【ホラー小説】交渉上手のヤスントン

note創作大賞2024
ホラー小説部門に出すつもりだった小説。
しかし、応募最低条件の2万文字まで書けなくて挫折。
製作途中でしたが
面倒になって無理矢理完結させたので公開します。




「ここは……」

芸能人のヤスントンは
オバケが出ると言われる空き家の
居間で目覚めた。
400人は入る広い居間で、1人。


「おかしいぞ、家に帰って寝たハズなのに。
それに、こんな広い家の中で自分1人って怖いな」

そしてヤスントンは後悔した。

この日の昼間は
自分の番組
「ヤスントンの冒険」のロケで
心霊スポットである、この空き家を訪ねていたのだ。


まさか、これは番組のネタにされた事を不満に思った霊の呪いなのだろうか。

ヤスントンは冷や汗をかいたが
「まさかまさか。オバケなんて無いさ。スタッフが内緒でドッキリを仕掛けてるんだろ」


だが、ドッキリをする場合は
いつもスタッフと話し合いをし
ヤラセとバレないように収録する決まりである。


ヤスントンは寝ている自分を勝手に運んだスタッフを許せず叫んだ。


「スタッフゥ! いるんだろ!? 出てこい!」


「ここにいるが?」

「うわぁ!?」

ヤスントンの背後に
白いスーツを来た金髪のじいさんがいた。


「誰だお前!? 新入りのスタッフを雇った覚えはないぞ」

「我が名はスタップ。アンタを召喚した者だ」


「召喚? じゃあ、ここは異世界?」

「いや、アンタの住んでる世界さ。私との話し合いが終われば自動的に自宅に帰してやる」

「話し合い? 召喚魔法が使えるアンタは何者だ?」

「私は異世界から来た。
私の部下には内緒だが女装が趣味だ。
今日は割烹着(かっぽうぎ)に着替えようと思って
無断でこの空き家に忍び込んだのだが、
昼間、アンタが来たせいで着替えられなかった。すぐに隠れたからな」

「そいつは悪かったな。俺はアンタと違って
許可をもらって、この幽霊ハウスに来たんだ」


「そんな事はもうよい。
昼間、ここに来たアンタを見て思ったのさ。
コイツは使えるとな」


「俺はアンタの命令を聞くつもりはないぞ」

「まあ聞け。私は今まで、いくつもの世界を支配し、死の世界にしてきた」

「おいおい怪談話か?」

「どうやって世界を支配したか知りたくないか?」

「まあ聞いてやるよ」

「この毒カプセルだよ」

「急に物騒なモン出すんじゃねえ!」

「慌てるな。
これを飲んでも死ぬのは数年後だ。
私は、これを大量生産し、異世界に住む連中に服用させたのだ」

「そんな毒を飲むアホがどこにいるんだよ。
作り話だからって適当に言ってんじゃねえぞ」

「とある異世界では、私の魔法で病気を流行らせた。といっても数日で治る程度の弱体化魔法を
不特定多数の人間にかけただけだがな。

しかし、その世界の連中は
ワシに魔法をかけられているとも知らず
伝染病だと勝手に思い込み
死の不安に駆られた。

そのタイミングで、この毒カプセルを特効薬という名目で売り出したのさ。

そしたらバカ売れし、みんな毒カプセルを服用した。
そして数年後、その世界はゴーストタウンと化し、私の支配する世界となった」


「ぽっと出の薬を体内に入れるなんて
バカな人達だなぁ。
アンタが作った薬を服用した人達が死んでいくんだろ?
なぜそれが原因だと気付かない?」

「毒が効くのは数年後だからな。
誰も私の毒カプセルが原因とは思わない寸法よ」

「その手で、この世界も支配しようってのか? 俺なんかに手の内を教えず勝手にやればいいじゃないか」


「私はもう疲れた。代わりにやってくれたら
異世界の半分をくれてやろう」

「疲れたなら辞めたら?」

「そうはいかんのだ。私が異世界を支配しまくってきたのは
20万人に及ぶ部下の力があったからこそ。
だから私の悪事がバレずに今まで生きてこれたのだ。
そんな部下達に与える領地も無くなってきた。だからこそ
異世界征服が必要なのだ」


