シアターというもの 日記20220703

久しぶりに、新宿末廣亭に落語を観にいきました。

大学の時分、たまたま単位のために取った授業で教授の話が面白くて、授業で見せてもらった映像も面白かったので寄席に行ってみるか~、と思ったのがはじめだった気がする。

なんと、東京では年間休みなく公演をしている寄席小屋が4か所もある。(単位を取った当時の話なので、今は分かりませんが調べれば出てくる気はする)

しかも、システム上だいたいの寄席は、開演時間に関係なく、トリ前の休憩(中入り)までに入ればよいので、近くに住んでいれば思いついたときに行きやすい。末廣亭は昼の部で12時から16時半ごろまでやっていて、人によっては目当ての師匠が出るタイミングを狙って来ている人もいる感じ。

個人的に、末廣亭は昔の小屋感というか、入口からシームレスに客席になっていてまるで江戸時代の湯屋や芝居小屋という感じがするのでゆったりした空気感含め好きだなと思います。浅草にも行ったことはあるのですが、浅草の方がはっきりホール感があるので、「伝統芸能!」という感じがあるかも。以前観た回では、客席に着物のご婦人もちらほらいらっしゃった気がする。

あと以前までは客席で飲酒・お弁当食べたりもできたのですが、感染症の流行りでそれは不可になったみたいですね。ソフドリは飲める。

寄席の演目について。

今日の回でいうと、奇術のきょうこさんの珍しいシーンが見られたり、これってマジで生だからだよなあ~と思ったしそういう時の機転も面白く、全体に空気の温かい一日だなあとおもいました。あとは笑福亭べ瓶さんの一升瓶の件は、勢いにめちゃくちゃ笑った上に噺のその後に思いを馳せて「へへっ……」と思ってしまった。上方~~!!上方落語が外演目だから声と動作が大きいっていうのは勉強になりました。関西弁って話してるだけで面白いからすごいアドバンテージだ。素晴らしすぎ。

お笑いって、不謹慎笑いみたいなのもあると思うのですが、ここ数年自分の心境の変化もあり政治・時事ネタに関してはよっぽど上手じゃないと笑えなくなってしまったなと思う反面、そのギリギリを付くのが上手い方々はこれからも板に立ち続けてほしいなとも思いました。なんというか、時代のアップデートとともに客層が変わり、やりづらい面もあるだろうなという郷愁と、それに不平を垂れずにきっちり時代に合わせてきているプロの力みたいなものを感じました。

特に、落語は客層とその日の空気を見て噺を決めると授業で聞きましたが、今日はちょうど女性や子供が多かったのもあり、すごくわかりやすく面白いものを選んでくださっていた気もします。わはわは笑えた。

今日、語られるのを初めて聞いてこの噺こんなに面白いんだ!?と思ったのが「片棒」でした。ストーリーの筋、オチへの向かい方は古典~~!!って感じなんですが、銀次郎のパリピ葬式プランでアホみたいに笑ってしまった。万歳三唱までの勢いがすごい。代演も多く、演じられていた方のお名前が思い出せないのが悔いでしかないんですが、めちゃくちゃ面白かったです。うわ~~だれだったんや~~!!一期一会……。っていうか私勢いでばっかり笑ってるな。畳みかけるような勢い系のやつに弱いのかもしれない。「らくだ」の死体動かしてるところとかも以前馬鹿みたいに笑ったし。

漫談・奇術・曲ゴマ・紙切り・コントと、寄席という名称がぴったりの昼の部だったなと思います。本当は夜の部の講談も聞きたかったが無念の帰宅……。

入った当初は昼の立ち上がりの時間だったので人もまばらでしたが、後半になるにつれてお客さんもたくさん入っていて、活気があってよかったです。学生時分に何度か通っていたときでもあんなに混雑していなかったと思うので、落語界隈の広報や、以前大学教授が分かりやすく伝えてくれたみたいな活動が実りつつあるのかなと思っています。


私は落語ってすごく面白いと思うんだけど、いかんせん動画流行りの世の中でインスタントに笑えるものが手軽に手に入るなかで、ある程度能動的に笑いと向き合っていく必要がある落語って、娯楽としては少し高尚なものになってしまいつつあるのかも、などと所感。

言葉にするのが難しいんですが、例えば動画は流し見しながら、その場その場の反応やたとえツッコミで一瞬で笑いの点が沸騰するのに対して、落語はゆっくりじわじわとろ火で煮込んでいって、沸点を迎えられるかがお客さんとの調整になっているというか……。客側にもある程度能動的に噺を楽しみ、笑えるところで笑うという技能が必要になってくるというか……。落ちが分かり切っている噺もある中で、来るべき落ちが来た時に「やっぱりね~!わはは!」というメンタルの人間に向いている娯楽。

決して「いや、普通そうなるやん。何が面白い?」という人間にはお勧めできん。

あと江戸時代の常識とか言葉については、知らないとノイズになってしまって疲れるというのはあるかもしれない。「旦那様」「せがれ」といった今でもそれなりに分かる言葉から、「関所」や「~売り」みたいな時代特有の単語まで、もちろん何となくは義務教育のおかげで知っているのだけれど、頭の引き出しの浅いところに無いと噺一本理解するのも大変、みたいなね。

何はともあれ、私はそういうところも含めて好きなのでまた、たまに行きたいなと思います。マニアというほどでもないが、好きは好き、という趣味。

色々つらつら書きましたが、寄席の落語家さんが噺に入る瞬間の声の張りがピンとするところや、有名な長い口上を一息で朗々とうたい上げるところだけでも見る価値はあるので、興味のある方は時間があるときに見に行ってみてほしい。昼の部から入って夜まで居座ると3000円で9時間寄席が見られます。破格。


※なぜ新宿に行ったかというと、医療脱毛に通うことにして新宿にあるからです。この件は後日。なんか「体験したことないこと体験しちゃおうかな」のターンに差し掛かっている。


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