竜とそばかすの姫の不真面目な感想

竜とそばかすの姫、見てきました。
お恥ずかしながら細田守監督作品とは縁がなく初対面という形だったのですが、映像は良かったな〜〜……いや、うん、なんだかな〜という感じだったので洗い浚い吐いていきたいと思います。

ちなみに一言で表すと、『やりたいことだけ詰め込みすぎてて、まとめ方がすっげぇ下手』でした。

⚠以下ネタバレを含むので注意

1.良かったところ

なにはともあれ音楽はホントにびっくりするくらい良いです。

曲もさることながら主人公役の中村佳穂さんの歌声がとても力強く、映画館の音響で聴きたい良曲揃いでした。

映像もとてもキレイでした。
ライブシーンなどはとても力の入った3Dで構成されており魅せ方もバッチリ、大変見栄えが良くこの映画を見るべき理由が詰まっていると感じました。
また、日常シーンも様々な演出方法が使われており幅の広いものを感じました。

本当にライブシーンの音楽と映像は非常にクオリティが高いので見ても損はしないと思います。

多分この2つがこの映画の魅力の全てであると思います。いや、まあ、つまり、映像と曲以外はモヤつく感じだったというわけなのですが……

2.なんか微妙に感じたところ

まず声に関してはガチガチの声優起用じゃない限りこんなもんだよね…というラインど真ん中な感じなので、アニメ映画だからなぁと納得するくらいの、そんな感じでした。ここはしゃーなし。

ストーリー上の世界観設定なども斬新というほどでも無く、どこか既視感を感じながら進む感じですがとにかく映像が良いのでまあいっか、と言う感じになると思います。

3.流石にこれは酷いなと思ったところ

脚本、ストーリー自体が正直酷いな…という感じです。

ここから脚本にグチグチ言うだけなので読まなくて良いです。

前半は内容がかなり飛び飛びで、例えるならミュージカル映画がミュージカルして転換する場面を全部ぶつ切りにしてダイジェストにしてる感じ。いくら序盤の前フリのようなものとはいえ、描写不足が否めないため物語の中に入って行きにくい印象。ちゃんと見ればどこの場面か分からないということはあまり無かったですが、感情移入度がかなり低い、物語体験としてあまり良くないものであったのは確かだと思います。

中盤になるにつれて、やりたいシーンとそれに繋ぐための無理のある新情報が散見されるようになります。美女と野獣のパロディをしたいがために竜の城が突然現れ、主人公が現実世界の姿でライブするために当てた相手を現実世界の姿にする管理者権限ビームが出てきます。あっていいのかそんなものが。
現実世界の姿を晒す管理者権限ビームが特に管理者でもなさそうな警察気取りの武器として出てきたのは何なんだ。
まああのライブシーン良かったしいっか、とはなるんですが思い返すとだいぶ、こう、ふわふわですよね…
演出も前後の雰囲気関係なくやりたかっただけだろ感のあるものがちらほら現れます。現実世界で幼馴染のイケメン君との仲を疑われて女子グループの戦国時代が始まったとこで謎のゲームか何かのパロディみたいな概略図だかで終わったの何だったんですかね。

そして終盤、謎の管理者権限ビームで現実世界の姿に戻った主人公がライブするシーンはこの映画の最高潮であり、最高のクオリティなのですが前後の展開は、こう、もう少し考えられなかったのかと思わないでもないです。

この前は竜の正体が虐待されてる少年だとライブ配信で分かるシーンですが、通話を繋ぐだけ繋いで何も実のあることを喋れず向こうも信用してくれない展開までは分からないでもないのですが、途中で3人ほどいきなり通話に入ってきて「ほんとに虐待じゃんヤベェw」みたいなことだけ言って出ていくシーンが挟まってるのが、こう、作劇上の都合で何か出てきた感しか無かったのが引っかかります。あれなに?
このあと、信用されるためには現実世界の顔を出して歌うしかないと、ここまで仮想世界になんも絡んでなかった幼馴染が言い出します。ちょっと無理ないか?
あとライブシーンも現実世界の姿で歌ったあとにクジラが出てきたのは分かったんですが、あのあとなんで元の姿に戻ってるんですかね?最初の映像の使い回しだからじゃなかろうな。

そして最大の問題がこのあと。虐待児の住所を突き止めなんとかしようとしますが東京の相談所に連絡しても活動が遅すぎてヤバい!というシーン。堪らず主人公が飛び出します。分かる。周りの大人が車で送ろうとします。分かる。何故か主人公一人で電車と深夜バスで突撃します。は????「一人でなんて大丈夫かしら…」「でも当人が決めたことだから」は???????
流石に無理があるでしょこれは。なんも考えてねぇのか???
単身東京につく主人公、場所も正確に分かっておらず、雨の中走り回る主人公、何故か家のすぐ外に出てきていた虐待児。庇う主人公を殴ろうとするも気圧されるDV父。
なんだこれは…………
着くまでに誰かサポートしてやれや…
なんとこれで竜の中の人の問題が解決したことになりました。
描写不足すぎる………

映画はこれで終わったのですが、仮想世界側の問題が何一つ解決しないまま終わったので、すごいな…ってなりました。
ライブで素顔晒したことも、竜の素顔を暴けと大炎上していた件も何も解決せず、現実世界の主人公が前向きになれただけで終わります。
そのへんの後日談の描写は別にやりたいシーンじゃ無かったのね……

4.結論

全体的に映像や音楽がズバ抜けたクオリティである一方、ストーリーは少し考えるとガタガタな印象を受けるものでした。
日常シーンも力が入ったシーンはあれど各々でラブコメだったりギャグだったりシリアスだったりの一貫性の無さを少し感じる仕上がりだったことを踏まえて、やりたかったシーンを全て作って無理やり繋げたような映画なのではない
かと考えています。
中盤くらいから気合いの入ったシーンのたびにやりたいことやれて良かったね…となり、雑な展開のたびにここはやりたいシーンじゃ無いんだね…となりました。酷い視聴者だ…

当然ストーリーの全てが悪いと断じるわけでもなく、私が受け入れられなかったガタガタも監督が伝えたいメッセージや見せたいシーンが盛りだくさんである証左でもあります。

それはそれとして展開に納得が行きにくい面もあったということ、それでもなお音楽と映像は最高だったことから、以下の結論をもってこの感想文をまとめたいと思います。

「この映画がミュージカル映画なら良かったのにな……」

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