「すずめの戸締り」感想 20221128日記

久しぶりに日記を書きます。レイトショーですずめの戸締りを見てきて、書きたいことがいろいろとできたので……。

注意!以下の文章はネタバレを気にせず書いていきます。また、本編を見ている前提で詳細なあらすじなどは省いているので、ネタバレNGの方や、ネタバレのみを見たい方にも非推奨です。

あくまで、映画を見て自分が考えたことをつらつらとまとめているだけです。

・全体の感想
面白かった!もともと、超自然的な存在に人間が神と名付けているような解釈が好きなので、モチーフだけでも興味深く観られました。また、要石という災いを封じる存在と、神の人間の性質を超えた考え方と、それでも自分が気に入った巫女?のすずめに力を貸してくれるあたりが、日本に根付く神の性質に非常に近いのではないかと思いました。

・結局のところ、憎たらしい言動をしていた猫のダイジンは「すずめに愛されたい」という動機からその障害となる男を要石にしてしまい、彼がいなくなれば自分が独り占めできると思っていたものが入手できなかったことで力を失っていたんだなというのは分かりやすく提示されていてよかったです。
憎まれ役→じつは全然別の動機で動いていただけで、味方ではあった、というパターンは個人的に嫌いじゃないです。

・また、すずめは幼い頃扉に迷い込んでいて、その因果を正しく成立させるためにあそこに誘導する必要があった→要石という動機が因果になったというのもあるのかなと思いました。一回見ただけですべてを把握するのは難しかったけれど、すずめと幼すずめが出会うことで扉の中ですべての物語が完結するとともに、二人が右大臣・左大臣に祈ることで「信仰」が薄れて力を失っていた要石たちがまた災いを封じられる力を得られたのかなと思っています。

・そう、祈りの力が神に神格を取り戻させる、人の力が神を生む、という形が好きで、「要石」が祈りの力で廃墟となった場所(災いの入口・すでに祈りの無い場所)をおさえていて、数百年単位で忘れられていき力が無くなるので閉じ師の方か、あるいは神格になれる資格のあるなにかが自らの祈りを糧として新たな要石として災いをおさえ。神に成長していくのかな、と思いました。

・ストーリーとしては、扉のことを知ってしまったすずめが草太さんを追っていく(最初の事件と旅の始まり)ところから、何度も災いを抑え込んでいくなかで人の生活やその問題の実態を知り、中間地点(草太が要石として失われてしまう、このときすずめは、世界と草太で世界を守るほうを選択する)に至るんですが、その後彼女は自分が要石となる決意をして草太を探しに行く→問題の本質と出会い、神の力を借りながら世界をもとの形にもどす、というハリウッド的な展開だなあという感覚でした。草太を救うために、自分が要石になる!という展開は、ヒーローのそれであり、薄氷のようなハッピーエンドへの細い糸を手繰ったのだなと思いました。面白いプロットが大体この形であることからも、今回は難しいことを考えなくても共感し、畏れ、主人公であるすずめを応援し、安堵できるストーリーだったなと思います。
以前天気の子を見た時は、逆にドラマチックな最終節にむけてどんどん山を登っていくような雰囲気だったので、それよりは子供でも理解しやすく印象に残る話だったように思いました。

ただ、新海監督の作品をいくつか見たにわかの印象ですが、本当に偶々最適解を引き当てた世界で、すずめの選択が世界を滅ぼしえたと考えると、先ほども書いたとおり薄氷のようなハッピーエンドで、「隣にいた人が死んでしまう可能性が毎秒ある、それでも、一刻でも長く生きていたい」という草太の必死の思いと、日常の危うさを表しているような気もしました。次の瞬間には壊れる可能性のある日常の中で私たちは生きていて、それを実感しろよと突きつけられているような感覚。

・テーマとなっている震災は実際に存在したもので、3月11日、私は生きていて遠い別の場所でゆらゆらと気持ちの悪い揺れを感じ、テレビをつけたら見たこともないような濁流が家を押し流し、絶望的な映像を何度も何度も見て、そしてそこが自分の居場所ではなかったことに確かに安堵してしまっていました。人でなしかもしれないけれど、そうすることでようやく心が保てたひどい災害でした。だからこそ、そこにあったたくさんの「いってきます」が二度と存在しないこと、他の土地でも、過去に同じように未曾有の災害で命が奪われてきたこと、今そこに、たくさんの人が懸命に生きてつながっていることを思い、ずっと涙を流していました。鼻が忙しかった。

・あんまり学術的な話じゃなくて申し訳ないですが、素直に面白いと思ったので記録としてここに残しておこうと思います。
最近TRPGをやっているせいで、すずめの存在が探索者っぽいなあと思いながら見ていました。邪神ではないけれど、荒ぶる神をおさえられる勇気と素質のある人間。神に触れ、その寵愛を受ける人間。
そういう意味でも、どんなエンディングを迎えるか楽しみで、見た後にすっきりできた映画でした。

・おしまい!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?