ユーザーはあるDeFiプロトコルでラッピングされたUSDCトークンを、従来のUSDCでNFTのコレクターズアイテムを購入するためのリクイディティとして使用したいと思うかもしれません。その際には、一般的にはユーザは実行速度と比較して為替レートのわずかな誤差を気にぜず、時間のかかるリミットオーダーを避けてしまいます。さらに、スプレッドを越えてしまうと、情報を得ている市場参加者と比較して、そのようなユーザーに不利益が生じる可能性があります。

ステーブルスワップは、どのような価格でも流動性があるという利点があります。マーケットメイカーは、より都合の良いチャンスのために、いつでも流動性を引っ張ってくることのできる合理的な参加者で成り立っています。オーダーブックは特に、急激な価格変動によって消失してしまうこともあります。他方で、AMMでは誰もが(マーケットメーカーや迷えるリミットオーダーだけでなく)プールに流動性を提供してくれる限り、「100%の稼働率」を実現します。

AMMs and CLOBsのコラボレーション

SolanaにおけるAMMs と CLOBs は素晴らしいシナジー効果を発揮しています。Raydium と Serumはお互いに相互運用が可能になっています。ソフトウェアは、Raydiumのボンディングカーブから読み取って、RaydiumからのLP資金を使ってSerumに注文を出すためにフィボナッチ数列を採用しています。これにより、リクイディティプロバイダーはAMMの利点を享受しつつ、トレーダーにはよりカスタマイズされたオーダーを提供することができます。

Saberは、Serumや CLOBシステムを同様に統合する計画です。Serumに流動性を提供することで、SaberのLPは取引手数料が増加し、Serum上でのトレーダーは安定したペアでスワップする際のスリッページを減らすための追加資金を得ることができます。

コンクルージョン

Solanaの高速なファイナリティーと高いTPSは、分散型CLOBのエキサイティングな革命を起こします。新しいアセットの市場参加が素早く行え、コンポーザビリティがあり、ユーザーにとってLPが使いやすいことから、AMMはまだDeFiエコシステムにおいて重要な役割を果たしています。 今後もSaberに機能性がある新しいプールを追加していくことを楽しみにしていますし、急速に拡大するSolana DeFiのエコシステムの中で役割を果たしていきたいと思います。

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