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ランブンの老害漫画講座~二章:発案・練り上げ~

目次
序章 制作の原点
一章 制作目標とページ数計算
★二章 発案・練り上げ
三章 人物の相関図、物語の相関図
四章 広げる<削る
五章 プロット作成
六章 ネーム作成
七章 まとめと感想

【この章のポイント】
・発案は「模倣」「紙に書く」「リラックス」の繰り返し
・“転”から作ると面白さに自信がつく
・“話の面白さ”は必須、“信念”は付属

今回は漫画の内容の発案方法やその練り上げについて記事にしていきます。しかし、発案は論理化するのが難しい分野です。何故なら発案というのは、制作者の“ひらめき”や“思考ロジック”、また“描きたい内容”に大きく左右されるからです。
けれども、発案に関しては論理化する必要性があまりないように思われます。何故なら

制作において重要なのは「発案すること」ではなく「発案したものを形にすること」

だからです。多くの制作者がつまずくのは後者であり、(趣味で制作の場合、そもそも作りたい案が無ければ制作に取り掛かることはないため)ここの論理化さえできていればより満足のいく制作を行うことができます。

とは言ったものの、発案する方法を全く書かないわけにもいかないので

発案のテクニック(意識すること)
漫画内容のどの部分から発案しているのか

をまとめていきます。

まず、「テクニック(意識すること)」についてです。

①制作とは模倣である

一部の天才を除き、制作活動とは「0から1を生み出す」ことではなく「様々なものから10を集めてきて100にする」ことです。仮にそれぞれの要素が他の作品の真似だとしても組合せによって十分オリジナルの作品となります。そして、これを行うためには

・興味のある分野だけではなく幅広く作品を読む
・読んだ作品を細分化し、制作者として真似できるところを探す

ということが必要です。また模倣する対象は漫画だけに限らず、小説、映画、ドラマ、絵画なども十分模倣できることがあります。作品を見たら細分化を行い吸収できる所は積極的に吸収していきましょう。

②発案は頭の中では無く、紙の上で

浮かんできた案から想像を膨らませることは非常に楽しいことです。しかし、その案が実際に面白いかどうかは紙などに書き出してみないと意外と分からないものです。「思い浮かんだ案が面白くなかった」というのは日常茶飯事なのに、過度な自信からこの作業を飛ばしてしまう人が結構います。「案は忘れないし、二度手間だから紙に残す必要は無い」などと慢心せず必ず紙に書き出しましょう。また、紙に書き出すと新たな案が生まれやすいことも知られています。面白さや整合性の確認と新たな発案を両方同時に行えるので一石二鳥です。

③机に向かうのも大事、
 向かわないのも大事

机に向かいひたすら案を考えていると、ほとんどの場合はどこかでつまずきます。そんな時は一旦創作から離れ、頭を空っぽにしてリラックスしましょう。“ひらめき”というのは考えている時よりもむしろ考えていないときの方が起こりやすいものです。しかし、注意しなければならないのは、そのような“ひらめき”というのはあくまでこれまでの「集めた情報」と「思考した回数」の蓄積の結果であるということです。ですので、ひたすら案を考える時間は必ず必要となります。

④出来た案は日を置いてから確認

案がある程度まとまったら時間を空け、もう一度できあがった案を確認してから次の作業に進みましょう。案ができた瞬間は最高の出来だと思っても、日が経つにつれて案の悪い点が見えてきます。悪い点ばかりが気になっても良くないですが、客観的に自身の案を評価するためにも日を置いて確認しましょう。


次に「漫画内容のどの部分から発案しているのか」について説明します。
漫画というのは要素が多く(話の展開、絵や場面、人物設定など)どこから案を考えるかは個人でもタイミングでも異なりますが、多くの場合は『ストーリー』か『人物設定』から考えることとなります。どちらから考えるかは個人の問題なので、ここから先は私自身の発案手順とそのメリット・デメリットを挙げていきます。