「領地も無くなってきたのに、
なぜ俺に異世界の半分を与えるなんて言い出した?」


「実は、私の部下の中に
私の悪事に勘づいてる者達がいてな。
無実の人の人命を奪う命令を出した私を憎んでおる。

元々は、そいつらに与えるつもりの領地だったが、
君が協力してくれれば君の物だ。
天下人とは辛きものよ」


「とんだ天下人だな」


「ところで、お主、アイドルグループを作るのが夢のようだな」

「なぜそれを!?」

「私は魔法使いだ。心を読む事くらいできる。魔力をかなり消耗するから、あまり使いたくない術ではある」

「確かにアイドルグループを作るのが夢さ。それと異世界征服の話とどういう関係があるんだ?」

「私の代わりに毒カプセルを
この世界の人間全てをだまして服用させられれば、私の部下の中からアイドルになれる素質のある若い女を23人ほどくれてやろう」

「アンタが選ぶんじゃねえ! アンタの部下20万人全員と会わせろ。オーディションをさせてもらう」

「では、引き受けてくれるのだな?」

「いや、そんな非人道的な事をして夢を叶えたくはねえ。まあ、それとこれとは別にして
20万人オーディションさせてくれや。
素質のある23人が見つかれば協力してやるよ」


「本当だな?」

「まあ、信じてくれや。
アンタの作った毒カプセルを
特効薬だと信じて死んだ人達のようにな!」


「ぐぐっ! こやつ……」


「では、オーディションを始めようか。スタップよ、部下を1人ずつ召喚してくれ」

「仕方あるまい。最初の手下、しょう、かーん!」

スタップが杖を取り出して軽く振り回すと
巨大な扉が現れた。

その扉が開き、スタップの手下が1人現れた。

「エントリーナンバー1番
赤木ユウコでーす」

「ほう、いきなり呼んだのに
オーディションだという事がわかっているようだな」

スタップ「私がテレパシーで部下達に伝えたからな」

「さすがは魔法使い。それでは赤木くん、アイドルになりたい理由は何かな?」

「はぁ!? アイドルなんかなりたくないよ。全員参加が義務だから仕方なく来たんだよ」


「なんて生意気な奴だ!
よし、合格!」

「「なんでやねん!?」」

スタップとユウコは同時に突っ込んだ。

「その反抗的な態度、グループの中では必要悪だ。
だが、合格とは言ったが、これは1次審査。
これでアイドルになれると決まったわけではないからな。
なんせ、まだ19万9999人も面接しないといけないんだ。1次審査はスピーディーに
おこなう! スタップ、次の候補者を召喚してくれ」

「くぅ、こんな適当な面接官、
私の部下の人事担当の中にもおらんわ……
次の方どうぞ」

「エントリーナンバー2番
秋畑リオン! オス!」

「オスって君、どう見ても女じゃないか」

「そうじゃなくて、私、空手が得意で
挨拶する時に、ついオスって言っちゃうんです」

「空手が得意か。アイドル番組でそういう事を言うと、型を求められるのがテンプレートになりつつあるのだが、テンプレート回避せずに型をやれるかね?」

「もちろん。見ててください」


リオンは両手の拳を交互に繰り出した。


「は! はは! は! はは! は! はは! は! はは! は! はは! は! はは!
せいっっっ!」

「文字数稼ぎ、ありがとう。たいして稼げてないが1次審査合格だ。こんだけ書いても
3000文字だしな。ここまで読む猛者もいないだろうから、ここからメタ発言率を高めてしまおう。
次の方」

