人質司法

 日本の司法の問題点として「人質司法」と言われるものがある。人質司法とは警察に逮捕されたら、軽い罪であっても犯行を否認する限りは、釈放も保釈もされないという司法の1つの問題点を表現した言葉である。
刑事司法は判決されるまでは推定無罪の基本なので、本来は逮捕されても身柄を釈放されるのが原則である。被疑者の勾留を決定するためには、「住居不定」「商材隠滅の恐れがある」「逃亡の恐れを疑う」などがなければいけない。だが、検事がその疑いがあると勾留要求をすると裁判所は簡単に拘留決定してしまう事実もある。こういった人質司法はカルロス・ゴーン氏の時にも話題になり(40年前に自身がポーランド人民共和国下で収監された時よりも留置所は悪く容疑者に自白を迫っている。有罪率99%はスターリン政権下(人民裁判?)のソ連よりも酷い。と批判(※1))、世界的にこの問題は注目される場面もある。実例の一つとして「警官から駐車違反を咎められたが、ごく短時間だけ車から離れただけで納得できず(短時間でも即時発車できなければ“駐車”となるが)、警官の制止を振り切って車を発進させたところ、警官が車に当たり全治2週間の怪我をしたとして、公務執行妨害で逮捕されたという事案。この場合警官を脅して口封じを行うことはあり得ない。また、初犯で独身だが持ち家があり1年半勤めている勤務策もある。家と職を捨てるということは今回の事例では考えにくい。しかし、検察は抑留請求をした。弁護士はすぐ裁判官と面接をし、取り下げさせた。裁判官は「独身で勤続1年半だから逃げる可能性がある」と棄却になかなか応じなかった。(※2)」
 人質司法の問題点として否認事件がある。これは犯罪をしていなくても犯したと容疑を認めれば証拠隠滅する恐れがないとして釈放されるが、容疑を否認した場合証拠隠滅の恐れがあるとして抑留されるというものだ。刑事訴訟法最長23日も留置所にいなくてはいけなく、社会的な地位が危うくなる。またさらに、先ほども最長23日と書いたが犯罪を小分けに身柄拘束を繰り返すことに制限がなく、そうしたことが行われている事実もある。
特に迷惑防止条例違反、道路交通法違反、銃刀法違反、特殊階乗用具の所持の禁止等に関する法律違反、児童買春・児童ポルノ処罰法違反(※3)は容疑を否認すると目撃者や証人と口裏合わせや証拠隠滅の疑いがあるとして特に被害者や証人が法廷証言を終えるまでは勾留され続けることが多い。
このようなことが未だ法整備されていないのか。日本国憲法や法律では、刑事手続きについて非常に多くの規定を置き国民の人権を守る形となっている。「自白法則(疑いのある自白は証拠とすることができない)」や「疑わしきは罰せず(犯罪をしたか合理的な疑いがある場合には有罪の判断をしてはならない)」などがその例である。また、日本が批准した国際人権規約でも、裁判も受ける者は身柄を解放されることが原則であるとされている。しかし、実態は守られていない。そういった事実があるのだ。特に冤罪事件の場合被疑者は勿論自白をしない。そうして長期間身柄を拘束され無理やり自白をさせ有罪判決となる。(その後証拠などが自白の事実と合わなく、自白が不自然と判断され無罪となることもある。)長期間拘束されれば被疑者の精神状態は著しく悪くなる。そこを狙って自白を促すという方法ができてしまうというのは非常に問題であると考える。
 この問題の解決方法としては国際人権規約などを遵守するというのがやはり大事であろう。そういった意見を広め大きく認知してもらうのが世間の認識を得るには一番いいだろう。実際、そういった声が大きくなり検察の勾留請求を却下する確率が高くなり、起訴後の保釈もなるべく認めるという運用になってきた。特に東京地方裁判所軽度の案件であれば容疑を否認しても勾留請求を原則認めない運用が定着しつつあるそうだ。また人質司法からの脱却を求める声明を出すといった活動も行われている。一方で身柄を拘束しないで操作する「中間処分制度」を作るかが法制審議会で議論となったが、証拠隠滅の恐れがあると検察・警察出身の委員からの意見もあり、また裁判官出身の委員は「手続きは適切」と意見した。このように現在この人質司法には様々な意見が飛び交っている。
私の意見としては証拠隠滅の恐れも逃亡の恐れもない被疑者が身柄を拘留されているというのを過去の事例から思い、改善しなければならない問題であると考える。現象のままであると被疑者が罪を犯していなくとも、自白したほうが社会的や経済的に優位に動いてしまう事実ができてしまう。長期間勾留されると例え判決で無罪が確定しても失職し、再就職も難しくなる。逮捕されただけで社会的地位を失うこの現状の運用は必ず変える必要があると私は考え、「人質司法」というものを世間に広めて認識・意識を高め、被疑者の基本的人権に基づく自由が保障されることを望む。

※参考文献
1:[ゴーン容疑者勾留「共産党時代の東欧よりひどい」と酷評(産経新聞) https://www.sankei.com/smp/world/news/181219/wor1812190007-s1.html]
2:[人質司法をなくそう https://keiji.home-one.jp/consult/yamada.html]
3:[人質司法(Wiki) https://ja.wikipedia.org/wiki/人質司法]

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