見出し画像

ランブンの老害漫画講座~三章:人物の相関図、物語の相関図~

目次
序章 制作の原点
一章 制作目標とページ数計算
二章 発案・練り上げ
★三章 人物の相関図、物語の相関図
四章 広げる<削る
五章 プロット作成
六章 ネーム作成
七章 まとめと感想

【この章のポイント】
・ストーリーができたら誰を主人公にするか再検討
・プロットの前に話の相関図を作る

前章では発案するためのテクニックや手順、意識することを説明しました。今回はその出来た案をどのように扱うかについて記事にしていきます。

ストーリーが完成した場合、多くの人はここから“プロット”の制作に入っていきます。“プロット”とは物語の流れを箇条書き等で書き連ねた、いわばネームを書くための設計図のようなものです。

例:『走れメロス』のプロット作成した場合

1ページ目:メロスが王に捕まる
2ページ目:街とメロスの設定説明
……
最終ページ:女性が服を持ってくる

このように箇条書きでまとめることにより、漫画の原型であるネームを作成することができます。

しかし、プロット作成に入る前に私はおよそ2つの作業を行います。一つは

出来上がったストーリーに本当に合っている『主人公』を再検討する

ことです。ここでいう『主人公』とは「読者と同じ視点を持っている人物」のことです。言い換えるなら読者と同じだけの情報を持ち、その人物の思想が読者に伝えられるキャラクターです。例外はありますが、基本的に読者のアバター的な存在なので

・特殊な能力を持たない
・常識的な考えを持っている
・ストーリー上で「変化させられる」立場

といった人物を『主人公』におくと非常に話が分かりやすいです。逆に特殊なキャラクターを『主人公』に設定すると話が難しくなる、または興ざめしてしまうような流れになってしまう可能性があります。(ここは連載漫画と読切漫画で考え方が違うので注意が必要ですが、基本は同じかと思います)

例えば『天才探偵』と『凡人の助手』が出てくる話を作った場合

【『凡人の助手』を主人公にした場合】
・犯罪者のトリックを読者と一緒に最後まで考えることができる
・天才探偵の異常性を客観的にみる(見せる)ことができる
・考え方が一般的で感情も動かされやすいので感情移入しやすい

【『天才探偵』を主人公にした場合】
・話の途中でトリックを理解してしまうため興ざめ
・天才の異常性に読者がついていけない
・感情変化が少なく読者が感情移入がしにくい

といった状況になります。
つまり、「誰の視点から物語を描くか」というのは話を作るうえで非常に重要で、発案後に再検討する必要があるということです。『発案当初に思い描いていた主人公』と『実際にできあがった話に適切な主人公』が異なるケースは少なくありません。また、誰を主人公にするかは「何を描きたいか」「何を最後まで読者に隠しておきたいか」によっても大きく異なるのでこのことを意識しながら今一度誰を主人公にするかを考えることをおすすめします。

プロットに入る前に私はもう一つ作業を行います。それは

話の相関図を作る

ということです。これだけは断言できることなのですが、発案からすぐプロットに入る人は9割失敗します。成功する人はごく一部の天才かプロット作業中に他の過程を入れ込むことによって情報を補完している場合だけです。なので、私は『話の相関図』というものを作成します。
ではそもそも『話の相関図』とはどのようなモノでしょうか。人物の相関図は説明せずとも分かると思いますが、あのような図を私は話の要素同士でも図として起こしまとめています。
この説明ではイマイチ意味が伝わりにくいと思います。ですので、『走れメロス』を例とした別途写真を用意しましたのでそちらを確認しながら読んでいただければと思います

ランブンの老害漫画講座~三章:人物の相関図、物語の相関図~資料写真)

まず一枚目の写真を見てください。
話がある程度思い付いたら、図のようにその要素を一枚の紙にまとめます。(写真は例題用なのできれいにまとまっていますが、実際には自分が読めればもっと汚くて大丈夫です)
次に二枚目の写真を見てください。
一枚目の状況から要素と要素をつなぎ合わせ、必要に応じて新たな要素を追加していきます。(写真の赤文字の部分です)例をもとに具体的に説明すると

・話に一貫性、説得力を持たせるための伏線や設定を記入する
例:濁流の場面
←その前に雨が降る描写が必要

・元々あった要素と要素をつなげ、さらに話の説得力を強化する
例:盗賊が現れる
←王が手配したとすればより悪さが目立つ

・オチに今まででてきた設定が絡むときれいに見える
例:ボロボロになりながらも走る
→最後に裸になってしまう
→惚れた女性が登場

このような作業を行うことにより

・読者にとって急展開になっているところが無いか
・話により説得力を持たせる展開や伏線が張れないか
・必要な人物や設定の漏れがないか

を探すことができます。

このような作業を行うと話の全体像もより鮮明に見えてくるので

・そもそも話や人物の感情に矛盾はないか
・重要なシーンはどこか
・読者にどの順番で情報を開示するか
・序盤にグダらないようにするためにどの順番で掲載するか
・順序を入れ替えることで無駄なページを減らせないか

などを考えることができるようになります。

このように「出来上がったストーリーに本当に合っている『主人公』を再検討する」と「話の相関図を作る」という2つの作業を行うことにより、よりクオリティの高い話づくりが出来るようになります。


本章はここまでとなります。今回は別ページで写真を用いたので少し読みにくいかと思いますが、このような内容は他の所では解説されていないことも多いので役に立ててもらえれば幸いです。

広告
2020年春ゲームマーケット『チキン・ラン』出展
多人数短時間(4~7人、20分)、自由な交渉とシンプルな数比べ
キャッチコピーは「―破産か、罵倒か―」
2020年秋ゲームマーケット『カルトとモグラ』出展予定
多人数中量級(4~8人、60分)、じっくり遊べる正体隠匿系ゲーム
キャッチコピーは「裏切者には粛清を」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?