「エントリーナンバー3
アンノウン アカイです」


「アンノウンくん、君はデコだしの髪型だね。前髪が目にかからないのは利点かもしれないが、デコだし嫌いのファンも多い。そのへんわかってんのかね」


「知ったことじゃありません。私はこの髪型が好きなんです。デコだし嫌いのファンなんてこっちから お断りです! 私はデコだしヲタの味方ですから!」


「うーむ、なかなか意思の強い奴だな。よし合格。次の方」


「エントリーナンバー4
後藤 ユズハ」

「でかっ! 高身長じゃないか!」

「よく言われるんですよ。言われ過ぎて、もう飽きたわそのリアクションって感じぃ~。
アンタも所詮は人の子だね。私が見たことないリアクションをしてほしかったよ」


「周りが自分に対して飽きるほどのリアクションをしてくるか……
それはモテる証拠なんだよ。アイドルグループにモテる子は必須! 合格だぁ!!

はい、次の方」

「エントリーナンバー5
過去井 ユキナ」

「ユキナさ~ん!」

「なんですか急に叫んで……?
引くんですけど」

「いいね、その反応。そういう態度とられるの大好きな人も存在するんですよ。はい合格」

「エントリーナンバー6
石本リサ! 私は……」

石本リサが話そうとすると
扉と共に消えた。


「何が起きた!?」

スタップ「す、すまん。私の魔力では、
5人召喚するのが限界だったようじゃ……」


「おいおい、最低でも23人は召喚してほしかったな」


「それより貴様、セーラー服を着た女ばかり合格させたな」

「それがアンタの会社の制服じゃないのか?」

「違うわい。私はランダムに部下を召喚した。それが偶然セーラー服だっただけだ」


「「「「「偶然ではござらんぞ!」」」」」


そう言ったのは、オーディションに合格した
5人、赤井・秋畑・アンノウン・後藤・過去井であった。

「お前たち、なんだそのしゃべり方。
それに声が男っぽいような」

「ヤスントン殿、実は我らの正体は!」

5人はカツラを脱ぎ捨てた。
それはチョンマゲの武士5人組であった。


スタップ「ゲェーッ! お前たちは!?」

「知ってるのかスタップ?」

「さっき話しただろう。私の悪事に勘づいた部下がいると。そいつらだよ!」

「スタップどの、今まで我らは女装して、あなたの悪事の証拠を探っておりました。

あなたがヤスントン殿に話した事が全ての証拠! 録音させてもらいました!
あなたのような悪人に、世界の管理は任せておけませぬ!」

「どうやって録音した!? あの時点では
お前たちを召喚していないぞ!」

「あなたがヤスントン殿を召喚する前から
我々も隠れていたのですよ! この家で女装するために!」

「ぐぐっ! じゃあ私の趣味が女装だという事も聞いておったのか!」

「 もちろん。それについては我々も触れないでおきますが、

罪の無い異世界人たちをだまして滅ぼしたのは事実! 我らの世界へ帰って裁きを受けてもらいます」

スタップは捕縛された。

「やめろ! 私は部下のために仕方なく……!」


「ヤスントン殿、あなたのおかげで
彼の悪事を突き止める事ができた。
我々は異世界に帰るので
アイドルグループを作るのには協力できないが
また1から頑張ってくれ」


異世界人たちは姿を消し
帰っていった


「うそだろ……俺が採用したアイドルが
全員セーラー服を着たおじさんだったなんて……
悪夢だぁ~!」


ガバッ


ヤスントンは飛び起きた。
自宅である。

「夢オチかよ。悪夢だから夢オチで良かったけど。女装してオーディション受けに来た奴を見抜けるようにならないといけないな」


そしてヤスントンは女装を見抜くスキルを身に付け、アイドルオーディションを開催する事を決意した。



後にヤスントンが作ったアイドルグループは
超人気グループとなる。

そして、責任重大プロデューサーという
恐怖のポジションにつく事を

この時のヤスントンはまだ知らない……

【完】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?