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松田奈緒子/重版出来!(10)

小説を原作とする映画を、幾つも見たことがある。
イメージ通りだったという人は、
ほとんどいないのではないだろうか。
たぶん各々が各々の登場人物を思い浮かべ、
舞台となる街や風景を想像している。
時に作者の意図通り、時に作者の意図から離れ、
読者はある意味、自由に世界を作り出す。
作者の創る世界と読者の作り出す世界、
それは同じものを元とした異なるものかもしれない。
読者の作る世界は、読者のものだとも言える。

だから映像として見せられると驚かされる。
えっ、こんな物語だったの。
こんな色合いが広がっていたの。
主人公はこんな人なの。
作者の創った世界、読者の作る世界、
そして映像として描かれる世界。
その3つがケンカする場合もあるし、
うまいこと調和する場合もある。

さて、これが漫画となると少し話が違ってくる。
絵として提示された世界があるから、
作者の世界と読者の世界は、
かなりの部分を同じくしている。
そこに映画が来る。
絵として表現されたものに、
さらに映像とした世界が作られる。
難しい。
形が似ているかどうか。
と、
醸し出す雰囲気が同じ匂いかどうかは違う。
それを理解して、表現するのは難しい。
コアな人物の醸し出すものが変わってしまうと、
物語自体が変わってしまうことにもなる。

だから漫画を原作とした映画は難しい。
でもその試みが成功した時の喜びも大きい。

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