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ガイドのカバンの中

通訳ガイドのぶんちょうです。
「スマホ、財布1、財布2、式次第」これは、そそっかしい私が仕事前に声に出して持ち物チェックする品物たち。

これさえあれば何とかなる。財布が二つあるのはプライベート用の財布とツアーで使う預かり金の入った財布を分けているから。「式次第」と言うのは、本当はツアーの旅程表のことで、つまり、その日、どことどこに、どの順番でお客さんを連れていくか、その他、大事なことを書きこんだ紙のこと。卒業式などの式次第みたいなイメージから勝手に自分でそう呼んでいるだけのことなんだけど……。

この4つだけは絶対に忘れてはならないものなので「点呼」確認している。他にももちろん荷物はある。折りたたみ傘、ペットボトル、筆記用具なども当然忘れてはならないけれど、どれもお金さえあればコンビニ辺りですぐに手に入れられるものだから点呼不要。

ただ、点呼組には所属していなくとも、とても重要なものがある。それはスーパーのビニール袋。テイクアウトの飲み物を飲み干した海外からのお客さんは、いつも日本にゴミ箱がほとんどないことにびっくりする。結果、空のコーヒーの紙コップなどを永遠に持ち歩くはめとなる。

空の紙やプラスチックのコッブを片手に、キョロキョロしては困った表情を見せる。ほとんどの外国人がそうなのだ。彼らとて日本に来て、密かにポイ捨てするような不埒な人間であることを日本人の前で示したくない。

多くの日本人がそうである(と彼らが信じている)ように、曲がったことをしない礼儀正しい人間でありたいと思っているに違いない。そして実際、彼らはとても礼儀正しい人達である。

そんな哀れなる善良市民、いや善良観光客の前にさっと差し出された1枚のビニール袋。これは救世主だ。ポイ捨ての後悔から、国へ帰るやいなや懺悔に行く必要もなくなるのだから!

というわけで、無料ではなくなってしまった貴重なるスーパーのビニール。ガイドの私は今日も、この貴重な一枚をカバンのいちばん取り出しやすい所に仕込んで出かけるんです!

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