この子があかりちゃん
あかりちゃんは、長い髪の女の子
あかりちゃんは、良い匂いのする女の子
彼女にはそんなアイデンティティーがある。
夜、部屋の中で一人、布団の中、私は不意に目を覚まし、クローゼットの中にしまっているあかりちゃんのためのウイッグを手に取る。
親には見せられないし、まだ公には出来ない、だから手入れも行き届かずバサバサのボロボロになりかけてる。
私はそのウイッグを被る。
〝私があかりちゃん〟
心が落ち着く、何故か涙がこぼれる。
口から「ありがとう」という言葉がもれる。
彼女からの感謝の言葉、それは心の奥に染みてくる。
やっと会えたね。
そんな気持になった。
嬉しかった。
部屋には静寂が流れる。
外から聞こえるカエルの鳴き声が一際大きく聞こえる。
私はあかりちゃんの髪を撫で、その匂いを嗅いだ、優しい匂い、大好きな匂い・・・
「あかりちゃんのウイッグ、お手入れしてあげよう!!」
私はそう呟き、ウイッグを胸に抱きかかえた。
ゆっくりとした時間がながれる。
カーテンから指す外の光は青白く、部屋を不気味に照らす。
でもそれはまるで私を祝福するようにきらびやかに光っているように見えた。
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