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ハロルド作石/7人のシェイクスピア(6)

地位、名誉、権力、金。
その元にあるのは自由。
自由を手に入れるため、成功を目指す。
シェイクスピアたちは、
そのために故郷をあとにする。
ここまで積み上げてきたもの、
得たものをすべて投げ捨て、町を出る。
いつまで留まっていても、
何も変わらない。
何も得られない。
成功をつかめそうにない。
だから町を出る。

そこには覚悟が伴う。
ある種の悲壮感が漂う。
排水の陣、引き返すことはできない。
戻る場所はもうない。
進むしかない。
過去を葬り去り、
未来だけに生きる。
だから名前も捨てる。
馴染み親しんできた住処も家族も友達も、
せっかく覚えた仕事も無しにする。

果たして、そうだろうか。
自分を変えるには、
そういう時代が必要なのだろうか。
これまでのすべては無駄なのだろうか。
自由になるには、
本当に地位や名誉や権力や金が必要か。
成功だけが自由を成し遂げるものか。

とにもかくにも成功だけを信じ、
シェイクスピアは旅立つ。
7人のシェイクスピアというタイトルなのに、
これでシェイクスピアはゼロになった。
いかにしてシェイクスピアは7人になるのか。
まだ道は遠い。

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