女の朝パート116


『女の朝115の続き』



『どうされたのですか?!』

背後からの声に、オンナは、文字通り、飛び上がった。

振り返ると、そこには喜色満面の笑みを浮かべた女2が突っ立っていた。

手には何も持っていなかったがいずれレジへ進み、何かを買う事は予測できた。

『こんちにちわ。何を見ていたの?』

女2は女とおんながいるテーブル席を眺めながら、オンナに問いかける。


オンナは動揺した様子だった。

黒目をキョロキョロさせながら、言葉を探し、

その結果、『あなたこそ何をしているの?』と反対に女2に質問を返す。

『私は、、』

女2の顔に驚きや戸惑いは見えなかったが、

やけにご機嫌な様子は伺えた。

『なぜだか急にスタバのフラペチーノを飲みたくなったのよ。それでね。そしたらあなたを見かけたから。』

『フラペチーノ?何故このスタバだったの?』

『特に意味はないわ。あえて言うならば私にとってスタバは、田端であろうが吉祥寺であろうと何処でも良かったのよ、ただの気紛れね。』

女2は笑った。


もしかすると、

偶然の再開と言うのは、何かの暗示や将来の予兆を示しているのかもしれない。

オンナにとっても、そして女2にとっても。


ともあれ、女2は自分が投げ掛けた質問と疑問は、

ただの社交辞令としてしか思っていなかったのか、

今一番飲みたい事を言えた事に満足した様子だった。

『じゃ、私は期間限定のフラペチーノを買いに行くからまたね』

女2は、オンナにウインクすると、再び女とおんながいるテーブル席に視線を移し、何事もなかったように立ち去ったのだった。


実のところオンナは、

女2が現れた瞬間からずっと自分と戦っていた。

それは女2が、期間限定の、と言った言葉からいよいよ核心的になった。

期間限定の、とか、女2が言うこと事態不自然極まりない。


とりあえず怯えてしまわないよう自分を叱咤をし、

間違った事は何もしていなかったと、

心の中で再び言い聞かせ、

それでも思いがけない時によみがえってくる苦々しい過去と立ち向かう為には、それしか思い浮かばず、すべき事だったと言い聞かせた。


しかし悲しいかな。

オンナの良いところは、女2を決して邪険にしたり、否定はせず、受け入れようと努めてきた事で、

オンナ自身がある重大な事実に気がついてしまった事に、その原因があることにたどり着いたのだった。



『根っこは腐ってないから』

オンナは呟き、背筋を正すと、

思い出したように手を伸ばす。

オンナの手はこの時僅かに震えていた。






『苦々しい事は、無理やりにでも、冷たくて苦いもので流すしかないの』

オンナは震える自分の手にアイスコーヒーを握らせると、

嵐は去った、清々しいと呟いて、少し笑った。





続く。













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