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ランブンの老害漫画講座~六章:ネーム作成~

目次
序章 制作の原点
一章 制作目標とページ数計算
二章 発案・練り上げ
三章 人物の相関図、物語の相関図
四章 広げる<削る
五章 プロット作成
★六章 ネーム作成
七章 まとめと感想

【この章のポイント】
・ネーム作りはセンス、他者を真似してセンスを磨く
・私が意識する点をまとめました

今回は前章で作成したプロットを用いてネーム作成に入ります。しかし、ネームというのはパターンが無限大に存在し、正解を導くことが非常に困難です。正直、個人のセンスに委ねられることが多い作業となります。それでも、他の人の作品を観察し「何故このページはこのような構成にしたのか」を考えることで、そのセンスを磨くことが可能です。また、気を付けなければいけない点に関してはどのような作品でも大きく変わらないため、その知識を身に付けることも大切です。最終的にはたくさんのネームを書き実力をつけるしかありませんが、今回は私が意識してきた点をまとめますので参考にしていただけたらと思います。

【コマ割について】

コマ数の平均は5コマ
ページ毎に偏らせる

漫画のコマ割は1ページあたり大体5コマが読みやすいとされています。この値通りに作らなければいけないという訳ではありませんが、このルールを知っていて破るのと知らないで破るのでは大きく意味が変わるので覚えておきましょう。
また5コマというのはあくまで平均値ですので、ページ毎にコマ数を偏らせましょう。コマ数が変化するとテンポ感に緩急がつき、読者が退屈しにくくなります。

重要なら大コマ、それ以外は小コマ

シンプルな内容ですが重要なので説明します。基本的に読者は大きいコマを重要、小さいコマを軽視して見る傾向にあります。言い換えれば制作者は重要な情報を大きいコマに配置しなければ、読者はその情報を軽視してしまう可能性があるということです。重要なコマは、その文字数や絵を描くのに必要な広さに関わらずコマを大きく取りましょう。
ちなみにここでいう重要とは前章で述べた『物語の展開』の事です。『設定の説明』は文字数が多くなる傾向にありますが、漫画の進行としての重要度はそこまで高くないので小さいコマに収めてしまっても大丈夫なことが多いです。逆に『物語の展開』に関わる内容ならある程度大きなコマで描く方が読者に優しいと言えるでしょう。

見開きに1つは大コマを

見開き1ページに大コマが無いということは、少なくとも2ページにわたり重要なコマが無くストーリーが進んでいないことになります。これはテンポ感の観点からみてあまり良くなく、見栄えという観点から見ても芳しくありません。作風の問題もありますが、余程の理由が無ければ最低でも見開きに1コマは大きなコマを置くようなコマ割、およびテンポ感を意識しましょう。

コマナシ、タチキリ、タチキラズ

コマは通常4本の線に囲まれた四角形です。しかし、コマ表現は多種多様なのでいくつか紹介します。

コマナシ
コマの線の4本とも無いパターン。ページ中央に置き周りのコマの線を代用する。動きの静かなシーンに向いていて、場面を大きく使えるのが利点。逆に動きの激しいシーンには使いにくく、ページの端だと利用しにくいのが弱点。

タチキリ
コマの線を2本だけ用いて、ページの辺をコマ線とするパターン。ページの角に置く。動きが激しいシーンに向いていて、こちらも場面を大きく使えるのが利点。原稿作業ではトンボ線に注意。

タチキラズ
通常のコマ。あえて書いているのは「コマナシやタチキリを使いすぎるとメリハリが出ない」という注意喚起のため。この3種類を使い分けることが大切。

枠からはみ出せキャラセリフ

キャラクターやセリフ枠(吹き出し)は、必ずしもコマ枠内に収まっている必要は無いという考え方です。私の場合は特にセリフ枠をはみ出しコマとコマを繋ぎ視線誘導に使用するというテクニックを使っていました。

忘れるな縦割り

これは自戒の意味合いが強いのですが、コマ割をしていると平行方向に割りがちになります。コマは縦方向にも割ることができるので、様々な作品を参考にしていきましょう。

コマは少ない方が吉

漫画制作を行うと、どの程度シーンを区切れば良いのか分からなくなることがよくあります。しかし「このシーンは2コマに分けるか1コマにまとめるか」と迷った場合、1コマにまとめる方が良いケースが多いです。コマ数を減らせるので作業量を減らせますし、コマ線とコマ間隔の分だけ広く使えます。読者は制作者が思っているより読み解く力が強いので、シーンを細かく分けなくても伝わる可能性が高いです。