私は“転”から作る

ここでいう“転”とは『起承転結』の“転”のことです。大別すると『ストーリー』から、その中でも“大どんでん返し”“読者を裏切る展開”から案を考え始めています。
“転”から発案すると、以下のようなメリットがあります。

・「設定しかない漫画になった」が無い
自身の作ったキャラクターに対しての愛が強すぎるがあまり、漫画内に人物の設定を全てのせ「登場人物の自己紹介」のような漫画が出来上がってしまうことがあります。キャラクターの設定資料なら問題ないのですが、漫画には最低でも“ストーリー”が必要です。その点“転”から発案を行うとこのような問題からは無縁となります。
なお、“ストーリー”とは何かという定義は難しいですがここでは
物語の前後で人物や状況に変化がある
物事が発生し、それを解決する
くらいの意味合いで述べています。

・ページ数の設定が行いやすい
“転”は物語の中でも最後の方です。物語を後ろから作るとページ数が増えたときに“起”や“承”を切ったり削ったりすることで調整することができます。逆に頭から話を作り始めるとページ数が増えたときに“転”や“結”を切ることになり、盛り上がりが起きる前に話が終わってしまったり尻切れトンボのような展開になってしまったりしやすいです。

・話に自信を持てるから頓挫しにくい
“転”は話の中で一番盛り上がる場所です。ここを始めに決めてしまえば、あとはそれを補佐する設定を加えていくことになります。「ココで読者に満足してもらえる」と思いながら他の部分の制作を行えるので、「これって需要あるのかな?」となりにくく最後までモチベーションを保てる可能性が上がります。

逆に“転”から作ると以下のようなデメリットもあります。

・印象のあるキャラクターを作りにくい
ストーリーから作るということは、キャラクターは物語に合わせて案を作ることになります。そうなるとキャラクター作りの自由度は下がり、魅力的な人物を作る難易度は上がります。また、ストーリーが先行してしまうと登場人物の論理展開や感情展開が疎かになり、読者が全く共感できない漫画となってしまうという危険性があります。

なお、“人物設定”から作ると上記のメリット、デメリットがおおよそ逆転します。


さて、私が漫画の発案をする上で意識することがもう一つあります。それは

作者自身の“考えや信念”をどの程度入れるか

です。漫画のストーリーは、『起承転結』があってその流れが論理的であればそれなりに面白くなります。しかし、せっかく作品を作るならそこに自身の信念や生き様、拘りや人生観を入れたくなるのが人情ですし、真に心を打つ作品にはそれが込められています。(と信じたいです)
けれども、“信念”はあくまでも付属品です。何故なら話自体に面白味がなければ読者は最後まで読んでくれないからです。ここを勘違いするとストーリーではなく説教が出来上がってしまいます。
つまり、まずは話として面白いことが前提であり、そこに少しでも自身の信念を入れられたら幸運、くらいの気持ちで制作しています。

また、上記の内容と類似していますが「5回読んでも楽しめる漫画」を意識しています。具体的に言えば

一回目「なるほど~、こういう展開か!!」
二回目「一回目じゃ分からなかったけど、しっかり伏線張ってるなぁ」
三回目「この漫画、展開も面白いけど言ってることが心にしみる」
四回目「……ん?何か違和感があるな?」
五回目「……っ!?こんな裏設定があったのか!!」

というイメージです。ここで大切なのは最初から五回目の感想を狙って漫画を制作しないことです。裏設定や信念に気がついてもらえると制作者としては嬉しいものですが、ここを意識しすぎると一回目、二回目の反応がもらえなくなり結果として「何が面白いんだ、この漫画?」という感想が残ってしまう可能性があります。これでは本末転倒なのでまずは話としての面白さを追求し、その後のことは考えないようにしましょう。

本章はここまでとなります。発案は論理化することが難しいですが、意識しておくと良いことが数多くあります。今回の記事が皆様の制作活動に少しでも役に立てばと思います。

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