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ハロルド作石/7人のシェイクスピア(4)

時は一方向にしか流れない。
時間の流れに沿って順々に物事を経験する。
物語はそうした経験を再編する。
ある出来事と出来事を意味付けして結びつけ、
時には要因と結果とし、
時に開始と終わりとして重みを与える。
倒置法のように時間軸を反対に、
未来を先に過去を後に語ることもできる。

この「7人のシェイクスピア」という漫画は、
時を自在に操って語ってみせる。
第1巻の時代にいまだたどり着かない。
それどころか、どんどん離れていく。
謎の少女の経緯をたどったかと思えば、
少女を受け入れたシェイクスピア家の人たちこそ、
実は謎にまみれていることが明らかになる。
そう、そこはシェイクスピア家ではないのだ。
のちのシェイクスピアと呼ばれる主人公は
別の名前で呼ばれ、ともに暮らす男たちも
実名と違う名前をかたって暮らす。

なぜ?どんな秘密があるのか?
本巻では1564年にまで遡り、
シェイクスピアの子どもの頃が描かれる。
それぞれの登場人物たちの生きる社会、
時代の背景も多様で複雑。
正直、頭が混乱し、
わかりづらくなってもおかしくない。
それなのに何の違和感なく、
物語に惹きつけられる。
すごい漫画だ。

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