見出し画像

ガイド、お客様の依頼に…

通訳ガイドのぶんちょうです。
通訳案内士にならなかったら、行ってないだろうなと思う場所にも色々と行き、経験させていただきました。

東京生まれで、今まで東京周辺の土地を離れて住んだことがないのですが、人の集まる場所にあまり興味がないせいか、好んで出かけるのはいつも田園風景の広がる田舎でした。

ガイドになって初めて、混雑極まる観光地、渋谷、原宿、新宿、浅草、築地などにしょちゅう出向くことになりました。

秋葉原のメイドカフェ、動物のカフェも沢山行きました。うさぎ、ねこ、ハリネズミ、フクロウ、ミニブタ、カワウソ、ヘビ、近々カピバラカフェへのデビューも果たしそうです。

「高いとこ」にも何度も上ってきました。都庁の展望台、東京タワー、スカイツリー、渋谷スカイ、六本木の森ビル。

「ただで行けていいな」と言われますが、100回も200回も同じ所に行くのですからねえ……。でも、不思議と飽きることはないです。

ふわふわパンケーキから大相撲の目の前での観戦、歌舞伎の最前列鑑賞、芸者さんとの宴席、職人、美術家のアトリエ訪問、メイドカフェ、神事の参加、ガチャポンしまくり、など色々と経験してきた私ですが…。

まさかの依頼がツアー中に。

「大人のおもちゃの店に連れてって」

私のツアーは個人ツアーですので、基本的にお客様の行きたい場所、したいことは、その場でできるだけ叶えてあげます。

ちょっとびっくりしたので、どのタイミングで、どんな表現で頼まれたのか、すっかり忘れてましたが、何を求めているかはすぐに理解できたので「わかりました」と私。

ちなみに、これは家族旅行で奥様と2人の小学生のお子様連れです。

専用車と呼ぶハイヤーのなかで、私は場所を調べ、今日の行程のどこで組み込めば、効率よく回れるかを判断します。そして、ドライバーさんに、選んだ店の住所だけを告げました。

私が躊躇する道理もないのですが、何となくストレートに店名は言いづらくて。

そんな店なので路地裏にありました。大きな車が入って行くのも大変そうなので、大通りで停めてもらい、ドライバーさんに「ここで大丈夫です。ここからは歩いて行きますよ」と告げて依頼人である、オトーサンと2人で歩き始めました。

いつも家族一緒に行動をしてたのに、オトーサンだけが車を降りたので、子どもたちが「どこ行くの?」と。

うん、当然の質問だ。

「ちょっと買い物してくるから待っててね」と私。

小さなラブホテルがひしめくアヤシゲな場所だったので、やっぱり車を降りて正解でした。こんなとこ、家族連れで歩けないわ〜。カラフルで派手な入り口をしたお目当ての店は、すぐに見つかりました。

私も「勉強のため」中に入り、初めての大人のお店体験をしました。コスプレ用のセーラー服やら、看護婦さんの白衣の奥には、何やら用途の知れないものが所狭しと積み上げられているお店です。他に人はいませんでした。

外を歩く人が、私が店の入り口近くで熱心に商品の吟味をしている姿を見て、何とも言えない表情で通り過ぎて行くのに気づきました。

こう言う店は、あまり女性は来ないのでしょうかね。それとも、この機を逃したらいつ見られるかわからないとばかりに、食い入るように商品説明を読んでいた私に呆れたか。

何を購入されたかは知りませんが、20分ほどするとレジの辺りで、万単位の合計金額を伝える店員の静かな声がし、やがて大袋を抱えたお客様が出てきました。

いや、何と話しかければいいのかな。何買ったんですか? いや、違うな。何に使うんですか?いや、もっと違うな💦

話題に困った私は、当たり障りのない日本のラブホテルの話か何かをして、その場を取り繕います。日本のラブホテルは、世界的に見てとてもユニークな存在なので、そう言う切り口で話ができるのです。

オトーサンは、詳しくは書けないですがショービジネスでご活躍の方。劇場もたくさんお持ちの方なので、仲間たちへのきっと話のネタに購入されたのかなと。

奥さんはどうなったかって?
車を降りる時、お子さんと同じように、どこ行くのみたいな顔されたので私は、目配せをして「彼のお気に入りの店に」と。

奥様は、意味を理解して車の中で待機してました。後で戦利品の入っている袋を覗き、何やら大笑いしてました。

結局、何を購入したのかわからないままでしたが、ガイドの経験値、上がっちゃったわー。

こんな場所にお客様を連れて行ったガイドって他にいるんでしょうかねえ。

いやあ、日本文化、奥深い、奥深い!







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?