【短編小説】ありがとう

 カレーから生まれたカレー太郎と、コーラから生まれたコーラ太郎と、近所の川島太郎は、旅に出ました。
 ある日、おなかのすいた子供がいました。カレー太郎はカレーを作ってあげました。
「ありがとう、カレー太郎!」
 子供は嬉しそうにお礼を言って去っていきました。
 またある日、のどが渇いている子供がいました。コーラ太郎はコーラを作ってあげました。
「ありがとう、コーラ太郎!」
 子供は嬉しそうにお礼を言ってげっぷをしながら去っていきました。
「いいなあ、二人は」
 川島太郎は言いました。
「困った人たちに感謝されて」
「そんなことないよ」
 コーラ太郎は言いました。
「川島君もいつかきっと感謝されるよ」
 その後も三人はずっと旅をしました。でも、川島太郎が感謝される日は来ませんでした。
「僕、帰るよ」
 ついに川島太郎は、二人に言いました。
「僕はやっぱり、二人とは違ったんだよ」
 カレー太郎とコーラ太郎は、悲しみながらも、川島太郎を見送りました。
 川島太郎が家に帰ると、たいそう喜んだお母さんが言いました。
「帰ってきてくれたんだね、太郎」
 あまりにもその顔が嬉しそうだったので、太郎も満面の笑みを浮かべて言いました。
「うん。僕は家にいるのが一番幸せなんだ」
 その後川島太郎は、平凡ながらも幸せな一生を過ごしました。   

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