コマ割で感情表現

コマ割は映画でいうBGMのようなものです。平行、垂直に割れば静かなイメージになりますし、斜めに割れば激しいイメージになります。映画でBGMが無ければ表現として不利になるのと同じように、漫画でコマ割を工夫しないのは不利です。コマの大きさだけではなく線の角度で変化や表現ができるとより一層クオリティの高いものになると思います。

【コマ内について】

顔のアップは1ページに1、2回

これは上記のことを守ることが大切というより、このイメージを持ってないとバストアップ(顔のアップ)だらけになってしまい所謂『顔漫画』になるという話です。『顔漫画』になると文字は多く場面は変わらないという状況になるので、絶対に避けるようにしましょう。具体的には

・背景や建物の天井のみ
・手元や足元
・コップや時計などの小物
・何も描かない、または真っ黒

といった人物とは関係の無いものを描くことによって解決するので意識してみましょう。

例絵(たとえ)と比喩で豊かな表現

漫画の絵を描く際、「物事を例える絵」や「比喩表現」が使えるとバリエーションに困りにくくなります。

景色以外の背景はパクる

ここでいう背景とは効果線やスピード線、またそのほかの効果のことです。漫画において背景とは景色だけではなく、むしろ効果をうまく使う事によって表現が豊かになります。しかし、このバリエーションを増やすことは個人では難しいので、他の作品を読んで積極的に真似していきましょう。

【セリフについて】

吹き出し数上限9個、簡潔に

通常の作品や状況なら、1ページに吹き出しは9個くらいが限度です。これより多くなる、または常にこの値に近いという場合はセリフを見直す必要があると思います。

セリフはアニメ化を想像する

つまり「作ったセリフは一度声に出して読んでみましょう」ということです。声に出して不自然なセリフはリアリティに欠けているということなのであまりよろしくないです。

大事なセリフは大きな吹き出しで

大事なセリフの場合は、吹き出しを大きく取り中の文字にゆとりを持たせると読みやすいです。逆に説明的なセリフはあまり余白が無くても大丈夫です。

“読ませる”セリフは顔を写さない

セリフのシーンではキャラクターの顔を描きたくなりますが、本当に読ませたい、読者に印象付けたいセリフならあえて顔を描かないのも手です。顔が描かれているとどうしてもセリフより顔に目が行きます。逆に白紙やベタ、背景などの絵は目がいきにくくセリフに意識を向けることができます。キャラクターの表情で語りたいときには使えませんが、そうでないときはこのテクニックを知っていると便利かと思います。

【その他】

最初の3ページに命をかける

漫画は最初の3ページを読ませることができれば、その後のページは流れで読んでもらいやすいです。逆に言えば最初の3ページで飽きられてしまえばそれまでなので、冒頭の3ページはネームも作画も力を入れましょう。

モノローグの所有権は
主人公ただ一人

モノローグとは、人物の思考を四角い枠で囲って表現したものです。そして登場人物が複数人モノローグによって思考を開示すると非常に分かりにくい状況になります。どうしても主人公以外の人物の思考を読者に伝えたい場合は吹き出しを使いましょう。

始めも終わりも左ページが好き

私がこの方式が好きなだけですが、一応メリットをあげておきます。
まず冒頭3ページが左→右→左となるので

「状況説明」
→「印象的なシーン」
→「その説明」

というページにしやすく、読者を引き込むのに適しています。
また最後が見開き1ページとなるので、そこにエピローグ的なシーンをことができます。
このような点から左始まり左終わりの構成は漫画を描く際に使いやすいと考えられます。

トーン貼らずとも栄えるページ意識

トーンを貼らなくても栄えるということは、線画の時点ですでにページが埋められているということになります。つまりは効果線や背景、ベタなどが多く、構図やコマ割が豊かであるということです。「トーンを貼らないと漫画っぽくならない」という人は他の表現方法を見直してみましょう。

本章はここまでとなります。今回の内容を最初からすべて意識することは難しく、また作風や時代によっても変化していく部分だと思います。けれどもこれらのことを知識として頭に入れておくことは決して悪いことではないはずなので活用してもらえたら幸いです。

次章はこれまでのまとめと今回の記事制作の感想となりますので、制作の記事としては今回が最終となります。ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。この記事を読んで少しでも制作に興味を持ったり、実際に制作を始めたりしていただけたら嬉しく思います。

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